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感動映画

 劇場に入り。

 スクリーンに映る映画を見る。

 泣き映画と評判どおり、館内にはすすり泣く声が聞こえる。

 隣の美波さんも泣いている。

 涙を流している。

 病気でヒロインが死ぬシーンが、心を打ったのかもしれない。


 だがしかし・・・

 俺は今いち乗れなかった。

 完全に取り残された。

 映画の内容よりも、キャストよりも、画面に映る植物に注意が向いてしまったのだ。

 

 あれは・・・まるまるだな。

 あれは・・・これこれだなっと。

 物語そっちのけで植物を観察していた。

 様々な植物が見れて満足だった。


 後。 

 なんだかんだ俺と美波さんは、映画を見ながら手を重ねていた。

 椅子の肘掛に俺は右手を、美波さんは左手をのせる。

 手を重ねて握っていた。


 最初はドキドキしていたが・・・

 次第に画面の植物が気になってきたので・・・

 最後にはあまり注意が向かなかった。


 





 映画が終わり。

 手を繋いで映画館を出ると・・・


「悲しかったね。泣いちゃった」


 目が赤い美波さん。

 うん。

 映画見ながら泣いていたからねー。

 美波さんは。

 悲しかったんだろう。


 でも・・・

 俺は植物が気になっていたので、全然悲しくなかった。

 だが、ここは空気をあわせて・・・


「うん、良い映画だった」


 っと無難に返しとく。

 冷血漢だと思われたくはないので。


 美波さんは泣いてスッキリしているようだし。

 彼女の顔を見ていると・・・

 俺も何だか映画を見て感動した気分になってくる。


 がっ。

 美波さんは俺の顔をじーっと見る。

 んんっ?

 なんだろう?

 どうしたんだろう?


「あれー?隼人君、悲しくなかった?」

「十分感動的な映画だったよ」


「ヒロインが死んじゃって、とっても胸がいたかっよねぇ」

「う・・・うん」


 じーっと再び俺は美波さんに観察された。


「あー、隼人君、まさか寝てた?」

「ち、違うよ。ちゃんと見てたよ」


 そう。

 ちゃんと見てた。

 寝ていたわけはない。


「ほんとー?じゃあ、問題だすね。映画を見ていたら分かるはず」

「どうぞ」


「ヒロインとヒーローが出会った場所は?」

「・・・・」


 ・・・・

 あんれー。

 ヤバイ。

 ヤバイな。

 分からない。

 全然分からない。

 植物しか見てないから、話なんか覚えてないし。

 出てきた植物なら答えられるけど。


 でも・・・

 高校生が主役の映画だったから。

 多分・・・


「学校・・・かなっ」

「ブブーハズレ。やっぱり寝てたでしょー」


「違うよ、ちゃんと見てたって」

「ならなんで間違えたのー?」


「・・・すまない、実は映画に出てくる植物が気になって、あまり人は見てなかったんだ」

「あー、なるほどねー」


 納得顔の美波さん。

 よかった。

 パキラの件があったからか、上手く納得してくれたようだ。

 誤解がとけてなによりだ。


「でもさー隼人君、見てないのにはかわりないよねー」

「えっ、そうなるのかな?」


 ちゃんと植物見ていたけど・・・


「うんうん。そうだよ。絶対そう。

 でも・・・お願い聞いてくれたら許してあげる」


 又しても、じーっとこちらをみる美波さん。

 泣いた後の顔だからか・・・

 妙に力があるというか・・・

 魅力的だ。

 女の子の泣き顔は魅力がUPする。

 こちらを見られると・・・心が動揺する。


「な、何かな・・・美波さん、そんなに見られると怖いな」

「あのキーホルダー勝ってちょ」


 売店にある星型のキーホルダーを指差す彼女。

 多分、今見た映画関連グッズだと思う。


 ふぅー。

 よかった。

 俺は安心する。

 それぐらいなら問題ない。


「いいよ」

「いいの?」


「うん」

「ありがとぉー言ってみるもんだね」





 俺と美波さんは売店に向う。

 キーホルダーを買い、美波さんに渡す。


「はいっ、どうぞ」

「はははっ、嬉しいなぁー本当にありがとね」


 笑顔の美波さん。

 ニコニコ顔だ。


「あっ、あと隼人君、もう一つお願いあるんだぁ~」

「いいよ。どんどんいって」


 この際一つも二つもかわないだろう。

 さくっとお願いを受け入れよう。

 もう一つキーホルダーでも欲しいのだろうか。

 俺は財布の中をこっそり確認するが・・・


「あのね。本当は今日のこと、クルミには言ってないの」

「えっ」


 えっ・・・・

 えええええええっ!

 何を言ってるんだ美波さん?

 

 ちょっと重い発言というか。

 予想外の一言に、俺は一瞬時が止まった。

 美波さんはなんでもないような顔だけど・・・


 えっ。

 どういうこと?

 どういうことなの?

 クルミに言ってないって事は・・・

 俺と美波さんは、クルミに秘密で映画館デートしたってこと?

 そういうこと?

 ・・・・・

 ・・・・・


「だからね。今日の事はクルミにも、皆にも秘密にして欲しいの。

 ほらっ、皆誤解するといけないから」

「あ・・・えっ・・・うん」


 うん。

 俺はこう返事をするしかなかった。

 もう美波さんと映画を見てしまったのだ。

 今さらどうしようもない。

 起こった出来事は変えられない。

 ならば・・・

 秘密にした方が問題ごとは避けられるだろう。

 クルミも悲しまずにすむだろう。


「よかった。映画楽しかったし、お腹ペコペコ。ご飯食べに行こっか?」

「だね」


 俺は美波さんの発言に心底驚きながらも、彼女と夕食に向った。

 



 その途中。

 誰かの視線を感じた気がした。

 見慣れた顔を見た気がしたのだが・・・誰だか分からなかった。

 多分、気のせいだろう。


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