【14】3姉妹?
ぬこ先輩の後ろを走りイオンへと向かう。
目的地へと続く道はいくつもあるのだが、メインストリートをまっすぐに最もわかりやすい道で向かうようだ。
「そういえば、お兄ちゃん、今日お仕事は良かったの?」
「うん、社長が気を遣ってくれて遊びに行けってさ」
「そ、天さんは大学に行きながらお仕事されてるんですか?」
「そうだよ。車の整備の仕事をね」
「頑張り屋さん......いいこいいこ......」
「あはは...ありがとう」
誰かに褒められるのはいいが妹、のクラスメートに頭を撫でられながらとなると少し気恥ずかしい。
涙ちゃんはおっとりマイペースで独特な雰囲気を纏っているが、なにより心優しい子というのが伝わってくる。妹の友達に優しい子が2人もいて改めて嬉しく思っているとーー
「あ、あの、私も天さんの頭撫でていいですか?」
「え?う、うん......」
「あ、ありがとうございます!」
ぱぁっと顔を明るくして喜ぶ千誠ちゃん。俺の頭なんか撫でても何も出ないけどな。何も出ないよな......
「モテモテだねぇ、お兄ちゃん」
「ははは」
反応に困る。
人に好かれるのは素直に嬉しいが何とも言えない顔で苦笑い。
妹の友達、なにより女子中学生になりたての幼気な12歳に頭を撫でられて悦に浸っていたら誰か何と言おうと問答無用で事案だろう。
「そういえばみんなで何を買いに行くつもりなんだ?」
「はむ......ブラ...むごご」
「えっと、新学期用に英語ノートだよ」
「あぁ、そういえば英語用の13段ノートとか使ってたなぁ」
なんだか後ろで涙ちゃんと千誠ちゃんが揉めてるが小声で聞き取れない。
「それより、紫音さんとぬこさんは部の先輩って言ってたけど、お兄ちゃん何か部活に入ったの?」
「うん、『ドライ部』っていう車好きが集まるサークルみたい。柚たちは何か部活やらないのか?」
「みんなで相談したけど、これといってやりたいことが見当たらなくて。あ、でも千誠ちゃんはピアノの腕がすごくて、それでも毎日練習してるんだよ!」
「へぇ、千誠ちゃんはピアノが得意なんだね。今度機会があったら聞きたいな」
「ふぇぇ!あ、えっと、その、が、頑張ります......」
「千誠ちゃんも小さい頃からピアノのお稽古頑張ってる頑張り屋さん......」
ルームミラーで後ろを見ると頬を染めて恥ずかしがってる千誠ちゃん。
さっきまで千誠ちゃんが涙ちゃんに何かを言い聞かせてるように見えたのだが、横に座る涙ちゃんからサラサラの髪を撫でられ良い子良い子されている。
「そういえば、柚って学校ではどんな感じなのかな?」
「えーっとですね......」
「ふ、普通だよ普通!お家と変わらないから」
「ふむ......人気者」
「ふふっ、柚はほんとに裏表がないから確かにお家と一緒かもね」
「もぉ!千誠ちゃんまで」
頬を赤く染めているのは気恥ずかしいからだろう。兄貴の目の届かないところで自分がどう振る舞っているか、思春期特有の親離れに近いものかもしれない。
「柚、よかったね」
「ーーーうん!」
照れてはいるものの満面の笑みで答えてくれる。小中高一貫の学校に進学した柚は自分だけが他所から入ってきた新参者。2人で決めた引越しとはいえ、子供にとって学校というコミュニティはとても大きいものだ。
不安と緊張を跳ね除け、自分からみんなに話しかけに言ったのだろう。
偉いぞ、柚。
「天にぃ達もうお昼ご飯食べたの?」
「ううん、まだ食べてないよ。もしかして涙ちゃん達も?」
「お腹空いた......」
「先にお昼ご飯提案してみないとだね」
「涙は食いしん坊なんだから」
柚の大きな成長に少し感動したのも束の間、『天にぃ』と呼ばれたことに驚いた。だが、悪くない響きだ。息のあった仲のいい3人を見ていると妹が増えた気がする。ってそれは流石に親御さんに申し訳ないか。
とりあえず到着したイオンの駐車場内で屋上に向かうぬこ先輩。
程なくしてエスカレーターの入り口に近い駐車場に並べて停める。
「ありがとうございます」とそれぞれお礼を言われ車を降りいちごたちと合流する。
早速、先にお昼ご飯を食べる提案をする涙ちゃんと柚だが、スマホを見るとすでに2時を回っていた。
そりゃあお腹も空くだろう。
どうやらいちごたちも同じだったようで、エスカレーターを降りながら2階のフードコートへと向かう。
平日の昼間だと人も少ないだろうし何かしら各々食べたい物があるだろう。
みんなが笑って心から楽しんでるのがわかり一安心だが、ここのお昼代も経費で落ちるらしい。俺やいちごだけでなく柚たち中学生ズもだ。
紫音さんたちの事だから後で払えとは言われないだろうが、経費とは部費の事なのだろうか?
大学生にとってこういうのは普通なのか?




