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ルークス~最後の希望~  作者: 文月ゆら
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第三章 奪還④

「ここが、アネモネの…!?」


 言葉を失ったイクソラ。それもそのはず、この研究施設は元々、真理子の父の物。厳密にいえば、真理子の父の物になるはずだった研究所だ。こうなる前の関西では唯一の研究機関で、主に微生物や病原体を扱っており、日本で唯一のBSL4があった研究施設だった。関東にもこういった研究所は存在していたが、関西には劣っておりBSL4を設立するだけの資金も研究者もいなかった。そのため、関東側の研究者や学者、大統領までもがこの施設を狙ったのだ。


「今、彼女の父が生きているのかは分からない。でも、もし亡くなっていたら、この研究所は彼女の物になる」


 その頃、議事堂でも大道寺からの話を聞いていた二人。


「日本病原体学研究所は、関西の…いや日本の唯一無二の研究機関だった。誰もがそこに入りたがり、研究をやりたがる。そんな機関だったんです。それは関西だけでなく、関東も同じだった。そこなら自分の思う研究ができる。実際、そう言った理由で関東から移り、こっちへ住み始めた人もいました。そこの施設に勝るとも劣らない研究施設があったのが、あなたたちのいたULIです」


「なぜ、彼女の父の研究機関は奪われたんですか…?」

「ある仮説が原因です」

「仮説って…なんとか計画…ですか?」

「そうです。学者が立てた計画は三段階ありました。まず、第一段階…」


 三段階の内の第一段階、それは“ハデスの選択”だった。国民一人一人に与えられたバンド型ICチップ。それは常時装着することを義務付けられていた。二四時間、三六五日、外すことはない。それにより、政府は国民の監視を続けた。人種、性別、年齢、装着者個人の状態など、それを分析し(ふるい)にかけること。それを冥界の神であるハデスの名を付け、ハデスの選択と命名した。

 

「このICチップがそんなことに使われていたなんて…」

「確かに便利なものだ。けど、いつも監視されているようなものだもんな…」

「そして、第二段階。これが今回のこの事態です。君たちが発見し、治療薬を作ったウイルス、これをばら撒き、ハデスの選択を生き延びたものがさらに、篩にかけられた。そのウイルスと言うのが…」

「ラルドウイルス…」

「そうです。そのラルドウイルスが今回の発端だった。ラルドウイルスをばら撒き、人類の数を減らすことが目的だった。これが“人類減衰計画”と言う計画です」


 大道寺は人類減衰計画について説明した。二人は大道寺から一度も視線をずらさなかった。


「人類減衰計画とは、簡単に言えば、生存能力・共存能力・競争能力がどれだけあるかを確認するために人類を篩にかけ、基準に満たなかった者を落としていくという残酷極まりない計画です。ラルドウイルスの散布により生き残った者がこの計画の勝者となる。あいつらはまるでゲームのように語った…。そしてこれは“パンドラ計画”と命名された」

「パンドラ計画…?」


 真理子が尋ねる。説明したのは西条だった。


「恐らく、ギリシャ神話のパンドラから取ったものだろう。パンドラは神によって作られ、人類の災いとして地上に送られた女性の神だ。地上に送られた際に、全ての災いと悪を封入した箱を持たせたって。マリちゃんも聞いたことがあるだろ?パンドラの箱って」


「あ…聞いたことある。パンドラの箱って言うのは開けると何か悪いことが起こるかもしれないって言う例えで、箱の中に最後に残ったものが、確か希望…」


「そのパンドラの名前をとってこの計画をパンドラ計画と名付けた。この計画が成功し、最終まで残った人類が次のステージに進む。そして次が第三段階です。これはプロメテウス計画と呼ばれています。この計画は、ハデス、パンドラと二つの計画を生き延びた人類が、次の世界を創っていくという無謀な計画です」


 真理子は尋ねた。「でもそれは、いい計画なんじゃ…」と。しかし大道寺は首を横に振る。


「そこだけ聞けばいい計画に聞こえるかもしれない。けれど、本当の狙いは、関東の大統領はじめ学者たちのいいように世界を変えていくと言う、関東にとって都合のいい計画だった。これらの計画を阻止するために、私は警察組織の中でも優秀な人材を確保し、独自に精鋭部隊を作った。それをまとめ、計画を阻止するために新田朋子と言う女性をスパイに、研究施設へ潜り込ませた」


「新田さんは内側から、総理は外側から…というわけですね…」

「その通りです。ただ、パンドラ計画の阻止は失敗してしまった。何としてでも、プロメテウス計画だけは阻止しなければなりません。もうすでに実行されている。けど、今はまだ本当の実行の前の準備を進めているところだ。この準備を阻止すれば、計画自体を阻止できる。だから、君たちの力を貸してほしい」


 大道寺に頭を下げられた二人は、戸惑い言葉を発せずにいた。


「マリちゃん、西条くん…。絶対に力を貸してほしいと言うわけではないのよ。ただ、あなた達の力があれば、阻止できると思っただけなの」

「おばちゃん…」

「なか…新田さん…いつからそこに?」

「たった今着いたとこよ。総理に話をしようと思って入ったら、あなた達の会話が聞こえてきたの」


 朋子は真理子たちの横に座り、大道寺に報告を始めた。

ハデスだの、パンドラだの…

本当に神話が好きですね~私。

自分で言うのは何ですが…かなり中二病だ…

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