ストーカー2
授業の合間。
「隼人、隼人、俺、ストーカー見つけたかも」
「ほんとかっ?」
俺に耳寄りな情報を持ってきたのは親友ポジのタカシ。
いつもは無駄に声が大きいが・・・今は小声だ。
「多分ねー。怪しい奴を見つけたのよ」
「どこのどいつだ?」
「7組の半沢さん」
んん?
あれ・・・
もしかして・・・女の子?
「半沢さんって女の子だよね?」
「そうそう。俺もビックリ。朽木さんを見張っていたら、半沢さんが怪しげな目で朽木さんみてたの。
でっ、つけたらビンゴよー」
「そ、そうか・・・よくやった」
「で、どうするよ?」
「現場を押さえる。クルミには内緒で行おう」
「だなっ」
「俺はいつも通りクルミと校内歩いたり、昼食とるから。ストーカー現場を見つけたら教えて欲しい」
「了解」
ふふふっ。
まさかストーカーの犯人は女の子だと思わなかったが・・・性別は関係ない。
女の子でも俺はいっさい容赦はしない。
見事犯人を捕まえて見せようかな。
◇
放課後。
俺がクルミをつれて構内を歩いていると・・・
ピコリンッ!
スマホが鳴る。
タカシ:ストーカー発見、今、朽木さんをつけてる
ふふふっ。
愚か者が罠にかかったようだな。
実に早い。
「どうしたの?隼人、にやついて」
「なんでもないよ。それより、クルミは先に空き教室にいってくれないか。俺は教室に忘れ物があるから」
「えっ、じゃあ私も一緒に行く」
「いや、すぐ戻ってくるから。大丈夫」
「えっ・・うん」
俺はクルミの傍を離れた。
校舎を一回りして、クルミの後ろに回りこむと・・・・
影からクルミを見つめている1人の女子生徒を発見した。
スマホにつけた望遠レンズで写真をとっているようだ。
俺は彼女の後ろに回り込むが、相手は盗撮に夢中で気づかないようだ。
なんと愚かしい。
俺は後ろから女子生徒。
半沢さんに語りかける。
「あのー、お譲ちゃん、鳥でも見えるんですかな?」
ビクンと震えて、「ぎょっ」と振り返る半沢さん。
俺を見てアワアワ口を動かしている。
開いた口が塞がらないとはこのことか。
アゴがはずれそうになっている彼女。
彼女はスマホをばっとポケットに隠そうとするが・・・
所詮は女子の動き。
遅いっ!
俺は彼女の手をとってスマホを取り上げる。
「あっ!」
っと叫ぶ半沢さん。
奪ったスマホの写真フォルダを見ると・・・
うおっ!
ありゃ~。
ものすっごい数のクルミの写真があった。
一面クルミの写真だらけ。
ストーカー確定ですわ、これ。
わかりやすい物的証拠GET。
って。
ひょええええ。
やばっ。
ちょっと怖いぐらい、クルミの写真がいっぱい。
「あー返してください、私のスマホー、私のです」
俺は半沢の声を無視して。
「半沢さん、この写真は何かな?」
画面を彼女に向ける。
クルミが写った写真を半沢さんに見せると・・・
ビクッと震える彼女。
「えっと、たまたま写っていたんです。そう、鳥をとろうとしたんです」
「へぇー、偶々で200枚近くもクルミの写真をとったんだ。鳥、1匹も写ってないけど」
「・・・・はい。私写真撮るの下手で・・・あはははっ」
「ほざけっ!証拠はあがってるんだ。何目的だ?出すとこにだしてもいいんだぞっ!」
「ぐぐぐっ・・・」
「どうかな?謝れば許してやらんこともない」
半沢さんは観念したのか。
「すみませんでしたっ!。私はただのファンです。朽木さんのファンなんです」
さっと頭を下げた。
「ファン?」
「はい。とっても綺麗になっていく朽木さんに憧れて・・・気づいたら写真をとっていたんです」
「・・・・そうか・・」
なんだか本気っぽい彼女。
クラスのアイドルオタクと同じ雰囲気がある。
これは・・・ものほんのファンなのかもしれないな。
それなた許す・・・・・・はずはない。
ザクッ
俺はスマホの写真を全て削除した。
「あ、ああああぁぁぁあああ、私のコレクションが~っ!」
「盗撮は禁止だ。写真を撮りたいなら正面から来るんだな。クルミなら許してくれるだろう」
「ええ、いいんですか?私を紹介してくれるんですか?」
「えっ、紹介?」
ギラギラした瞳で俺を見ている朽木さん。
「私を朽木さんに紹介してくれるんですよね?結城君が」
いやー。
そんなつもりはないけど・・・1mmも。
こんなヤバイ奴をクルミに近づけたくないし。
「紹介しないと、叫びますっ!」
「はぁ?」
「襲われたって叫びます。今ここでっ!今すぐにっ!」
俺はさっと彼女の手を離そうとするが・・・逆に腕を強く握られた。
めちゃくちゃ「ぎゅっ」て、強く握られた。
中々パワーがある女の子だ。
文化部パワー系女子。
「たっ、助けてーっ!!!襲われるっ!!!」
「ば、ばか、やめろっ」
俺は彼女の口をふさぐ。
「分かったから、紹介するから静まれ。落ち着けっ!」
「そうですか、ならやめます」
キョトンと落ち着く彼女。
いきなりシーンとなる。
い、いきなり落ち着くなぁああー!。
ふぅー。
まったく。
やばいなこの女。
あまり関わりあいになりたくないタイプだ。
というか・・・
ずっと手を握られている。
ちょっと汗ばんできた。
「あのー、半沢さん、手、離してくれますか?」
「紹介の件、嘘だったら許しませんよ」
うおっ。
ギロって睨まれた。
こええええ。
ひょえええええーーー。
「ちゃんと紹介する」
「よかった」
半沢さんの手が離れたのだった。
やれやれ。
面倒なことになったな、これわ。