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治癒施設は想像以上に人が集まっていた。
予約のみ受付で、王宮の人たちが対応管理してくれているのだが、それでも多い。
予約希望者には、どのような症状か簡単に書いてもらっているのだが、これも様々だ。
目が見えない、歩けない、といった症状は予約優先にしているそう。髪の毛が無くなりそう、胸が大きくなれない、といった内容もあったそうだが、却下しているらしい。
初日ということもあり、重症患者が大勢だった。
『治癒したまえ、ヒール』
『治癒したまえ、ヒール』
『治癒したまえ、ヒール』
『治癒したまえ、ヒール』
『治癒したまえ、ヒール』
かたっぱしから治癒魔法をかけていく。
「すごいです!! 全身の痺れがなくなって歩けます!!」
「目が……目が見える!!」
「長年の倦怠感が嘘のよう。ありがとうございますですじゃ」
笑顔になって帰っていく。
これを見ているだけで私は幸せだった。
苦しさから解放された時の喜びを私自身経験していたからかもしれない。
今日の患者さんの対応が、思っていたよりも早く終わった。
横でずっと見守ってくれていたジュライト様が、最後の患者が出ていったあと紅茶を用意してくれる。
普段と違う姿のため慣れるまで時間はかかるが、ジュライト様であることに変わりはない。
「ありがとうございます」
「いえいえ、お疲れ様でした。どこか疲れていますか?」
いつでも私の心配をしてくれる。
嬉しいしありがたい。
ジュライト様を安心させようと、ニコリと笑った。
「魔法を発動すること自体が楽しいですし、こんなにみなさん喜んでくれるので私も嬉しいです」
「レイ……こほん、レレレ様もお身体に無理させすぎないように……」
「ジュジュ様は本当に優しいですね。ありがとうございます」
男装に変装した私は、レレレという名前に変えている。
ジュライト様もジュジュと仮名をつけた。変装しているジュライト様は黒髪に黒い瞳。どことなく恐い雰囲気もあるが、優しさは変わらない。
私はというと、見た目は二十代でくらいの男性で、あまり特徴がない。
カッコ良い顔も憧れるが、面倒ごとになるのは厄介だしあえて平凡な容姿にしてもらった。
魔法の効果が切れるまでは、まだ時間がある。
だが、治癒施設を行き来するためだけに用意された専用の馬車に乗り込み王宮を目指す。
『治癒したまえ、ヒール』
『治癒したまえ、ヒール』
馬車内で私とジュライト様に治癒魔法を発動し、変装魔法を解いた。
「可愛らしいレイナの顔が見れてホッとします」
「な……いきなりすぎですよ」
「最も、レレレ様の姿でも大好きですから、抱きしめますよ?」
いたずらに微笑んでいるジュライト様。
まだレイナの姿でも抱きしめられたことはない。
「からかわないでくださいね……?」
冗談はやめてもらいたいものだ。
お互いの勘違いが解けて婚約状態になってからというもの、ジュライト様は突発的にとんでもないことを言ってくることがある。
その度に私は顔を真っ赤にしてしまっていることだろう……。
「……ひゃっ!」
「お疲れ様、レイナ」
ジュライト様はニコリと微笑み、私の頭を撫でてきた。
私の顔はさらに赤くなり、頭の上から湯気が出そうなほどだ。
「レイナは素晴らしいですよ」
「光属性の治癒魔法のことですか?」
「いえいえ。もちろん治癒魔法は素晴らしいですが、それはあくまで魔法。レイナ自身が素晴らしいのは別にありますよ」
馬車内で二人っきりの中、ジュライト様の群青色の瞳がグイグイと私の顔に近づく。
近すぎてちょっと動けば唇が触れてしまいそうなほどだ。
「人が喜ぶ姿を見て幸せになれる気持ちを持っている。簡単にできることではありませんからね」
「あわわわ……」
「レイナは人の命を大切にしようとしています。昔からずっと……」
あまりにも顔が近く、この時ジュライト様がなんと言っていたのかしっかりと聞き取れる状況ではなかった。
おはようございます。
本日も更新は多めかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。




