バストの日本平均値
放課後。
学校の空き教室。
俺はクルミとまったり午後の一時を過ごしていた。
胸が少し大きくなったクルミだが、やはり前とは違った。
僅かばかり元気になり、ちょっと堂々としている。
ほんの気持ちばかりだけど。
確実に変化は現れていた。
「ねぇーねぇー、隼人」
「なんだ?」
俺が数学の宿題を解いていると。
クルミが俺に話しかけてくる。
「胸、大きくしてくれたでしょー」
「うん」
「それでさー、気になったの」
「何を?」
「あのねー、そのー、もっとできるのかなって?」
「うん?」
「ほらっ、もう少し胸を大きく出来るのかなーって?」
「あー、そのことか」
クルミは俺の胸板を何故か触る。
サスサスと撫でてくる。
じゃれてくる時の合図に似ているが、ここは学校。
あまりイチャつかない方が良いだろう。
たまたま先生でも通りかかったら大変だ。
不純異性交流で生徒指導を受けるかもしれない。
それに・・・クルミの胸をさらに大きくする話。
その事は少し考えた。
俺の中で結論は出ている。
「クルミ。出来るかもしれないが、今はやらないほうがいいだろう」
「えー、なんで?」
ガーンっとショックを受けるクルミ。
ちょっと悲しそうな顔をしている。
希望が打ち砕かれたからかもしれない。
「さすがに数日でかなり胸が大きくなったらおかしい。整形を疑われる」
「あっ、そうだねー。ならっ、ゆっくりと大きくしていけば良いよ」
「だなっ」
「うんうん」
俺もクルミの胸が大きくなることには賛成だ。
健やかに成長して欲しい。
健康的な成長が一番だ。
「でっ、クルミはどこまで大きくしたいんだ?」
「うーんとねー。どうだろう?隼人はどれぐらいの大きさが良いの?」
わおっ。
逆質問されてしまった。
でも胸の大きさかー。
大きすぎるのも小さすぎるもあれだから。
平均より、ちょっと大きいぐらいでいいんじゃないだろうか。
ネットで調べた限り・・・
日本平均のバストはCカップらしいから・・・
「クルミは、Dカップぐらいでいいんじゃないか?」
「うーん、Dカップかー」
胸の前に手を出して、大きさを確認しているクルミ。
手を空中でワサワサ動かしている。
Dカップになった自分を確認しているのだろう。
俺は手助けになればと思い。
「多分、ほらっ、クラスの田中さんぐらいの大きさだよ、あれぐらいの大きさ」
「えっ!」
じーっとクルミに睨まれる。
なんだろう?
俺、変な事言ったかな・・・
「クルミ、どうした?」
「隼人、田中さんをそんな目で見ていたの?」
あっ。
おやおや。
ちょっと地雷を踏んでしまったかな。
「例えに出したまでさ。変な目で見ていた訳じゃない。比較論的な観点で見ていたんだ」
「ソウナンダー」 (棒声)
クルミ。
まったく信じてないな。
やれやれ。
「まぁ、いいじゃないか。それで、クルミはどれぐらいの大きさになりたいんだ?」
「うーん、わたしもー、CかDでいいかな・・・平均値でお願い」
「そうか、それはよかった。希望が一致したな」
「うん。それとさー、隼人」
「何だ?」
「他にも出来るの?」
唇を尖らせて、俺を見つめるクルミ。
何か思っていることがあるようだ。
何か溜め込んでいる彼女の姿はいじらしい。
「他・・・というと?」
「ほらっ、もっと他にも、身長伸ばしたり、髪伸ばしたり、肌を奇麗にしたり」
うーん。
どうだろう。
それは想定していなかった。
でも・・・
できるかもしれないな。
「ちょっとやってみようか?」
「いいの?」
「勿論さ。クルミの要望ならね。ほらっ、手を出して」
「はーいっ」
チョコン
俺はクルミの小さな可愛らしい手をとる。
彼女の爪にふれながら・・・
『奇麗な爪になれー』
『奇麗な爪になれー』
『奇麗な爪になれー』
と、10回程祈る。
すると・・・
「うわぁー。すっごい、隼人ー、マニキュアぬったみたいに爪がピカピカになったよ、ピカピカっ」
「あぁ、できちゃった」
うん。
なんかねー。
簡単にできちゃった。
さくっと。
「ほらほら、隼人、見て見てよー、爪がピッカピッカだよ」
「だな」
興奮してテンションMAXのクルミ。
ピカピカになった自分の爪を凝視している。
だが俺は、お腹が減ってしょうがない。
「きゅるるるっ~」
あっ。
やっぱりお腹がなった。
それにどっと疲れた。
スキルを使った反動だろう。
「隼人~。やっぱり能力使うとお腹がへるんだねー」
「あぁ、そのようだ」
「でもっ、ありがとね。わたしのために」
「おやすいごようさ」
「隼人、大好きっ!」
ギュッ
ちょっとテンションがあがったクルミに抱きしめられた。
彼女の匂いがぐっと強くなる。
俺もわさっと抱きしめ返したが。
それよりも。
お腹が減って疲れを感じていた。
「隼人、お礼に私がご飯食べさせてあげるね」
「いいのかい?」
「ほらほらー。はい、あーんして」
クルミは鞄にあったお菓子のポッキーを取り出し。
俺の口に運ぶ。
パクッ
俺はポッキーを食す。
「どう、美味しいー」
「あぁ、美味だ」
「ほらっ、もっとあげるねー」
パクッ
俺は空腹を満たした。
同時に。
クルミの愛情で、疲れを癒したのだった。
前話の後書きですが、投稿後の追記になってしまったので。
今回もお知らせです。
新連載記念短編、さくっと投稿しました。ぜひどうぞ。
5分程で読み終わるかと思います。
↓
『婚約破棄された、悪役令嬢の劣等生』
※ページ下部にリンクがございます。