こんにゃく叩き職人の先輩の話
こんにゃく叩き職人の話です。よくわからないと思いますが、私もよくわからないです。
世の中には無くてはならない仕事がある。
病気を治すための医者や看護師、不自由な人を助ける介護士、食べ物を作る農家、人を育てる教師、そして魔物と戦う魔法少女とそれを支えるこんにゃく叩き職人だ。
私はこの春から田舎から上京して、晴れて念願のこんにゃく叩き会社に入社した新米こんにゃく叩き職人である。
高校3年生の時、進路にすごく悩んだ。安定を求めるなら大学や専門学校に行って知識や技術を学び専門職に就くのが最善策なのは分かっていた。でも我が家は貧乏だったので大学には行くことは端から選択肢から外れており、なおかつ自分が普通の会社でOLするのも想像できなかった。
もちろん御多分に漏れず私のもとには“お迎え”は来ず、魔法少女になることもなかった。魔法少女になれる子は中学生ぐらいの時にお迎えと呼ばれる存在が現われて魔法少女になって魔物と戦わないか?と誘われるらしい。私の周りには魔法少女になった子はいなかったし、見たことはないがお迎えは人によって違うみたいだ。可愛いらしい黄色いクマみたいな存在もいれば、白いうさぎのような存在もいるらしい。魔法少女は魔物と戦うため危険を伴うが憧れの職業であり、なれる子も前世の行いで決まっているらしいので誘われた子は100%なるらしい。幼い頃に自分も魔法少女になれるんじゃないかと少し期待していたのは墓場まで持っていく内緒事項である。
何も決まっていないこの先の自分の将来を憂いていたら、ふと何気なくつけていたテレビでとあるこんにゃく叩き会社の特集が放送されてた。こんにゃく叩き職人の存在は知っていたが、働いてる人の姿をちゃんと見たことはなかった。これが私の将来が大きく決める出来事になった。
こんにゃく叩き職人の朝は早い。まずこんにゃく叩き職人は、こんにゃく叩き会社に出社し、こんにゃく叩き職人の派遣を依頼した地域を確認してそこへ行く。ちなみに交通費とこんにゃく代と叩く棒(人によって様々)は支給される。そしてこんにゃくを叩いてほしい場所でこんにゃく叩き職人がこんにゃくを叩く。そこでこんにゃくを叩くことによって、こんにゃくから目には見えない魔法の粉が出て、そこら一帯は魔物による直接攻撃や二次災害の被害を抑えてくれるバリアが張り巡らされるのだ。通常2,3人の職人が丸々1日かけてこんにゃくを叩きその場の地盤強化をするのだが、取材されていたこんにゃく叩き職人はとんでもないレベルのこんにゃく叩き職人でなんと1人で村一つ分の地盤強化を任されていた。基本的に職人はこんにゃく叩き用のこんにゃくを使うのだが、この人はスーパーに売っているこんにゃくでも魔法の粉が出せるらしく、その上その人がこんにゃくを叩いた場所は普通の地盤強化された場所よりも数年長く耐久するらしい。
何食わぬ顔でその人は無心にこんにゃくを叩いている。目には見えない粉だから叩いてる様は滑稽である。この滑稽さ故にあまり世間では人気のない職業の一つと呼ばれている。
だが私はその滑稽さも含めて強く胸を打たれた。
すごい。この人すごい。私もこの人みたいになりたい!!!そう思い始めたら行動するのは早かった。すぐさまその人が勤めている会社に連絡をとり、熱い思いを伝え、就職が決まった。そして人事部の粋な計らいで私はあの憧れのこんにゃく叩き職人の人と同じ管轄で働くことになった。
入社式で初めてテレビで見たその人に会った時、ドキドキした。本物だ。興奮を抑えつつ自分があなたみたいになりたくてこの会社に入った旨を伝えたら、その人は驚きつつも喜んでくれた。それ以降私はその人を“先輩”と呼ぶようになった。私は先輩といつも一緒に行動していたわけではないが、一緒になる時は先輩の職人芸に見とれていた。
先輩のこんにゃくを叩くスキルは凄まじかった。一定のリズムでこんにゃくを叩き続ける。会話してても動き回っていてもよそ見をしていても、ずっと叩き続けている。まさに神レベルのこんにゃく叩き職人。多分叩かれているこんにゃくも喜んでいるのではないかと私は思う。
こんにゃく叩き職人になってしばらく経った頃に事件は起きた。私はその日は休日で住んでいる社宅でのんきに寝ていた。そしたら急に外から大きな音が聞こえてきた。窓を覗いたら魔物が社宅の前に現われ暴れているのが見えた。私はうろたえた。なにせ実家に住んでいた頃は魔物とほとんど縁がない生活をしていたからだ。魔物も何もない田舎より、都会の方が壊しがいがあるから来なかったのかもしれない。とりあえず私は家に常備してあったこんにゃくとこんにゃく叩き棒を持って玄関を開けた。そしたら同じく休日で社宅にいた同僚数人も外に出てきた。幸いな事にその中に先輩もいた。先輩は私達に「とりあえずこんにゃくを叩こう!」と言うので、私達は「「「はいっっ」」」と答え魔物の前でこんにゃくを叩き社宅を守っていた。
暴れている魔物の前でこんにゃくを叩き続けるこんにゃく叩き職人が数人。いくら先輩がいるとはいえ、状況は不利である。もう手にこんにゃくを叩く力が残っていない。
来世は魔法少女になりたいと死を覚悟した瞬間に、本物の魔法少女が現われた。魔法少女が来るときはすぐに分かる。どこからともなく明るくて可愛らしい曲が流れてくるのだ。そしてそれはいわゆる勝確演出であり、絶対に魔物は魔法少女に倒されるのだ。
魔法少女は魔物と同じくテレビのニュース番組でしか見たことがなかったので、危機的状況ではあったが心が躍った。私達のもとに来てくれた魔法少女は髪はブロンドで赤いコスチュームを着ていてとても可愛かった。魔物から攻撃を受けると服が破れてちょっとエッチなのもドキドキした。私は魔法少女に目と心を奪われこんにゃくを叩くことを忘れていたが、なんとか気を持ち直して改めてこんにゃくを叩きはじめた。ふと隣にいる先輩を見たら、なんとこんにゃくを叩いていなかった。あのいついかなる時もこんにゃくを叩ける先輩が、私と同じように魔法少女に目と心を奪われていることに驚愕した。先輩は魔法少女に憧れの眼差しを向けていた。いつもの無心でこんにゃくを叩く姿からは想像できない表情をしていて、私は先輩は本当はこんにゃく叩き職人じゃなくて魔法少女になりたかったのだと悟った。
魔物は魔法少女に倒された。倒されたらスーッと消えていった。魔物ってこんな風に消えるんだなと見ていたら、魔法少女がこちらに向かってきた。
「こんにゃく叩き職人の皆さん、私が来るまで街を守ってくれてありがとうございました!あなた達のおかげで街の被害は少なくすんでいます。本当にいつもありがとう!」と満面の笑顔をくれた。惚れた。この場にいる全員がファンになったと思う。「あのあなたのお名前はっ…!」と同僚の1人が聞いた。「私の名前はハムカです!」私は一瞬思考が停止した。あれ?確か先輩の名前も…と思ったところで先輩が“魔法少女ハムカ”の手を取っていた。「あのっっ私もハムカって名前なんですけど、ずっとテレビであなたの事見てて応援してました!私は魔法少女になれなかったけど、あなたみたいになりたくてせめてあなたの力に少しでもなりたくてこんにゃく叩き職人になりました!!」魔法少女ハムカは驚いた顔をしていたがすぐに笑顔になって先輩と言葉を交わしていた。
私は興奮する先輩の姿を見ていて2人が何を話していたかは頭に入ってこなかったが魔法少女ハムカが「あなたも魔法少女だよ!だってこんにゃくの花言葉は不死・再生・神秘だもん。あなたがやっている事は私と変わらないわ!」と言っているのが聞こえた。先輩は涙を流して喜んでいた。
先輩はこの事件以来、さらに腕に磨きをかけてこんにゃくを叩いている。私も先輩に少しでも近づくためにこれからもこんにゃく叩き職人として精一杯こんにゃくを叩いていこうと誓った。そして魔法少女ハムカの応援もしていこうと思ったのだった。
つづく…?
初めて小説を書きました。途中自分が何を書いているのかわからなくなりましたが、勢いで終わらせました。楽しかったです。ちなみに同僚はとても可愛い方達だと思います。




