11 再びメグは語る(2)
これにて、終了となります。
「実は先週、家族会議がありまして」
「ほう、みんなここに集まったのか」
「議題は、「いつ姉さまに、実はメグちゃん生きていたってことをバラす」かです」
「ノリノリだな。だが、いいのか、お前まだ、引きずっているだろ?」
そうなのだ。私はまだ、姉のことを受け入れられずにいる。
考えてみてほしい。勝手に悪役に仕立て上げて、終いには、か弱い私に聖魔法を使えって言ってきたのよ?ひどくね?
未だにあの時の光景が目に浮かぶ。歪んだ笑みを浮かべた姉の顔が。私が苦しむ姿を見て喜ぶ姉の姿が。
「そうですね、怖いです。なかなか割り切れるものではないですね」
「当たり前だ。人はそんなに簡単じゃねえ。お前は傷ついた。傷が治る時間は、人それぞれなんだ。聖人の俺が言っているんだ。無理するな、簡単に許してやる必要はないんだからな」
「…はい」
まあ、そうなんだけど。
「でも、まあ、家族も困っていまして」
先週ここに、両親と兄さまがやってきた。まあ、魔物の受け渡しもあるから、父と兄はしょっちゅう出入りはしているんだけど、3人まとめては珍しいのだ。
私自慢の薬草茶と、母さまチョイスのクッキーをうまうま食べながら、会議はスタートした。
「メグ、お前がアリシアによって傷ついたことは理解している。だが、このままお前が生きていることを隠し続けるのは難しい」
「そうよね…」
「イリスが側室になるだろう?本人「うっかりアリシアにお姉様って言ってしまいそう。メグは私の妹みたいなものだから」って言ってたぞ」
「おおお姉ちゃーん!」
「どうどう」
世間一般には、私が死んだことにしておかないといけないのは間違いない。
私が生きているイコール、なぜメグに巨大な魔力がある?、神殿の秘技だとう?、その力があれば、世界征服なぞ簡単じゃああああー、という流れになってしまうからだ。
だから、可愛いメグちゃん生存説は、身内にしか話せない、のだが。
母がぼそっと呟く。
「実はね、いつ自分がアリシアにポロッと、メグちゃん生きてるって暴露しちゃうのか、心配で心配で…」
「俺も」
「私もだ」
「実は私も」
全員だった。
実は一度転移魔法陣でうっかり王城に行きそうになりました。前科ありますっ。
「ってことで、それなら誰がバラすか、賭けようかという話になりまして」
「いやいや待て、どうしてそうなる」
師匠のツッコミに思わず笑う。
「そうですよね。でも、せっかくなら楽しんでしまおうということになりましてね。ちなみに、バラした人が全員に奢るというオプション付きです」
ガハガハ笑うと、師匠が頭を抱えた。
「お前を少しでも心配した自分がアホに思える」
「すんませーん。でも、ありがとうございます。心配してくれて」
師匠は顔を上げて私を見て、ふっと笑う。
「お前はしょうがない弟子だよ。生涯面倒見ねえとダメだなこりゃ」
それはどういう意味ですかって聞きたいけど、聞けない。多分顔面赤を通り越して黒くなってるかもしれん。あわわわわ。
師匠はテーブル越しに私の顔を両手で引っ張った。
「ぐえ」
「ホント、お前らしいわ」
そう言うと、そのまま唇を重ねた。テーブル越しという、お互い腰の痛くなる姿勢で、ぎこちなくて、ムードもないけどな。
後で師匠も一口賭けます?って聞いたら、呆れた顔をしていたけど、
「大聖女さま、私がバラすに1000点賭けてましたよ」
「仕事早いな!」
師匠も私がバラすに2000点賭けてた。多いな。
「俺は前からお前に人生賭けてるけどな」
師匠が何か小声で言った。
「なんか言いました?」
「いや、ナイショ」
なお、私以外全員、私がバラすに賭けていた。
ちくせう。
*****
結局、バラしたのは、王子だった。
イリスが側室になったから私が王子にも会う用事が出来て、転移魔法陣あげたんだけど、それを王子がうっかり姉の前に落としてしまったのだ。
「ルミル様、何か落としましたよ」
姉が拾った途端に魔法陣が起動して、姉が魔境に飛んできたのである。
「え、何、ここはどこなの…」
ちょうど薬草畑で作業をしていた私と目があってしまい、
「…てへ」
ごまかしたが、ダメだった。
淑女にありえぬ高速移動で抱きつかれ、号泣された。
「生きてた、メグが生きてたああああー!」
「姉さま、鼻水がつくんですけどおおおおー!」
仕方ない、2人で後で着替えよう。
その後、冷静になった姉から笑顔の事情聴取を受けた。正座で2時間。懐かしい思い出だ。
ちなみに、私が賭けていたのは、王子である。
お義兄さま、ご馳走様ですっ!
おしまい
賭け仲間が王子に奢ってもらっている時に、アリシアがやってきて、全員正座で説教くらうまでが様式美。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。




