充実した日々と、騒乱の兆し
数日後。
クルミは美しくなっていった。
胸は大きくなり、爪が輝くように煌き、黒い髪は艶をまし、肌も粉雪の様に美しい白。
まるでアイドルやモデルの様な姿。
言うまでも無いが、全て俺のスキル「成長促進」の成果だ。
スキルを使うとかなり疲れてお腹が減るのだが・・・
クルミに「お願い」と、可愛らしい顔で頼まれると・・・
ついつい承諾してしまうのだ。
スキルを使いすぎるのは注意を引いてまずいと思いつつも。
俺は彼女の喜ぶ姿を見たくて。
徐々に美しくなっていく彼女を見たくて。
ついついスキルを使ってしまったのだ。
クラスでは、クルミが大人気だ。
元々クラスの中では3番目ぐらいにかわいかった彼女だが。
(3番というのはあくまで俺の個人評価であり、タカシ曰く、客観的には中間的なかわいさらしい)
今は1番にジャンプアップしていた。
学年、学校単位で比べても最上位。
皆が認める美女。
それがクルミ。
彼女は少しの間に、学校のアイドルに上りつめたのだった。
今。
教室の片隅では、クルミは女子生徒に囲まれている。
「クルミー、一体どうしたの?最近すっごく奇麗」
「ほんとー、化粧しているわけじゃないのにー」
「何かしてるのー?エステとか?食べ物とか?私にも教えて」
「あっ、あたしにもー」
質問責めにあっているクルミ。
だが彼女は。
「べっ、別に何もしてないよー。成長期なだけだよ」
っと答えるだけ。
それはそうだろう。
俺のスキル「成長促進」で奇麗になったとは言えまい。
「うそだー。私も成長期だけど、全然かわらないよ」
「あたしもー」
「クルミー、隠してないで教えてよー」
「ねぇ、私達だけに教えて」
ワチャワチャしているクルミ周辺。
皆クルミに夢中だ。
奇麗になった彼女に惹き付けられる。
俺はそんな様子を、親友のタカシと見守っていた。
「隼人よー。最近朽木さん、まじかわいくねー?異常じゃん」
「そうか。昔からかわいかっただろ」
「見ろよ、あの漆の様な黒髪、粉雪の様な肌、いつのまにか実った胸。同じ朽木さんか?」
「元々素質があったんだと思う」
「いやっ、そうかなー。そんなことなかった気がするんだけどなー。
でも化粧ってわけでもないしー。やばい、全然分かんねー」
「まぁ、成長期だからな」
「はぁー、女って変わるもんだなー」
なにやら唸っているタカシ。
クルミが奇麗になったことに納得がいかないようだ。
他の男子生徒はというと、チラチラとクルミをみている者が多い。
それ程魅力的なのだろう。
目を奪われる程の美人。
皆がクルミを意識してしまう。
俺はクルミが美しくなってよかったと思った。
俺の彼女が皆にチヤホヤされるのは悪い気分ではないし、当のクルミはとても楽しそうだ。
最近、エネルギーに満ち溢れているし、とても良いことだ。
クルミが皆にチヤホヤされる中。
俺はかすかに充実した日々を送っていた。
がっ。
そんな穏やかな日々は長続きせず。
クルミが問題を持ってくるのだった。
今思えば・・・
これが騒動の始まりだった。
1章終了。
次から第2章です。明日も投稿です。
新連載記念短編、さくっと投稿しました。ぜひどうぞ。
↓
『婚約破棄された、悪役令嬢の劣等生』
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