表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

121/121

今よりずっと攻撃的だった私

 そう言えば、あの森にはあちこちに、古い争いの跡があった。

 あれは、王政派と反乱貴族の戦いが大地に刻みつけた傷跡だったのね。


「当時の私は、今よりずっと攻撃的で、気も短かったですから、毎日、朝から晩まで怒っていました。『何故、あんな俗物どものせいで、私の暮らしが脅かされなければならないのだろう』と。……そして、怒りが頂点に達したある日、私は森の中を進軍していた王政派の一団に、攻撃を仕掛けました」 


「ええっ!? 軍隊に攻撃を仕掛けたの!? いくらなんでも無茶じゃない!?」


「まったくもってその通りですが、怒りのあまり、理性が消し飛んでいた私には、まともな判断力が残っていなかったのです。正直、ほとんどヤケクソでしたから、住み慣れた土地で、自然と共に暮らせないのなら、このまま悪辣な人間どもを殺せるだけ殺し、玉砕して死ぬのも悪くないと思っていました」


「き、気持ちはわかるけど、ヤケクソにもほどがあるでしょ……あなた、昔はけっこう滅茶苦茶だったのね。ちょっと親近感が湧くわ」


「しかし、玉砕どころか、かすり傷ひとつつけることすらできずに、私の体は魔法で拘束されました。王政派の強力な魔法使いたちの前では、森の民の優れた身体能力と戦闘能力も、まったくの無力だったのです。私は『魔法使いとはこれほど恐ろしい存在だったのか』と痛感し、生まれて初めて震えあがりましたよ。もう、煮るのも焼くのも、相手の自由ですからね」


「そ、それで、どうなったの? 今ここに、こうしてあなたがいる以上、命を奪われはしなかったのだろうけど……」


「ええ、その通りです。ここでやっと、ローゼン家と話がつながるのですよ。なんと、私が襲撃した一団のリーダーは、ウィリアム・ローゼン公爵閣下だったのです。ふふ、私は無知かつ命知らずにも、この国で最強の魔法使いに戦いを挑んだというわけですね」


「お父様が……」


「今と違い、スマートな体型だったローゼン公爵閣下は、思慮深い瞳を私に向け、こう尋ねました。『お嬢さん、どうして我々を襲ったのかな。こんなことをしてはいけないよ』と。その言葉で、私はキレました。凄まじい怒りで全身の血が逆流し、恐怖が吹っ飛んだのを今でも覚えていますよ。その後、閣下に叫んだ言葉も、一言一句、完全に覚えています」


 ヒルデガードは、どこか自嘲するように微笑むと、一段階声のトーンを上げ、小さく叫んだ。

以後、不定期更新となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 続きが早く読みたいです!!!
[良い点] 121/121 ・イッキ読み! クレーマーの私が読んでしまうとは。ヒロインsの魅力がグッと来るんのなんのその。あとストーリー構成も楽しい感覚を誘発しました [気になる点] ミリアムさまの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ