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クルミの親友

 放課後。

 俺がいつもの様に空き教室でクルミを待っていると。

 いつもの様に彼女が入ってくる。


 しかし。

 少し違った。

 クルミは一人ではない。

 

 彼女の隣には・・・

 彼女の親友、美波ミカ。

 吹奏楽部に属している文化部のクルミとは違い。

 バレー部に所属している運動系の女の子の姿があった。


「隼人、じゃじゃーん、ゲストで~す。親友のミカっ」

「やっほー、結城君」


 頭の前で、「やっほー」って感じで腕をさっと動かす美波さん。

 運動部っぽい活発さがある。


「やぁ、こんにちわ、美波さん」


 俺はやっほーとは返さなかった。

 そんな俺の意を返さず、2人は俺の傍の椅子に座る。

 クルミと美波さんは顔を見合わせる。


「隼人、実はねー、今日、ちょっとお願いがあるの」


 こちらを伺うように見るクルミ。

 唇を尖らせて上目遣い。

 

 こ、これは・・・

 何か「無理なお願い」をするときの仕草だ・・・

 仄かに悪い予感をしつつ。


「あらたまって何かな?・・・ちょっと怖いな」


 クルミは再び美波さんと顔をあわせる。


「あのね、実はね、ミカにしてほしいの。その・・・成長させて欲しいの」


 してほしい・・・

 抽象的な言葉だが、その後の言葉で分かる。

 成長・・・

 つまり、クルミの親友にも俺のスキル「成長促進」を使って欲しいのだろう。


 ということは。

 クルミは・・・まさか・・・


「クルミ、ちょっといいか?」

「えっ・・・うん」


「美波さん、ちょっと待っててね」

「うん、いいよー。ごゆっくり」


 俺はクルミをつれて美波さんから離れる。

 声が聞こえない距離まで十分に離れてから。




「クルミ。美波さんに俺の能力の事を話したのか?」

「少しだけ、ほんの少しだけ。それに心配ないよ」


「でも、誰にも話さないって約束したろ」

「大丈夫。ミカは親友だから。誰にも言わないよ」


 クルミは俺をすがるような目で見つめてくる。

 俺の方が背が高いため、彼女は上目遣いになっている。

 反省しているような表情をするクルミだが。

 約束をやぶったことをあまり気にしていない気もする。

 悪い兆候だ。


「お願い隼人。ミカは私の一番の親友なの、ミカにも奇麗になってほしいの。

 ねぇ、いいでしょ。ミカは誰にも言わないよ」


 はぁー。

 女子は口が軽い。

 秘密を守れない子が多いと思っていたが・・・

 まさかクルミもか・・・

 

 でも・・・

 クルミの親友なら大丈夫なのかもしれないな。

 ちゃんと秘密は守ってくるのかもしれない

 それに、クルミに話した時点で覚悟するべき事だったのかもしれない。


「分かった。でも、もう誰にも言わないでくれよ。もし言ったら、もう俺の能力はクルミには使わないから」

「えっ!」


 ビクッと震えるクルミ。

 驚いてこっちの様子を見てる。

 やはり、約束をやぶることを軽く考えていたようだ。


「クルミ、もう言っちゃダメだよ」

「分かった。隼人、ごめんなさい」


 よしよし。

 俺はクルミの頭をポンポン撫でる。


「でっ、美波さんには何を約束したの?」

「えっとねー。ミカは髪をつやつやにしたいんだって。私みたいに」


 ほーう。

 運動部なためか、活発の少女の雰囲気の美波さん。


「今のままでも十分奇麗な黒髪だと思うけど・・・」

「だめなの。ほらっ、ミカの髪、ちょっと色が茶色っぽいでしょ。

 地毛なんだけど、ミカはもっとしっとりとした髪がいいんだってー。

 ねぇ、隼人もそう思うでしょ?」


 いやー。

 特に思わないけど・・・

 クルミがすっごい同意を求める目で見てくるので。


「よく見ると・・・確かに」

「でしょ、お願い」


 はぁー。

 「お願い」きました。

 うるうる瞳で頼まれるとしょうがない。

 俺の心が揺れ動く。

 断れない。


 ならっ。

 やりますか。

 さくっと終わらせよう。


「うん。クルミ、一回だけだから。他には約束してないよね」

「ありがとう。さすが隼人。じゃあ、お願いね」


 クルミはミカの元に戻り。

 「大丈夫だって」と笑顔。

 「やったー。ありがとう」と返事をする美波さん。


 俺は答えを濁されたことに気になったが。

 まぁ、仕方が無い。

 ちゃちゃっと終わらせましょう。





 クルミと美波さんの傍に移動する。

 椅子に座り向かい合う。


「美波さん、これからやることは誰にも言わないでね」

「大丈夫、絶対誰にも言わないよ」


 キリっと答える美波さん。

 ワクワクした表情をしている。

 隣ではミカが笑顔でニヤニヤ。

 「すぐ終わるよ」っと呟いている。

 とても楽しそうだ。


「美波さん、確認だけど、髪を奇麗にする。つやつやの黒髪にするでいいかな?」

「それでお願い。化粧品のCMの人みたいに、つやっつやにしてほしいの」

 

 あっ。

 脳裏に映像が浮かぶ。

 シャンプーのCMで、黒髪のモデルの人が、ファッサーっと黒髪をかきあげる仕草が。

 多分、あれだろうな。


「分かった。じゃあ髪に触るから、リラックスしていて。動かないでね」

「はい、お願いしまーす」


 元気の良い声。

 俺は美波さんの髪に両手で触れ。

 祈るっ!

 

 『美波さんお黒髪、奇麗なつやつやの黒髪になーれ』

 『美波さんお黒髪、奇麗なつやつやの黒髪になーれ』

 『美波さんお黒髪、奇麗なつやつやの黒髪になーれ』

 ・・・・・


 十回ほど祈り続ける。



 すると・・・

 

「できたっ!」

「うわぁー、ミカ、奇麗、素敵っ!」


 クルミが鞄から手鏡を取り出し、美波にみせる。

 美波さんは鏡を覗き込む。


「わぁっ!これあたしー、本当にあたしの髪の毛なのっ!」

「そうだよ、ミカ。すっごく素敵」

「どうしよう?どうしよう。あたし・・凄い・・・・凄いよー」

「ミカ、髪の毛さらさら」


 ミカとクルミはテンションMAXで騒ぎ出した。

 なんか色々褒めあっている。

 二人で抱き合っったりしている。



 俺は急激に空腹と疲れに襲われた。

 鞄から栄養食品とエネルギードリンクを取り出す。

 ここ最近の経験から、常にこの二つを携帯するようになったのだ。

 いつクルミに「お願い」されるか分からない。

 能力を使った後、少しでも体調を戻せるようにしたかった。


 きゅるるるるるる~スポンッ!

 10秒チャージ3時間キープ的な栄養食品を食す。


 カバッ ゴクゴク ゴクゴク

 エネルギードリンクを一気に飲み干す。


 はぁー。

 ふぅー。

 ちょっとだけ回復。

 空腹と疲れがほんの少しへった。

 元気がちょっぴり戻る。


「結城君、ありがとう。すっごくありがとうっ!」


 おっ。

 いきなり手を取られた。

 満面の笑みの美波さんに両手をつかまれて、激しく感謝される。


「あ、あぁ。たいしたこと無いよ。それより、このことは秘密に頼む。シークレットでね」

「うん、誰にも言わないよ、絶対」

「わたしもだよ、隼人」


 ちゃっかりのっかてくれるクルミ。 


 その後。

 俺は早く家に帰ってベッドで寝たかったので一人で帰宅。

 校門の所で分かれたクルミと美波さんは、帰りにどこか寄っていくそうだ。



 ふと思った。

 女の子は元気だな。


今日はもう一話投稿です。





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   日間ランキングBEST300 12位    

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