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ニャニャーン大乱記  作者: ひろの
第六章 最後の抵抗、新たな支配

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第八十八話 前夜祭

二ヶ月近い航行の末、遠征艦隊はようやくニャークォテッド星系へ到達した。


この星系は、ニャドロット、ニャロンメラン、ペニャンドーク――

三つの占領星系すべてへFTL航路が伸びている要衝である。


ここからなら、どの星系へも一回のFTLジャンプで到達できる。

つまり、メクト側から見れば、この時点ではどこが戦場になるか予測がつかない。


その不確定さこそが、イレーネの狙いでもあった。


・ ・ ・


第1艦隊旗艦 《メルエルニャ》。

提督室には、作戦参謀長アーヴィン・ミャクス中将が控えていた。


シズクの懐刀として知られる切れ者だが、イレーネやシズクのように“提督になるために選抜された天才組”ではない。


それでも、シズクが信頼して任せてきた実務家であり、イレーネにとっては“戦術コードでは伝えきれない単発指示を艦隊へ伝える”重要な役割を担う人物だった。


アーヴィンはホログラムに映る星図を見つめ、静かに口を開いた。


「狙うは……第1狩猟艦隊の撃滅……。

 とはいえ、向かうのはニャドロット星系、ですね」


イレーネは椅子に座ったまま、ゆるく頷いた。


「はぁい。敵は第3狩猟艦隊ですぅ。

 侵攻艦隊の中では一番やりやすいはずですねぇ」


アーヴィンは腕を組み、淡々と続ける。


「そうですね。

 とはいえ、メクトは先駆文明を除けば、現状銀河最強の国力と軍事力を持つ帝国です。

 あの大きな図体を乗せるために、一隻一隻が我々よりも巨大に造られている。

 巡洋戦艦ですら、当方の戦艦クラスです。

 ……常に一階級上の艦種と殴り合うようなもの……、決して油断はできませんよ」


イレーネは頬を膨らませ、肩をすくめた。


「はぁ、嫌なことを思い出させますねぇ。

 分かってますよぉ。だからこそ正面から殴り合ったりしませんよぉ」


アーヴィンは苦笑しつつも、確認を怠らない。


「はい。しかし……実際は殴り合うんですよね?それも徹底的に」


イレーネはぱっと笑顔を浮かべた。


「はい、そうですぅ!

 私達がニャドロット星系に跳べば、ニャロンメラン星系の第1狩猟艦隊にもすぐ伝わりますぅ。

 急いで援軍に駆け付けるでしょうねぇ」


アーヴィンは星図を操作し、航路距離を確認した。


「二週間、といったところでしょう。

 こちらも移動に時間がかかるので……実質、敵の援軍が到着するまでに戦える日数は十日強です」


「はい、十日では第3狩猟艦隊、第3守護艦隊を潰すのは無理ですぅ」


イレーネは指先で机を軽く叩きながら言った。


「ですけど、これが作戦の第一段階。

 動き始めたら疾風行軍ですぅ!

 少しでも早く接敵して、ガチンコで殴り合いますよぉ!」


アーヴィンは深く頷いた。

その表情には、覚悟と信頼が入り混じっていた。


「……はい。では明日、星系要塞を出航し、ニャドロット星系を強襲します」


イレーネは満足げに微笑んだ。


「はぁい。いよいよですねぇ」


ニャドロット強襲作戦――始動前夜。


・ ・ ・


第1艦隊、第4艦隊は星系要塞から出撃した。

そこからは最大船速で一気にニャドロットに向けて飛ぶ。


ニャドロットへジャンプした後、すぐに敵情報を艦隊レーダーで捕捉。

細かい点には偵察機を飛ばしながら星系要塞に向けて亜光速航行で一気に詰め寄る。


神聖帝国艦隊は迷わず第3狩猟艦隊に直進する。

第3狩猟艦隊は神聖帝国艦隊を正面に見据えたまま、徐々に星系要塞から離れつつニャロンメラン星系側へ移動している。


このまま星系要塞とニャロンメラン星系へのFTL航路の中間あたりで迎え撃つようだ。

艦隊戦略としては1対2となるため第3狩猟艦隊はやや無謀な動きにも見える。


しかし、よほど防御に自信があるのだろう。

もし1対2の状況を10日ほど耐えきることが出来れば、今度は第1狩猟艦隊が合流し、第1狩猟艦隊/第3狩猟艦隊/第3守護艦隊の三方向包囲が完成する。


神聖帝国最強のシズク率いる第1艦隊を相手にするためには、「肉を切らせて骨を断つ」覚悟が必要と判断したようだ。

仮にそれに乗らず第3守護艦隊を各個撃破しようという動きに入れば、すぐに第3狩猟艦隊が詰め寄って、今度は星系要塞/第3狩猟艦隊/第3守護艦隊の三方向包囲を完成させる。


いずれにせよ、防御側の利点を活かしてメクトは銀河最強クラスの神聖帝国第1艦隊を迎えうつ。


「全くズル賢いですねぇ」


イレーネが呟くが、すぐにアーヴィンが返す。


「“浅はか”の間違いでは?全て提督の狙い通りです」


「そうですねぇ。シズク様の武名がこんなところでも役立ちました。

 第3狩猟艦隊に一気に詰め寄ってください。

 まずは狙いは第3狩猟艦隊ですぅ!」


「と、思わせるんですよね?」


即座にアーヴィンが補足する。

その言葉に、イレーネは意地悪そうに微笑んだ。


「はぁい!」


第3狩猟艦隊に高速で詰め寄る神聖帝国艦隊。


第3狩猟艦隊はシールドと追加装甲を前面に展開し、魚鱗体制で装甲の厚い艦船が前に立った。

完全に防御態勢を取った。第1狩猟艦隊との挟撃を狙う。


「確かぁ、第3狩猟艦隊の提督はオークアルンクさんでしたかぁ?

 駄目ですねぇ。各個撃破の基本は弱い奴か弱みを見せた者から狙うんですよぉ。

 シズク様を相手にしているつもりなら、もっとちゃんと考えるべきですぅ。


 全艦宙域Y-221に向けて宙間魚雷を一斉に放て!

 射撃後、第3守護艦隊に最大船速で詰め寄れ!」


イレーネが命じると、すぐにアーヴィンが全艦へ代理で指示を出した。

第1艦隊、第4艦隊は敵のいない宙域に一斉に宙間魚雷を放った。


同時に全艦が一斉に回頭し、速度を落とすことなく、星系要塞と第3守護艦隊の方に向かう。


慌てたのは第3狩猟艦隊のオークアルンク提督だった。

一斉にシールドに当てたエネルギーを推進力へ切り替えて、神聖帝国艦隊を追う。


第3守護艦隊は星系要塞の射程内に退きつつ、第3狩猟艦隊が到着して挟撃するのを待つ。

だが、その判断が甘かった。


星系要塞へ撤退していたら、未来は変わっただろう。

どこかしら、メクトは銀河最強の自負があったのだろう。

星系要塞を背に戦えば下部艦隊の第3守護艦隊であっても、たかが猫人風情に遅れは取らない。

そんな思い上がりが感じられた。


第3守護艦隊は主力艦隊ではない。神聖帝国主力二艦隊を同時に相手できるほど強くはない。

自分達が各個撃破される弱者にされたことに気づかない。


方向転換した神聖帝国の第1艦隊、第4艦隊が一気に詰め寄って第3守護艦隊に襲いかかった。

完璧な練度を誇る神聖帝国最強艦隊だ。


要塞からの砲撃をいなしつつ、第3守護艦隊を高火力で押し込んでいく。

そもそも主力艦隊と地方守備艦隊との装備の差は歴然。

面白いほど呆気なく、第3守護艦隊が次々と爆沈していった。


第3狩猟艦隊が急行するが、先ほど放たれた魚雷が物を言った。

何もない宙域のはずが、第3狩猟艦隊が最速で星系要塞に向かう行程上に、時間までぴったり考慮されて魚雷が到達した。


急停止せざるを得ず、第3狩猟艦隊の救援が致命的に遅れた。


「作戦の第一弾ですよぉ。

 まずはちゃちゃっと第3守護艦隊を倒しますよぉ!

 本命の第1狩猟艦隊を倒すための、前夜祭ですぅ!」

挿絵(By みてみん)

★★ライト層読者さんへの簡単説明コーナー★★

挿絵(By みてみん)

はーい!作者子ちゃんによる、簡単に説明するコーナー!


硬派な人はスルーしてくださいね。ちょっとやってて恥ずかしいので…。

第八十八話「前夜祭」、今回はイレーネさんの緻密な戦術が炸裂しました!

アーヴィンさんの「全て提督の狙い通りです」っていうツッコミ、すごく良いコンビ感が出てますね!


イレーネさんが「ズル賢いですねぇ」って敵を評しながら、自分はもっとズル賢いことをやってるのが面白いです!

宙間魚雷を「敵がいない宙域」に放つって、最初は意味不明でしたが、これが第3狩猟艦隊の救援ルートを塞ぐための時限爆弾みたいなものだったんですね!


タイミングまで完璧に計算して、急停止せざるを得なくさせるって、本当に緻密です!

そして、メクト側が「銀河最強の自負」から星系要塞に撤退せず、各個撃破される弱者になってることに気づかなかったのが、敗因なんですね。


シズクさんの武名を逆手に取って、敵に油断と過信をさせるイレーネさんの策、本当に恐ろしいです!

「前夜祭」っていうタイトル通り、これはまだ序章なんですよね!


本命は第1狩猟艦隊って、ここからどう攻略するのか、めちゃくちゃ楽しみです!

次回も、絶対見逃せませんよ~!

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