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回想 17 人たらしな姫とあのこのなまえ
「あなたのなまえは?」
こどもはヨタヨタと歩きながら、マリーを見る。
「なまえ、……ない」
ガラガラの声で小さく答えた。
「そうなの。」
助けたときにはぼろきれのようだった羽は、マリーと医師の手によりところどころ本来の色を取り戻していた。
昼の日差しを受けて羽が鈍く艶めく。 マリーは一歩先に出て振り返り 、顔を覗き込んだ。
「 じゃあ、名前つけてもいい? 」
こどもは小さく頷いた。
「オパールよ」
こどもは息を飲んだ。
「……オ、パール」
ゆっくりと噛みしめるような発音だった。
「そう。オパール。」
彼―オパール―は、羽をふわりと膨らませる。
マリーはオパールに一歩近づくと羽にそっと触れる。そして内緒話をするように言った。
「 光が当たるとね、いろんな色になる石なの 」
「ブラックオパールそっくり。私は持っていないのだけど、母上がお持ちなの。今度こっそり見せてあげるわね」
オパールの瞳が潤み、頬が桃色に染まった。
マリーダは、声をかけ損ねた。
「オパール」
その名前を、今は呼んではいけない気がした。




