友達レベル
放課後。
待ち合わせ場所。
学校から少しはなれた駅で待っていると。
「隼人君、お待たせー」
「やぁ、美波さん」
美波さんが息を吐きながら到着。
クルミと一緒に来ると言っていたが、彼女の姿はない。
どうしたんだろう?
「あれっ、クルミは?」
「そうだ。クルミね、部活抜けられなかったみたい。だから、2人で見に行って欲しいって。
私の分まで楽しんで欲しいって」
「そうか・・・仕方ないね」
「うん。じゃあ、映画館に行こっか」
「だな」
俺と美波さんは映画館に向った。
◇
ザワザワ ザワザワ
映画館はにぎわっていた。
ちょうどヒットしている高校生向けの恋愛映画があり。
多くの学生の姿がある。
「はいっ、美波さん、チュロス。蜂蜜いっぱいバージョン」
「ありがと~」
俺は売店でジュースとチュロスを買ってきていた。
美波さんに渡すと、子猫の様に少しづつ食べる彼女。
チュロスは食べかすを出さずに食べるのが中々難しいのだが・・・彼女はそのあたりを心得ているようだ。
服にパンくずが落ちていない。
滑らかな口運びだ。
そんな美波さんに感心しつつ、俺達はスクリーンの列に並んでいた。
別に特に並ぶ必要はないかも知れないけど・・・
皆が並んでいるのでなんとなく並ぶ。
それに、少しでもスクリーンの中に入りたかったし。
見回すと・・・
俺たちの前後には学生カップルの姿。
両方とも手を繋ぎ、甘いムードをただよわせている。
前も後ろも甘甘だった。
繋いだ手の指を動かしている。
ちょっと気まづかったが。
それは美波さんも同じようだ。
「あはははっ、なんだかアレだね」
「だね、恥ずかしい」
「・・・うん」
苦笑いする美波さん。
俺も同意だ。
この場にいると・・・なんだろう。
カップルらしいことをしなければといけない気までしてくる。
俺と美波さんはただの友達同士なのに。
なんだかお互いを意識してしまう。
場の空気か。
すると・・・
僅かに触れるお互いの手。
美波さんの手が俺の手に触れた。
偶々だと思うが、むずがゆい。
前のカップルが手を繋いだままイチャつきだしたから・・・
さらにキマヅイ。
お互いに背中に手を回してなにやら囁いている。
「ねぇ、隼人君。あたし達も・・・手、つなごっか?」
「?」
「ほらっ、皆つないでるし。別に変なじゃないよね。友達だし」
確かに。
美波さんのいう通りかもしれない。
この雰囲気だと返って手を繋がない方が浮く。
「そうだね」
俺は手を伸ばして美波さんの手をとった。
小さくて柔らかい感触。
しっとりとした冷たい手。
だが手の冷たさとは対照的に、俺の心は暖かくなる。
「隼人君、手、大きいねぇ」
「女の子よりはね」
「それにあったかーい」
「かなっ」
お互いに手を繋いでいると。
何故かドキドキしてきた。
心臓が高鳴ってきた。
何も話さないと返って緊張するので話題を探す。
「そういえば、美波さんは部活よかったの?バレー部」
「あははっ。理由つけてサボちゃった」
「悪い子だね」
「でもー。隼人君もだよ。美術部の部活あったんでしょ」
「大丈夫、俺も適当な理由をつけて休んだから。同じ部活のタカシが上手く言ってくれる。
それに・・・活発な部活じゃないからね」
「ふーん。タカシ君か~・・・2人とも仲良いよねー。とっても」
「あいつは面白い奴だからな。美波さんとクルミも仲良いでしょ?」
「うーん。でも、男の子とは違うよぉ」
何か意味深な笑顔の美波さん。
俺はあえてクルミとの仲には触れないようにした。
あまり触れてほしくなさそうだったので。
「そうなんだ」
「ねぇ、隼人君。あたしのこと好き?」
「ふぇ?」
ドキリと心が震えた。
いきなり聞きかれたので、変な声まで出てしまった。
美波さんがじーっとこちらを見ている。
俺の答えを待っているようだが・・・彼女の表情は読めない。
何を考えているかは分からない。
だが、真面目な質問の様に思える。
ならば・・・答えようか
「友達として好きだよ」
「だよねー。良かった」
「うんうん」
「あたし達仲良しだよねー」
「あぁ。友達レベル3ぐらいだな」
「何それ?高いのぉ?」
「かなり高い。女の子の中では一番」
「よかったー。あたし、どんどんレベルあげちゃおっかな」
「健闘を祈る」
「うわぁ、なんだかエラソー」
「すまない」
「いいよー」
俺はちょっと気まづくなって視線を動かすと。
目に入ってくるのはとある観葉植物。
思わず興味を惹かれてしまう。
あれは・・・・パキラ。
―――パキラだっ!
観葉植物好きなら一目で分かる。
熱帯アメリカ原産の植物。
観葉植物業界では代表的な存在が目に入ったのだった。
皆さん、忘れていませんか。
久しぶりに『ステータス』登場です~