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昔、昔のお話
昔、昔のお話です。
どれくらい昔のお話かというと、空に太陽が昇らなければ、夜空に月もなかった時代です。
世界はいつも真っ暗で、明かりと言えば、数えきれないほどあるけれど、人々の生活を照らすには不十分な、小さな小さな光を放つ星々しかありませんでした。
暗闇には星の数ほど危険が巣食い、いつ襲われるのかと、人々は戦々恐々と日々を過ごしました。
と言っても、その頃はまだ暦もありませんから、恐怖は永遠にも感じられたことでしょう。
こんな世界でも人々がなんとか生き抜いてこれたのは、地上にたくさんの神様がいたからに他なりません。
水の神様。風の神様。木の神様。土の神様。火の神様。石粒や宙を舞う綿毛にも神様は宿っていました。
人々は自分たちが生きていけるのは神様のおかげだと分かっていたので、いつも感謝を忘れず、神様たちも感謝してくれる人々のために力を尽くしてくれました。
人々が神様の中でもとりわけ信頼していたのが森を統べる主でした。
強靭な脚は星明かりだけで森を駆け抜け、鋭い牙と爪は闇に潜むものたちを切り裂き、人々を守る盾となります。
大きな体と、美しい毛並み。
強い力を持つ彼を人々は尊敬と畏怖を込めてこう呼びました。
ーー大神、と。




