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美波さんのお願い2

 だがっ。

 俺は色仕掛けには屈しず、頭を使って考える。

 美波さんにスキルを使うかどうか。


「いや・・・うーん」


 悩む。

 俺は悩む。

 別にスキルを使ってもいい・・・

 特に何か断る理由があるわけでもない。


 でも・・・・

 どこか心の中で「止めといた方が良い」という声が聞こえた。

 スキルを多くの人に使わない方が良いと。

 本当はクルミだけに使う予定だったのだが。

 それが既に1回美波さんに使ってしまっている。

 その事が俺の決意を鈍らせる。


「隼人君、お願い。あたし、クルミの親友だよ。クルミもきっと喜ぶと思うから」


 美波さんは本気のようだ。

 表情を見れば分かる。

 これは切実な願いなのだ。

 

「お願い、隼人君っ!」


 美波さんは俺の手をギュッと握った。

 暖かな胸の感触が伝わってくる。

 彼女の想いが伝わってくる。


 俺は決心した。

 決心したのだ。


「分かった。いいよ。でも、これ一回きりだから」

「ありがとうっ!隼人君」


 美波さんは満面の笑みだ。

 クルミとは違った感じの笑顔に、俺は魅了される。

 クルミはリス系だったが、美波さんは子猫系だ。

 ポンポン撫でたくなるような魅力ではなく、ぎゅっと抱きしめたくなる魅力がある。

 ついつい構ってやりたくなり魅力を兼ね備えている。


「それで、どこを奇麗にしたいのかな?」

「えっと・・・肌をお願いして良いかな。白くて奇麗な肌にしたいの」


「そ、そうか・・・」


 俺はその答えに戸惑った。

 その部位は出来れば避けたかった。

 他の部位であれば・・・問題はなかったのだが。

 なんという不運。

 運命は残酷だ。


「あれっ、どうしたの、隼人君?クルミの肌も隼人君が奇麗にしたと思ったけど・・・違った?」

「あぁ、それはそうだけど、全身の肌を奇麗にする際は、ちょっと問題があってね」


「問題っ?」

「そうなんだ。なるべく触れ合わないといけない」


 そう。

 恋人同士ならいざ知らず。

 彼女の親友とはちょっとやりにくい行為。


「触れ合うって、具体的には?」

「えっと、つまり、なるべく多くの肌を接触させないといけないんだ」


「???」


 ポカン顔の美波さん。

 抽象的な答えだったから理解していないのかもしれない。

 ここはストレートに言おうか。


「分かりやすく言うと、下着姿で抱き合う必要がある。数秒だけど」

「・・・・・・」


 ぱっと。

 顔が赤くなる美波さん。

 さっきなんでもするといったわりには、随分乙女な反応だ。


「イヤなら、別のことにした方が・・・」

「いや、いい。それでいいから。肌でお願いっ!

 鍵をかけてカーテンを閉めれば、誰も入ってこれないからっ!」




 美波さんがささっと動き出した。

 ガチャ

 部屋の鍵を閉め。

 ジャー

 カーテンをかける。


 数秒で密室ができあがった。

 なんという早業。

 慣れているのかもしれない。

 

 暗くなった理科準備室で、俺と美波さんは向かい合う。

 隠微な雰囲気が漂う。

 美波さんの吐息がよく聞こえる。


「美波さん、なんだか恥ずかしいね」

「ちょ、隼人君、言わないでよー。あたしもそう思ったけど、口にはださなかったんだから」


「ふふっ、そりゃどうも失礼しました」

「変な笑い方しないでよー。もうっ、緊張して損したー」


 脱力した笑みを浮かべる美波さん。

 緊張が解けたようだ。

 カッチコッチになっていた彼女がやわらぐ。


「じゃ、早く服を脱ごうか。俺、脱ぐから」

「えっ、ちょ」


 なんだか泡食ってる美波さんだが、俺はかまわず制服を脱ぐ。

 まずは上を脱ぎ、次に下に取り掛かる。


「わ、わっ、まってよー。あたしも脱ぐから」


 目の前で美波さんも制服を脱ぎだす。

 制服のリボンを外し、その次にスカートを脱ぐ。

 スルリとスカートが床に落ちる。

 彼女の奇麗な肌が、太ももが露になる。

 揺れるシャツの隙間から、僅かに水色のショーツが見え隠れする。


 っと、観察していたら。


「ちょ、そんなに見ないでよっ」

「あっ、すまない」


 俺は目をそらして、さっとズボンを脱ぐ。

 トランクス一枚。

 俺は準備完了だ。いつでもいける。


 目の前で美波さんはシャツを脱ぎ、身につけているものは下着だけに。

 よく運動しているためか、ひきしまった体だ。

 すらりとしたお腹周りと足回り。

 ここは明らかにクルミと違った。

 クルミは太っているわけはないが、ムチムチしている。

 

 美波さんは上下水色の下着をきているようだが。

 フリフリはついておらず、シンプルなもの。

 お腹の辺りには赤い小さなリボンがついている。

 それに胸はやはり推測どおりCカップだった。

 まぁ、クルミが話しているのを聞いたから、間違いないとは思っていたけど。


「脱いだよ・・・・これで・・・いいかな?」


 両手で胸と股間を隠し、恥ずかしそうに顔を赤く染める彼女。

 もじもじと揺れる体。


 普段の活発的な彼女の表情とは違い、凛とした静かな雰囲気に。

 そのギャップに、俺は思わず見とれてしまった


 うん。

 なんだろう。

 なんだろうかー。

 恥ずかしいな。

 早く終わらせよう。


「ちょっ、恥ずかしいんだけどー。これでいいんでしょ?」


 おっと。

 彼女に見とれていたため、返事をするのを忘れていた。


「美波さん、OKだ。ばっちりだ。恥ずかしがるような体じゃない、十分魅力的だ」

「ばっ、ばかー。もう、へんなこと言わないで。ますます恥ずかしくなるじゃん」


 さらに顔を赤くする美波さん。

 羞恥心が強く伝わってくる。


「でっ、隼人君、どうすればいいの?」

「とにかく多くの肌を触れ合わせる必要があるから、抱き合う必要がある」


「抱き合うって、やっぱこの姿のままだよね?」

「あぁ。それと美波さん、後ろからと前から、どっちから抱きしめて欲しい?」


「えーと・・・」


 美波さんは暫く考えた後。


「じゃあ、前からでっ」


 っと、小声で告げた。

 妙に気持ちがこもった言葉。

 葛藤が含まれた言葉に、俺の心は震えた。


「分かった。要望通り前から抱きしめよう」

「もぅ、へんな風に言わないでって・・・まるであたしが頼んでみるみたいじゃん」


「じっとしていてくれ。すぐに抱きしめる」

「・・・うん」


 俺は下着姿の美波さんに近づいた。

 放課後の空き教室は、妙に蒸し暑かった。

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