手紙
斉藤 瞬 様
こんにちは。
こんなふうに君に手紙をかくのは、変な感じがします。
実は明日、ぼくは引っ越しをします。
引っ越す前に、この手紙をポストに入れるつもりです。
お祭りではいっしょに花火を見れて、すごくうれしかったです。
ぼくの作ったものを、おいしいと食べてくれて、うれしかったです。
それに、ぼくの好きなブルーハワイを瞬も好きになってくれたと知って、すごくすごくうれしかったです。
本当はあの時、もうひとつ瞬に言いたいことがあったんだけど、どうしても言えなかったので手紙に書くことにしました。
ぼく、瞬のことが好きでした。
そう言ったら瞬も「オトのこと俺も好きだけど?」って言ってくれると思うんだけど、でもちがうんです。ぼくの好きは、瞬の好きとは少しちがうんです。
あの時、ぼくが泣いた時、瞬がぼくの頭を抱き寄せてくれて、すごくうれしくなりました。だから、瞬に好きだと告白しようと思っていたのに、言えませんでした。うれしい時間がなくなってしまいそうで不安になったからです。
いま、この手紙を書きながらも、怖くて、何度も書くのをやめてしまいそうになりました。ぼくは、女の子が瞬のことを好きだと思っているのと同じように、瞬のことが好きだったんです。
気がついたのは中学になってからだったんですけど。
ぼくが瞬を好きだったと知ったら、瞬はぼくのことをどう思うだろうか。それを思うと、怖いのです。
気持ち悪いと思うかもしれません。友達だと思っていたのに、裏切られたと思うかも知れません。
でも、安心してください。ぼくはもうこの町に戻ってこないと思うんです。
ただ、出ていく前に勇気を出してみたくなっただけなんです。
けっきょく直接伝えられなかったけど、でも、いまこうして手紙をかくことで、すこし勇気を持てた気がします。
だから、新しい町でもきっと頑張って生きていけると思います。
瞬はどうかぼくのことなんか忘れて、幸せになってください。
最後のぼくのわがままに付き合わせてしまってごめんなさい。
ありがとう。
和泉 音
Kyrie主催「夏のBLフルーツパラダイス2018」参加作品です。
その他の参加作品にR18作品が多数あるために、リンクは貼れませんけれど、十八歳以上のお兄様お姉様方で、こちらの企画が気になるという方は、メッセくださいね。




