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ドライ部  作者: 如月 六
12/28

【12】ジョン・クーパー・ワークス


大学に到着し、紫音さんの勧めで部室のガレージにS15を駐車する。工学部棟学生課で学生証をうけとるも、明日からデモ講義なら学生証受け取るのも明日で良かったんじゃないか?


「特に何もすることないしお昼ごはん食べに行く?」


「あー、そうだなー。いや、今日は柚が早く帰ってくる日だからたまには家事でもやろうかな」


「さっきも社長さんが言ってたけどもしかして天くんの弟か妹?」


「中学生になる妹です」


「じゃあ天くんも実家暮らしなんだね」


「実家とはまた違うんですけど、妹と2人暮らししてます。引越しの荷解きがまだ全部終わってないのでそれも含めて早くやらないといけないんですよ」


「なるほどね。あ、じゃあ今日私が手伝ってあげよっか?」


「あっ、それいいね!私もヒマだし手伝うよー」


「そのあと柚ちゃん連れてご飯も」


マジか......

結局、3人で盛り上がって我が家へ行く流れに。

いや、手伝ってもらうんだ文句は言うまい。

自宅には駐車場を2台分借りているがマイカーを1台置いてるのでS15を置いて、いちごたっての希望からぬこ先輩のF57ミニークーパーに乗り込む。エレクトリックブルーメタリックのボディーにボンネットにはホワイトのラインが2本。2by2のコンバーチブルで助手席にはいちごが乗り、後部席に俺と紫音さんが乗る。これまたいちごの希望でユニオンジャックの幟を開くが普段は恥ずかしくて開けないらしい。


「オープンにして走るのあんまりしないんですね」


「昔ね、って言っても去年の話なんだけど、このコに乗り始めてコツを掴んできた頃にオープンにして走ったんだ。けど、信号待ちの時に歩行者から似合わないって笑われちゃってね」


「なんですか、それ!僻みですよ僻み。そもそもクルマの良さをわからない奴から何を言われようと気にする必要なしです」


「それで、なんだかこのコにも申し訳なくなっちゃって。けど、私が好きなクルマは絶対このコだし、ずっと乗ってればきっと似合うオンナになれるんじゃないかって!まぁ、まだ1人でオープン走行できる自信はないけど」


はははっと苦笑いのぬこ先輩。そんなことがあったのか。たしかにオープン走行しているだけで注目を集めてしまう。だからといってドライバーに対し似合わないだとか笑うのは違うんじゃないか?

前に座るいちごの正面グローブボックスの上に『JCW』の文字がふと目に入る。


「このクルマってもしかしてジョンクーパーワークスですか?」


「え!よくわかったね天くん」


「JCWのエンブレムがついてるので。あんまり詳しくはないですけどグレードとして聞いたことありますよ」


「JCWを見てもジョンクーパーワークスってわかってくれる人ほとんどいないんだよ!矢野くんに探してもらって買ったんだけど、手に入れるの大変だったんだぁ」


あぁ、本当にこの人は精一杯伝えようとしてくれる。自分はこのクルマが大好きなんだと。どんなところが好きでこんなところは玉に瑕で。ひたすら聞くだけでたまに相槌を打つくらいしかできない3人だが、誰1人として不快な気持ちにはなっていないだろう。なぜならこんなにも満面な笑顔でこのクルマの良さを一生懸命話してくれる人なのだ、ぬこ先輩は。

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