帰宅
サロンに戻ると。
華玲が七星先輩と春乃宮先輩の下へ。
俺がガーデンの一員になることを報告しに言ったんだと思う。
予感は的中。
2人の先輩がこちらに来る。
タイプの違う美人の先輩が2人。
妙に迫力がある。
ひょええぇぇぇええ~、美形は怖い。
「結城君。私は一目見たときから君がこの部の一員になることを確信していたよ。よろしくね」
「はい、よろしくお願いします、七星先輩」
「私もですよ、ようこそ園芸部へ」
「春乃宮先輩、よろしくお願いします」
俺は二人の先輩と握手した。
すると、華玲さんがなにやらバッチ?を持ってくる。
「はい、ですわ」
んん?
何?
俺にバッチとキーカードを持ってくる華玲さん。
「これは何?」
「部員の印のバッジと、この部屋の認証キー。部屋に誰もいない時は、カードキーが必須だから」
あっ。
なるほどー。
随分お金がかかった施設だからねー。
セキュリティも万全だ。
「ありがとう」
「バッチは分かりやすいところ、右胸か襟に着けるのですわ」
そういえば・・・
よく見ると先輩方も、華玲さんも右胸に同じバッチをつけている。
これがガーデンの印だったのか。
なるほどー。
「どこをみている?」
あっ。
七星先輩に注意されてしまった。
胸をみていると勘違いされてしまったのかもしれない。
「な、なんでもありません。バッチを見ていただけです」
「もぅ、夏葵ったら、後輩をからかわないで」
春乃宮先輩が七星先輩と笑いあう。
「結城君、ごめんねー」
ふぅー。
なんだ冗談か。
ビックリした。
俺はバッチとカードキーを受けとった。
これで俺もガーデンの一員か。
随分出世したものだ。
「ではっ、バッチが私がつけてあげますわ」
「えっ?」
華玲さんが俺の手からバッチをとる。
「結城君。これは伝統みたいなものだ。推薦枠の生徒には、推薦人がバッチをつけるんだ。
ガーデン会員の前で」
「そうなの、これで二人は結ばれるわ」
ええ?
なんだか妙な雰囲気に。
先輩のお姉様方が、俺と華玲さんをほほえましく祝福している。
結婚式のご友人みたい。
華玲さんがバッチを持ち、俺の胸にやさしくふれる。
なんだかドキドキしてきた。
妙に手つきが妖しい。
「ではっ、これからよろしくお願いしますわ。結城君」
「えっ、うん。よろしく、華玲さん」
俺の胸にガーデンバッチがついたのだった。
◇
俺は制服にバッチをつけ、ガーデンこと園芸部を出た。
帰宅しようとすると・・・
あっ。
校舎の出口にはクルミの姿。
ちょこんと靴箱の近くにたたずんでいる。
「よっ、クルミ、どうしたの?先に帰ったと思ったけど」
「あっ、隼人。うん、色々やってたら時間かかちゃって」
「ならっ、一緒に帰ろうか」
「うん」
俺はクルミと歩き出した。
偶然を装った風をしているけど、多分俺のことを待っていたんだと思う。
ここは気づかない振りをしておこう。
妙なことを気にするからな、クルミは。
今も若干もじもじしている彼女。
園芸部のことが気になるのかもしれない。
「華玲さんは一緒じゃないの?」
「彼女はまだ部室にいるよ。やることがあるみたい」
「そうだんだ。でっ、どうだった、園芸部の部室。なんかすっごいんでしょ?」
「確かに。華玲さん家の応接間みたいだった」
「やっぱり凄いんだねー。噂どおりかも」
「だなー。植物栽培の設備も凄かった」
「でっ、ガーデンにはどうするの?」
「入ることにした」
「えええええぇええっ!入るの?入っちゃうの?」
「うん。でも大丈夫、これまで通りさ、何も変わらない」
「そうかなー。それならいいけど」
「まぁ、ボチボチだよ」
「植物は程ほどにねー」
「そうするー」
俺はクルミと家路に付いた。
久しぶりに目を見開く程凄い&面白い作品を発見しましたのでご紹介です。
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「完成したら」(作:乳酸菌)
あらすじ
『遠距離になるのを目前にして、この頃の私には恋人の言葉が度々別れ話に聞こえる。
だから今言われた「似顔絵描いてよ」も、「別れよう」に聞こえてしまうのだ』
※ページ下部にリンク有り
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5000文字程の短編ですので、5分程で読めるかと思います。
しかし、さらっと軽く読むだけでは良さが「よく分からない」かもしれません。
「似顔絵書く話か~」ぐらいしか感想が出ないかも。
・ですが・・・
ちゃんと読めば (国語の読解問題風に読むと)、味わい深い作品でもあります。
思わず唸ります。
本作品は、直接心理描写を書かず、文房具で間接的に心理描写を表した作品です。
文学的な手法が使われた、なろうランキング作品ではあまり見ない作品であったりもします。
こう書いても正直よく分からないかと思いますので、下記で作品解説しました。(一つの解釈です)
『恋愛短編『完成したら』~よく分かるかもしれない作品解説』
※ページ下部にリンク有りです
こちらをご一読されれば、なんとなく作品の意味が分かるかと思いますので。
宜しければごらん下さい。