ちょっと、どういうこと?
次の日の朝。
俺がクルミと一緒に教室に入ると、美波さんが女子グループに囲まれていた。
「あれっ、ミカだ。どうしたんだろうね」
「さぁーなんだろう」
俺はクルミから離れて、ささっと自分の席に向かった。
クルミは親友の美波さんの元に向う。
そして。
美波さんの姿を見て、一瞬フリーズした。
「はっ」と息を呑んだことが遠くからでも分かった。
「朽木さん、みてみて、美波さんの肌、すっごく奇麗なの」
「だよねー。粉雪みたいに奇麗。朽木さんレベルかも」
「あーいいなー。私もこうなりたいなぁー」
女子グループに話しかけられたクルミは。
「ほんとだー、いつの間に・・・」
っと返した。
チラッと鞄を置くふりをして俺の方を見たクルミは、明らかに怒っていた。
「クルミー、おはよう」
何気なく話しかける美波さん。
白い肌が奇麗だ。
昨日俺がスキルを使って奇麗にした肌。
「う、うん。おはようミカ」
クルミも表面的には笑顔で返す。
クルミと美波さんは、女子グループの中心に。
遠め目には、二人はいつも通り、親友同士で仲良しに見える。
でも・・・
俺はクルミの様子が僅かに変なのを感じていた。
美波さんに対してどこかぎこちなかった。
彼女達を観察していると・・・傍にタカシがくる。
「よっすー、隼人ー」
「おう」
「見た見たー、美波さん、ちょー肌きれいになってるの。
朽木さんも奇麗だけど、同じぐらい美波さんもヤバイワー」
「だなっ、成長期なのかもしれない」
「だよねー。どんどん女子はかわっていくな」
「おう」
俺は教室にいるクルミが気になって仕方が無かった。
彼女はちょっと変なのを感じる。
何かよからぬ気配を発しているのを感じたのだった。
キン コーン カーン コーン
予鈴が鳴り、皆席に着く。
美波さんは俺と目が会うと、彼女はニコッと笑いかけてきた。
俺は笑顔を返すが・・・すぐ後にクルミと目が合い。
すぐに笑顔を取り消した。
クルミの目が怒っていたのだ。
俺は粛々と授業の準備をしたのだった。
えっとー、一時間目が数学かな。
トントン
教科書を準備した。
ブブー
スマホが鳴る。
画面を見るとLINEメッセージ。
相手はクルミからだ。
クルミ:昼。話し聞かせて。意味、分かるよね
俺はゾット恐怖した。
スタンプや顔文字など、何もついていないシンプルなメッセージ。
クルミの気持ちを表わしているのだろう。
朝からどっと疲れが溜まったのだった。
ひょええええー。
ガクブルガクブル。
◇
「隼人、どういうことっ!?」
昼食時。
予想通り、空き教室でクルミにつめよられていた。
原因は美波さんだ。
明らかに肌が白く奇麗になった彼女。
その変化に気づいたクルミは、時折俺をギロリと睨んできた。
午前の授業合間に何度か話したが、人前でスキルの事を話すことは出来ない。
表向きは世間話をしながら、俺はクルミの怒気に押されていた。
でっ。
やっと二人になった今。
昼食タイム。
俺はクルミにつめよられている。
午前中にたまりにたまったであろう思いをぶつけられていた。
「隼人。どういうこと?なんでミカの肌が奇麗になってるの?私、聞いてないよ」
「それは・・・美波さんに頼まれたからさ」
「一回しかしないっていってなかった?」
「そうだけど・・・美波さんは本気でしてほしいみたいだったし、減るもんじゃないだろ」
「でもダメだよ。私にちゃんと教えてよ。朝ミカのこと見たとき。私、どう思ったと思う?」
「クイズかな?」
「ふざけないでっ!私、すっごくショックだったのっ!」
「・・・すまない」
「ねぇー隼人。それに肌を白くしたってことは、私の時と同じようにしたってことだよね?」
「・・・・えっ・・・うん」
「下着姿で抱き合ったんだよね?ミカと」
「・・・はい」
「私、隼人の彼女だよね?」
「・・・はい」
「普通、彼女の親友と下着姿で抱き合わないよね?」
「・・・・はい、ごもっともで」
「やっぱり、隼人がおかしいよね」
「・・・・ですね」
「もう・・・信じられない。隼人、反省してる?」
「すまない、クルミ」
なんだかとても悪い気がしてきた。
昨日はなんとなく雰囲気に押されて、美波さんにスキルを使ってしまったが。
今は申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
よくよく考えると、使うんじゃなかったなー。
今は猛烈に反省している。
「でも、クルミも親友が奇麗になることはいいことだろ?」
「それとこれとは別。隼人ー、もうしちゃだめだよ。私、とっても悲しい」
「あぁ、分かった。しないよ。もうしない。絶対に。ごめん、クルミ」
「ちゃんと約束ね」
「あぁ」
俺はクルミと約束したのだった。
久しぶりに苦痛の昼食タイムだった。
胃がキリキリしたぜ。
彼女には逆らえない・・・