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45話 過保護


 少し宿舎で休んだあと、俺たちはまだ暗いうちから初級ダンジョン『嘆きの壁』がある山麓の町グレルリンへと出発することにした。今の状態だと普通に歩いても以前より時間がかかるのは間違いないからな。


「背負いますってばー」

「いいって……」


 コレットがしつこく食い下がってくる気持ちはわかるが、俺の足の具合は大分よくなっていた。ポーションだけでなく、洞窟の水場で【釣り】スキルによって手に入れたハーブを煎じて飲んだのが効いたのかもしれない。赤ハーブは怪我や疲労回復に適していて、青ハーブは眠気覚ましや精神的な疲れを癒すのに向いてるそうだ。一応どっちも服用してるのにそれでもああやって寝てしまうんだから相当に疲れてたってことだな……。


 ちなみに赤、青ハーブともにこれから向かう町の道具屋で普通に売られているそうだが、どっちも例の洞窟でたまにしか採取できないらしくて、ポーションの材料にもなるため三十リパスで売れるものらしい。両方ともそこそこの確率で出てたから稼ごうと思えば稼げそうだが、あの水場にはもう二度と行きたくないっていうのが正直なところだ。


「今度あの人たちと遭遇したら、全力で逃げましょう!」

「あぁ、それが一番だな」


 わざわざ喧嘩して危ない橋を渡る必要なかったんだ。あいつらの挑発に対して我慢できずに口答えした俺が愚かだった。もう二度とコレットのあんな姿は見たくないから、もし今度遭遇したらどんなに笑われても逃げるつもりだ。悔しさは当然あるが、力がないうちはそうするしかない。


「コレットは能天気に笑ってるのが一番似合うし……」

「カレルさんの意地悪……。でも、鳥頭なのでそれが一番かもです!」

「自分で認めるなって」

「うふふ……」


 そんなこんなで、俺たちはいつしか時間が経つのも忘れて他愛のない会話をしながら歩いていた。


「――あ……」

「ん、どうした? コレット」


 コレットが急に声を出して振り返ったので何かいるのかと緊張したが、小動物のリーフラビットが脇の茂みから颯爽と出てきて坂道を横断しただけだった。


「誰かいると思ったんですけど、気のせいだったみたいです……」

「そっか……」


 あれからよく考えたんだが、こんな人気のないところに山賊なんてそもそもいるわけがないんだよな。いたらリーダーが忠告してくれるはずだし、実際あのときもマブカだったし……いくらなんでも心配しすぎだったかもしれない。俺はコレットとほっとした顔を見合わせてうなずくと、また前へと進み始めた。




 まだ暗いうちから山麓の町グレルリンに到着した俺たちは、そのまま休憩することなく『嘆きの壁』へと向かった。昨日は町で少しゆっくりしてからダンジョンに潜って酷い目に遭ったせいか、時間帯は違うがやり方を変えたかったんだ。その途中でコレットとモンスターを狩る方法について話し合った結果、お互いの役割も変更することになって俺が槍を使い、代わりにコレットが弓を使って獲物を釣る役目になった。


 どっちが危険なのかは明白で、彼女は迫りくるモンスターたちを前にするというリスクを背負うことになるわけだが、どうしても俺を守りたいということで釣り役を任せることになったんだ。過保護だとは思うが、俺も散々迷惑をかけてる立場だし彼女の言うことも聞くことにした。


「カレルさん、そういうわけですから絶対に無理だけはしないでくださいね!」

「コレットもな、はりきりすぎてモンスターを集めすぎるなよ」

「もちろんです! 途中で転んじゃうかもしれませんがっ……」

「おいおい……」

「うふふ……でも大丈夫です! あのときより怖いことなんて、この先多分ないでしょうからなんとかなりますっ!」

「……」


 それを言われるとなあ、俺も黙るしかなくなるじゃないか……。


「さー、参りましょう。必ずやカレルさんを守ってみせます!」

「なんか、今日のコレットは熱いな……」

「はい、燃えてますよ? 真っ赤に……」

「焼き鳥か……」

「……はっ……食べたくなってきましたぁ……」

「……我慢しろ。てか多分まだ店も開いてないし」

「で、ですよね……ああ、早く食べたいです……」

「共食い共食い」

「い、意地悪……」

「さっきのお返しだ」

「……ええっ? 私何かしました……?」

「さあな? とっとと行くぞ」

「あー! 鳥頭の私にもわかるように説明してくださいよぉー!」


 俺も、あのときより辛いことなんてもうないと信じたいな……。

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