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「あー、そうそう!京、お前またタマセンが探してたぞ?」
永い話がひとしきり終わると永山は本題をやっと口にした。本題までの前置きまで長いとは…
「うえ、タマセンが?」
タマセンとは京のクラスの担任、たま先生の略だろう。
この「たま」が苗字なのか名前なのか生徒はもちろん先生の間でもわからないというのはこの学校の七不思議のひとつであるがそれは置いておこう。
京はなんとなく自分が呼び出された理由が解っていた。
職員室の扉を開けるとコーヒーの匂いとピシッとした緊張感が漂う。そこは「職場」であり、生徒たちの憩いの場ではなかった。
はずなのに一人だけ異色を放つ者がいる。他の先生と同じデスクで同じ椅子なのに座り方が違う。
「タマセン、今日は何のボーズ?…ですか?」
タマセンは教師だが、最も生徒に近く、最も先生から遠い存在だ。
そんなタマセンだが、教員の周りである手前、一応敬語は使っておいた方がいいだろうと京は判断した。
タマセンはそんな不自然な言葉使いなど気にする様子もなく、
「おー、堀之内氏ですな」
上目遣いでこちらを覗くが、座り方はキープされたままだ。
「今日は弥勒菩薩半跏思惟像ですぞ!」
「ロダンの考える人ではないと思ってました。」
「さすがは堀之内氏!あなたのまわりくどい思考回路私は好きですぞ」
「まわりくどいって…」
「ふふ、褒めているのですぞ?」
「はぁ、」
「でも、もう少し気楽に考えてもいいのでは?とも思いまする」
そう言って一枚の用紙を取り出し、京に渡そうとする
「あ、いや、持ってます」
「解ってます。ただ、クラスでまだ提出していないのは君だけなので」
「………。」
「君たちはまだ17歳、この先の選択肢はたくさんあります。だからその一つずつを消してひとつの答えに絞るというのはとても良いことだと思います。ただ…」
「ここで絞りきる必要もありません。答えの存在する学問において、消去法というものはとても有効ですが、答えのない人生において消去法は無力なのかもしれませんねぇ」
「君のお友達がそうしているように、『進学』か『就職』、漠然とした答えでもいいからますはそこまでの絞りで良いのではないでしょうか?」
「タマセン…」
「そうしてもらわないと教頭に怒られるのです。怒られたくないし…」
「アンタそれでも先生かっ!!」
「えへっ☆」
「…ったく、わかった、わかりましたよ。明日には書いて提出します」
「ふふん♪これも先生の名演技のおかげですかねー♪」
「…やっぱもう少しかけて良いですか?」
「ちょっと待って…堀之内氏〜」




