人の造りしもの
それは、目を疑うような光景だった。
「オーダンナー」はまるで、武術家のような体さばきで、掘削ドリルをかわしていた。
そして、振り上げた腕が回転、輝きを放ったかと思うと、そのままシャコメカを貫いていたのである。
砕けるメカ、そして少し後方に落下する分離された腕。
チカとヒロシ、そして「スーパーロボット作ろう会」の皆さんはその光景に唖然となっていた。
「……これは」
「……ロケットパンチや」
チカが振り向くと、後ろで見ていたヒロシも驚いているようだった。
そして、無残に砕けたメカが崩れ落ちる。
その様子に、工場内は歓声に包まれた。
『一体何があったんや?』
ミオ自身も状況があまり把握できていないようだった。
チカは、彼女の無事を確認して安堵しつつ、異星人のメカを丹念に撮影した。
よく見ると、そこから人間らしき何かが這い出てくるのが見える。
どうやら、行動不能になったらしい。
遠くから警察のサイレンの音が今更のように聞こえてきた。
それに、ヒロシは満足げに頷いた。
「まぁ、武器持っとるかもしれへんし。あいつは警察に任せたらええやろ。ミオ、良くやったぞ!大勝利や!」
『ホンマ、死ぬかと思ったわ……まだドキドキしとる』
ミオも今更ながら鼓動が抑えられないようだった。
それは、工場の一同も同じであった。
「それにしてもロケットパンチとは……天王寺さん、すごい隠し武器があったんですな」
しみじみ言う荒本さん。
だがヒロシは、それにキョトンとした顔をする。
「え? ワシそんなん仕込んでへんで? ほな、長田君?」
「いや? システムプログラムだけで腕を飛ばすなんてできませんけど?」
三人は、それぞれ首を傾げる。
一体、なんで腕が飛んだの?
三人の言葉に、いぶかしがりながら「オーダンナー」の状況を確認したチカは、もう一つ異常を発見した。
それを何度も確認し、チカは青ざめた顔で声を上げる。
「ちょっと!これ見てください!」
チカに言われ、再度モニターに目をやる一同。
そのドローンに映し出された、「オーダンナー」の背中だった。
「なんかおかしいんか?確かに、あちこち傷は入ってるけど……」
状況が呑み込めず、首をかしげるヒロシ。
それに、チカは重要部分にカメラをズームしてみせた。
「これですよ!」
それに、今度はヒロシが声を上げる番だった。
「オーダンナー」の背面につながっていたはずの、電源供給ケーブルが、いつの間にか切れ、どこかに行ってしまっているのである。
切れ端が近くにない事から、どうも切れたのはだいぶ手前の事だったようだ。
「一体いつからケーブル切れてたんでしょう?」
「電池だけで、あれだけパワー出せるはずないんやけど……」
もし、電池が切れていたらどうなっていたことか。
一同は力が抜ける思いがして、なんだかみんな乾いた笑いがこみあげてきた。
『ちょっと!くっちゃべっとらんで、はよここから出してくれへん?そもそも、これ、どうやったら外に出れんの?』
そんな一同に、ミオの抗議の声が届く。
それに、ヒロシはタブレットを確認して答えた。
「椅子横にレバーがあるから、それで開くはずやぞ……でも、散々装甲をどつかれとるから、どこか歪んどるかも……」
『え?ちょっと!何とかしてよ!こんな所で閉じ込められたないで!レバー?どこ?』
どうやら、風船のせいでレバー自体に手が届かないらしい。
丈夫だし、誤作動は無いだろうが、これは明らかに設計上の問題だった。
そして、ドローンカメラで見る周辺の光景はどんどん変わっていく。
「警察の車が集まって来ています。このままロボット動かすのはまずいですよ」
そう訴えるチカに、ヒロシは大きく頷いた。
ひとまず騒動は一段落、これからは後始末である。
「よっしゃ、移動できんなら、こっちから行くわ。ちょっと待っとって!……アポロ!ベルタ! パイロット救出の準備や!」
ヒロシがまるで近所の行事の手伝いにでも行くような口調でそう言うと、アポロ、ベルタ、そして荒本さんはじめ「スーパーロボット作ろう会」の皆さんは、各々工具を準備し始める。
そして彼らは鼻歌交じりに、近所のホームセンターへミオを救助に向かった。
後には、ドローンの操作とミオの話し相手として残ったチカと、制御プログラムのチェックを行っていた、長田が残った。
「おかしい、やっぱり、プログラムにない動きをしている……」
長田がそう言いながら、モニターを見つめ首を傾げているのを、チカは聞き逃さなかった。
【次章予告】
宇宙から、幾つもの思惑が絡みつく。
異星の影が地球の政界を蝕み、権力者たちは己の願望のためだけに駒を置く。
天王寺ミオは、再び「オーダンナー」を駆り、大阪舞洲での戦いへと身を投じる。
鋼の巨体が咆哮し、謎の力の発現する
父・ヒロシは何を託し、何を隠してきたのか。
内閣調査室から来た男は、冷徹な計算の果てに一体何を見据えているのか。
そしてミオ自身……彼女は、ただ守るために戦うのか、それとも——
運命の歯車は、既に容赦なく回り始めた!
次章『オーダンナー譲渡指令!』
6月1日より公開予定!
ミオの飲む親父のコーヒーは、苦い




