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美波さんのお願い1

 学校。

 廊下を歩いていると・・・

 

「結城君~、結城君~」


 むむっ。

 どこからか名前を呼ばれた。

 どこだっ?

 どこからだ?


 でも・・・

 視界に声の主は見えない。

 ちょっとちょっと・・・ 

 これ・・・

 また幻聴じゃないよね。

 スキルなんちゃらの声じゃないよね。 


「結城君、結城君、こっちこっち」


 はっ。

 声は後ろ斜め後方から。

 さっと振り返ると・・・

 クルミの親友、美波さんが廊下の隅から俺を呼んでいた。

 「こっち、こっち」と、笑顔で手招きしている。

 子猫みたいでちょっとかわいい。

 猫耳が似合いそう。



 俺は彼女の元に向う。


「どうしたの?美波さん」


 美波さんはキョロキョロし。

 他の人に見られていないか周りを確認しているようだ。

 キョロ波さんだ。

 彼女は誰もいないことを確認してから。


「えっとね、実はさー、隼人君にお願いあるんだ」

「ほーう」


「放課後、3階の理科準備室にきてもらっていいかな。今日は誰もいないから」

「別にかまわないけど・・・」


 放課後はクルミとの予定もあるので。

 「クルミも一緒にいいかな?」と聞こうとしたところ。


「一人で来てね。絶対だよ。誰にも言わないで」

「あっ、うん」


 先をこされた。

 勢いに押された。

 条件反射的に返事をしてしまった。


「じゃあ、放課後ねー、隼人君、ばいばーい」

「おう」


 美波さんは、さっそうと駆けて行った。

 爽快な足取りだった。

 嵐の様な出来事。



 俺はポツンと廊下に取り残された。


 うーん。

 一人で来てか・・・

 一体何の用事だろうか?


 俺はしばし思考に耽りながらも、あまり深く考えないようにした。

 多分大した用事じゃないだろう。

 なんでもないことだと思う。

 ちょっとした相談かな。

 

 そう思い。

 俺はクラスに戻ったのだった。



 この先に待ち受ける、出来事の予兆にも気づかずに。







 放課後。

 クルミに「ちょっと遅くなるかも」とLINEで連絡を入れてから。

 美波さんが待つであろう理科準備室に向った。

 勿論クルミには内緒でだ。




 部屋に着くと。

 既に美波さんがいた。

 机にちょこんと腰掛けていた。

 スカートからスラリと伸びた足をバタバタさせている。 


「あっ、隼人君、来てくれたんだー。嬉しいなー」

「あぁ。約束したから」


 なんだか笑顔の美波さん。

 彼女はささっと俺の近くにより、自然に手を取った。


「ほらっ、ここに座って」


 美波さんに手を引かれるまま、俺は席に着いた。

 対面に美波さんが着席するかと思いきや・・・立ったままだ。

 

「隼人君。何か飲む?。この部屋、冷蔵庫があるんだー。お茶で良い?」

「いいよー」


 冷蔵庫に向かい、お茶を取り出してコップに注ぐ美波さん。

 手馴れている。 

 女の子がコップに飲み物を注ぐ姿は、妙に心を掴むものがある。


「はいっ、どうぞ、冷たいよー」

「ありがとう」


 俺はコップを受け取り、ゴクリと飲み干す。

 くぅううううー。

 よく冷えた麦茶だ。

 キーンと頭に響く。

 ちょっと頭を手で押さえる。


「ほらっ、冷たかったでしょ。すっごい冷え冷えなのー」

「あぁ。ビックリだ。極度に冷やされている」


 俺の頭痛? (冷え麦茶によるキーン)が収まったのを確認してか。

 美波さんが口を開く。


「あのねー隼人君。なんだろう、あははっ、二人で話すの緊張するね」

「・・・かな」


 確かに。

 教室でちょこっと話した事はあるし。

 クルミを交えて3人で離す事は時々あるけど・・・

 二人きりで話すといつもとちょっと調子が違う。

 

「そういえば、最近クルミ奇麗になったよねー。胸も大きくなったし。隼人君もそう思うよね?」

「あぁ」


「髪もとってもきれい、肌もすっごく奇麗、爪も素敵」

「うん」


「数ヶ月前と全然違うと思うの。すっごく奇麗なモデルさんみたい」

「まぁ、そうなのかな」


 俺は今だに。

 クルミは奇麗系ではなくかわいい系だと思っているが。

 美人になったのは間違いないだろう。

 皆いってるし。


「ねぇ、隼人君、知ってるかな?クルミ、男の子にも女の子にも大人気なんだよー。

 毎週の様に告白されてるし、皆奇麗だって言ってるよ」

「そういえば・・・そんな話きいたかな」


 でも、告白されている事は知らなかった。

 しかしラブレターも下駄箱に入っていたし、それなら告白されていてもおかしくないか。

 きっとクルミは、俺に気を使って話さずにいたのだろう。



 美波さんはさっと座りなおす。

 スカートの乱れを直したようだ。

 それから僅かに真剣な表情をする。

 さっきまでは笑顔だったけど、今はちょっと違う。

 

 妙な緊張感が場を包む。


「隼人君。変に誤解しないで欲しいんだけど・・・」

「うん?」


「前まではねー、クルミよりあたしの方が奇麗だったんだよ。別に変な意味はないよ」

「ほーう」


 まぁ。

 美波さんはすらりとして体系もいいし。

 顔も美人の類に入ると思う。

 運動部で元気もいいから、クラスの男子の中でも人気があるのは知っている。

 

 タカシの意見では、美波さんはクラスで3番目にかわいいらしい。

 クルミが一番になってからは、4位に順位を落としたが、奇麗な黒髪になったことで3位に戻ったとのこと。

 昔のクルミはクラスで中位だったらしいので、美波さんの自己分析は正しいだろう。


「クルミといるとねー、皆クルミの方ばかり見るんだ。前とは全然逆っ。皆クルミばっか見るの」

「そうか」


 まぁ。

 それは分かる。

 俺もクルミといると、皆彼女の方を見るからな。

 なんとなく雰囲気を察する事はできる。


 でも・・・

 女子同士と恋人とでは、意味合いが違うだろう。

 明らかに自分より魅力的な同性が傍にいるのは、あまり良い気がしないのかもしれない。

 それが・・・昔は自分の方が優れていた場合は特に。

 複雑だ。


「隼人君。お願いがあるんだ。その・・・あたしもクルミみたいに奇麗にしてくれないかな?

 ほらっ、前に髪を奇麗にしてくれたみたいに」

「えっ」


 やはりか。

 途中でなんとなく感じていたが・・・

 やはりそのお願いだったか。

 いつ美波さんがスキルによる美容整形をいいだすか・・・ヒヤヒヤしていた部分もあったのだ。

 俺の悪い予感はあたってしまったようだ。


「少しで良いんだ。肌をきれいにして、爪をピカピカに、胸ももっと大きくしたいの」

「いや・・・それは・・・一回だけって約束だったし」


 美波さんが近づいきて、俺の手を取る。

 ちょっと冷たい柔らかな手で俺の手を握る。


「ねぇ、隼人君、お願い。あたし、何でもするよ。なんならっ、クルミがしないことでもしてあげるから」


 俺の手を胸元に押し当てる美波さん。

 Cカップと推測される美波さんの胸の弾力を感じ。

 クルミとは違う種類の、女の子の甘いに匂いがする。

 

 俺は・・・

 ゴクリと唾を飲み込んだのだった。

 心がザワザワと泡だった。


ゴクリ・・・


あらすじに追記しましたが、暫く毎日投稿です。

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