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[31万PV達成!感謝]長慶さんに転生してしまった!  作者: 天の樹
孫次郎の『徒然日記』⑥土佐の『天領化』

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土佐の天領化⑩



――1534年、師走上旬。


 京・内裏。


 評定の空気は、最初から結論が決まっているような重さだった。

 姫はすでに保護されている。

 それが全ての起点になっていた。


 土佐からの報告。


『南朝を称する女子、身柄確保済み』

『長曾我部国親、当該人物を旗印として挙兵』

『朝廷への奏聞なし』


 文が並ぶ。

 別紙には。


『姫の出自、真偽不明』


 さらに別紙。


『祖谷・山岳勢の証言混在』


 すべてが“確定していない”。

 だからこそ、議論が割れる。

 公卿の一人が言う。


「真偽が不明であればこそ利用した罪は重い」

「皇統の名を勝手に掲げたのです」

「それは朝廷への越権」

「逆賊にございます」


 別の者も続く。


「しかも、軍を動かしております」

「姫を政治利用した時点で断罪は免れませぬ」


 空気が固まる。

 その流れは、すでに一つの結論へ収束していた。


 その時、帝(後奈良帝)が口を開く。


「姫は保護されたか」


 即答。


「されております」

「怪我はなし」

「虐待は確認されず」


 帝は小さく頷く。


「ならばよい」


 一拍。


 公家たちが顔を上げる。


「主上……?」


 帝(後奈良帝)は続ける。


「朕はまず、その女子の安全を優先した。それは果たされた」


 静か。しかし次の言葉で空気が変わる。


「次に、長曾我部国親についてである」


 誰も息を呑む。


「姫の真偽は問わぬ」


 一瞬の静寂。


「問う必要はない」


 公家の一人が戸惑う。


「それは……」


 帝は言葉を切る。


「重要ではない」


 固く、低い声だった。


「問題は一つ。皇統を名乗る者を、朝廷の裁可なく、旗印としたこと」


 空気が固まる。


「それは、朕の権を侵したに等しい」


 静かに、しかし明確に、帝は結論へ進む。


「長曾我部国親を逆賊として処断する」


 場は動かない。

 誰も反論できない。

 そして帝は続ける。


「ただし」


 一拍。


「姫の件は関係させぬ。彼女は保護対象である。利用されたか否かは裁きの主軸としない」


 これは重要だった。

 帝は“姫を守ること”を最優先にしたまま、“政治判断としての断罪”を成立させている。



 同時刻。徳島城。


 海雲が報を受ける。

 私(長慶)ちょうど傍にいた。


『長曾我部国親、逆賊として処断』


 私(長慶)はそれを聞いて黙る。しばらくして。


「南朝の姫様は関係ないんだね」


 海雲が頷く。


「ああ、そこは切り離された」


 私(長慶)は少し安心したように息を吐く。


「よかった」


 しかし海雲は続ける。


「これで終わりではない」


 私(長慶)は顔を上げる。


「というと?」


 海雲は地図を見る。

 土佐、そして四国全体。


「“南朝を掲げることは逆賊”、これが正式に前例となった」


 私(長慶)は理解する。

 これは戦の終わりではない。制度の始まりだ。

 誰もが使えた“旗”が消えた瞬間だった。



 岡豊城。土佐。


 最後の夜、長曾我部国親は出頭を選ばなかった。

 しかし抵抗もしなかった。

 家臣の多くは離れていた。

 残る者は少ない。

 彼はただ一人で座る。

 外では雨。

 遠くで火が揺れる。

 それは包囲軍の灯だった。

 彼は理解していた。

 勝敗ではない。

 もはや選択ではない。世界がすでに“決めた”のだと。


 そして翌朝、土佐の戦は終わる。

 長曾我部国親は処断される。

 南朝の姫の利用という一点によって。


 四国の歴史は大きく書き換わり、「皇統を政治利用することの禁止」という新しい秩序が、初めて明文化された瞬間となるのであった。


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