夜の戦い
眼光鋭い野良犬たち。
焼き松茸の匂いに釣られたのかもしれない。
「うぐううううううううっ!!!」
「うぐあああああああっ!!!!」
野良犬が俺たちに唸っている。
とんでもなく凶暴な顔をしている。
このヤバそうな顔。
飼い犬ではなく、間違いなく野生の犬だろう。
全然ゆるふわじゃない。
ペットには不向きだな。
ちっ。
犬達の視線とよだれを見るに・・・
彼らの狙いは俺たちの松茸のようだ。
しかし・・・
折角育てた松茸を奪われ訳にはいかない。
なんとかしないと・・・
なんとかせねば・・・
にらみ合う俺と野良犬。
膠着状態。
「は、隼人・・・逃げようよ~私達、食べられちゃうよー」
怯えるクルミ。
俺の服を掴んでユサユサゆする。
声が震えている。
「大丈夫だ、クルミ、俺が守るっ!」
「隼人、な、何する気っ?」
「いいか、クルミ、絶対に動くなよ。動くと怪我するぞ」
「うっ・・・うん」
俺は両手を野良犬たちに向ける。
手の平を犬達に向けるのだ。
犬達も俺の動きを警戒しているようだ。
俺の雰囲気に気づいたのかもしれない。
俺はつい数時間前。
スキル「成長促進」はLV2になったのだ。
今はその能力にかける。
スキル「成長促進LV2」にかけるのだ。
さっと動き。
両手を地面につける。
―――「練成っ!」
俺は叫び、心の中で念じた。
このスキルにかけたのだっ!
『草を伸びろ~草を伸びろ~、犬達を拘束しろ』
『草を伸びろ~草を伸びろ~、犬達を拘束しろ』
『草を伸びろ~草を伸びろ~、犬達を拘束しろ』
10回ほど祈ると。
ザザッ
ビュッ ビュッ ビュッ
草が伸び始め、瞬く間に野良犬たちを拘束した。
急激に伸びた草に全身を拘束される犬っころ。
勝負は決したのだった。
「よし、今だクルミっ!」
「えっ」
「松茸を狩って逃げるぞ。手伝ってくれっ!」
「う、うん」
俺とクルミは急いで松茸を狩った。
持ってきた袋に詰め込む。
クルミも無我夢中で松茸を狩っている。
時期外れの松茸狩り。
そして・・・
俺達は夜の森を後にしたのだった。
勿論七輪セットの火は消しておいた。
山火事には注意だ。
最後まで野良犬たちは草に拘束されていた。
うううー
ううううー
っとうなっていたが・・・
草の拘束はかなり強かった。
だが・・・
時間が経つにつれ拘束が緩んでいるようだったので・・・
犬達が逃げ出すのも時間の問題だろう。
危ない危ない。
油断は禁物だ。