ちょっとした危機感①
「なあなあ、今月のカード支払い何円?」
「ん?気にしたことなかったけど。」
いつものようにくつろいでいたら、ふと桜がそう呟く。月末になるとカードの引き落としがあるから、銀行に入れとかないといけない。
我が家の最近の主な支払い方法はカードだ。どこに行ってもカード。食費とその他もろもろの生活用品はカードで支払っている。大学の購買はカードが使えないから現金だが、その他はカードで払うことで、家計簿を自動でつけてくれる。
「気にしたことないって、今月は小豆島行ってたり他にも遊びに行ってんねんからヤバいことなってそう。」
「せやなー。」
俺は桜の言葉にそう返事しながら、スマホの画面を見る。カード支払いの利点はこうしてスマホでいつでも確認できることだ。
ログインして見てみると、これまで見たことない金額が。
「えーっと……」
「どしたん?」
桜も気になって画面を覗いてくる。そして言葉を失った。1番上の位の数字が『9』なのだ。
しばらく目を見開いて見てみる。一向に数字は変わらない。スマホを振ってみても、叩いても、目を擦っても何も変わらない。
「なあ、嘘やんな。」
「いや、どうやらマジらしい。」
「嘘って言ってーや。」
「俺も言いたいけどさ。これが現実っぽい。」
スーっと空気が漏れ出る音が鳴る。俺からも桜からも。そして冷や汗がタラタラと流れ始めた。
「今月は?」
「45000。桜は?」
「私もほぼ変わらんと思う。」
2人合わせても、今月の収入はこの金額に届かない。これまで貯めてきた分があるから払えるけど、それを崩すのは少しだけ嫌なところがある。
「ちなみにさ、小豆島の買い物は来月支払いやん。なんぼ?」
「えーっと、現時点で75000ですねー。」
「あははー。」
乾いた笑いが虚しく響く。さらに冷や汗が流れ始めて、スマホを持つ手も手汗でびっちゃびちゃだ。
心臓の音がよく聞こえる。これはヤバいと体が訴えているのだろう。
「「……」」
俺たちは見つめ合って頷いた。これはやるしかないと。
「来月はパスタとお茶漬け、そんでチャンプルー中心の生活ね。」
「肉っ気は鶏胸肉と鶏レバーでええか?」
「魚は……市場で買える安いやつにしよ。」
「卵は絶対金曜のグランデールで。」
「薬局の15%オフクーポンはしっかり使うこと。」
「「そんで……」」
買うものを安くしたとて、量が変わらなかったらお金はかかってしまう。だから、この決断は絶対にしないといけない。
「腹……何分目までにする?」
「6にしよ。それ以下は耐えられへん。」
「やな。」
危機感に溢れた俺たちの節約生活が始まった。