危険
「朽木さん、どういうことですか?結城君のおかげで綺麗になったのですか?」
「うん。そうだよ」
「具体的には、何をしたんですか?」
「それはね・・・」
華玲が息を呑み。
クルミが口を開けようとした瞬間。
「クルミっ!」
結城隼人こと、俺が現れたのだった。
俺は目の前の光景に驚いた。
トロンとした目のクルミ。
明らかに様子がおかしい。
そんな彼女が俺のスキルのことを話そうとしていたのだ。
俺はクルミの肩を抱く。
「あっ、隼人・・・」
クルミは俺の姿に気づいたようだ。
かなり意識が怪しくなっていうると思う。
声が弱弱しい。
彼女の手には量が減った紅茶。
対照的に華玲さんの目の前の紅茶はへっていない。
怪しい・・・
俺は紅茶を見て念じる。
『ステータスオープン』
種族 :バラティー
状態 :常温
備考 :自白薬入
くっ。
やはりかー。
紅茶に自白薬が仕込まれていたようだ。
っていうか。
紅茶にも『ステータスオープン』使えたのか。
スキル「成長促進」がレベルアップした影響かもしれない。
これまでは植物にしかできなかった。
いや・・・自白薬が植物からできているからかもしれないか・・・
まぁ、いい。
それより今はこの場から立ち去ったほうがいいだろう。
クルミを救わなければ。
「華玲さん、今日はありがとう。俺とクルミは家に帰るよ」
「そうですか。残念です。結城君も紅茶をどうですか」
「いいや、やめておくよ」
「紅茶はお嫌いですか、他のものもありますよ」
「いいや、普通の紅茶じゃないみたいだからね」
俺の雰囲気と言葉で察したのか。
華玲さんはそれ以上追求してくることはなく。
「はい。ではっ、お送りしましょう」
「お願いする」
彼女が席から立ち上がると・・・クルミを見て一言。
「クルミさんですが、紅茶に酔ったのでしょう。少し時間が経てば直りますよ」
「そうだといいね」
華玲さんの助言。
多分、自白薬は体に影響がないと言いたいのだろう。
俺もクルミに害があるものだとは思わない。
さすがにそこまでのものは仕込んでいないと。
俺はクルミの肩を抱きながら、華玲さんに続き家の外に。
こうして俺とクルミは、華玲家を後にしたのだった。
綺麗なバラには棘があったのだ。
◇
近所の公園。
俺は自販機で買ったスポーツドリンクをクルミに飲ませる。
グングン飲んでいくクルミ。
薬物を摂取した時は、とにかく水分をたくさん取った方がいいと聞いたことがある。
すると・・・
暫くしてクルミの体調は戻ったようだ。
トロンとして目は正常に。
「あれっ、どうしたの隼人・・・私・・・確か華玲さんの家にいって」
「あぁ、実は大変な目にあったんだ」
「んん?」
「落ち着いて聞いてくれよ」
「うん」
「クルミが飲んでいた紅茶には、自白薬が混入されていた」
「えっ!」
ビックリ顔のクルミ。
口をあけてポカーンとしている。
綺麗な白い歯が見え隠れする。
「なんだか妙な気分になっただろ。多分、そのせいだ」
「そんなー、自白剤って・・・」
「華玲さんの家では色々な植物が育てられていただろ。設備もしっかりしていた。
あれだけのものを用意できるなら、自白効果のある植物も育てることは容易だろう」
「でも、なんで・・・なんでそんなこと」
「クルミが綺麗になった理由を知りたかったんだろう。
それか・・・ほんのわるふざけだったのかもしれない」
「ど、どうしよう?私・・・何かいっちゃたかな。隼人の秘密を」
慌てるクルミ。
オロオロしている。
俺はそんなクルミの頭をなでる。
「大丈夫、多分いっていないと思う。俺がバラ園に戻ってきていた時に言おうとしていたから」
「よかったー。でも、華玲さんがねー」
「うん、これから注意したほうが良い。クルミは短期間で綺麗になったからね。
怪しんでいる者もいるのかもしれない」
俺も今日のことは迂闊だった。
まさか自白薬がしこまれているとは想像していなかったのだ。
もう少し慎重になるべきだった。
「だね。注意するね」
「あぁ、お互いそうしよう」
「でもさっ、隼人」
「何?」
なんだろう。
クルミが俺の顔をじーっと見ている。
「ありがとね、私を助けてくれて」
なんだ。
そんなことか。
「何、当然のことをしたまでだよ」
「それでもありがとう」
ニコニコ顔のクルミ。
俺は彼女の頭をさらに撫でたのだった。
「あぁ。でも時間があまったから。どこかによっていくか?」
「このままでいいよ。ここでまったりしよっ。池のアヒルさん見よ」
「そうだな」
俺とクルミは公園のベンチに座り、まったりしたのだった。
目の前の池では、アヒルが優雅に泳いでいた。