ちょっとした危機感②
そして始まった節約生活。朝は値引きシールが貼られていた5枚切りの食パンと千切りキャベツを食べてバイトに向かう。今日は1日働くから、片手に弁当をぶら下げてだ。
「おはようございます。」
「おはよう!」
「おはよーござーまーす!」
バイトの先輩と店長さんがそう挨拶する。先輩は今月は死ぬほど働いているらしい。休みの日はたしか4日とか。それ以外は基本的に毎日来ていて、朝から晩までいる。
「なんか疲れてるなぁ。どうした?」
「そう見えます?実は……」
更衣室でそう話しかけられた。俺としてはそんな空気は微塵も見せないようにしていたのだが、こういう所はよく気づく先輩なので、諦めて話すことにする。
カードの支払いを見て危機感を感じて、食べる量を減らすことを話したら、「あー、そういう事ね」と頷いた。
「俺にもあったなぁ、そんな時期。」
「そうなんですか?」
「うん。てか、学生全員が1回は経験してると思うよ。お金を稼ぐ方法かぁ。」
先輩は少し悩む仕草をして、思いついたように表を見に行く。
「9月の俺のところの代水、由良くんに任せてもいい?」
先輩は今月は死ぬほど働いている分、9月は休みを多めにとって、実家に帰ったり旅行したりする気だ。そのことは前々から聞いていたので、知っていたが、それの代水を俺にか。
先輩が持っているコースは基本的に上の方のコースが多い。1番下のコースはなくて、下でもクロールや背泳ぎを教えるコースだ。それなら俺でも教えれるかもしれない。
「どこ休むんですか?」
「えーっと、こことここと……」
そう10個ほど指さす。ほぼ全部が俺の予定が空いているところで、入ろうと思えば入れるところだった。
「じゃあ、入ります。」
「よろしく。」
このことは後から社員さんに伝えるとして、もうすぐバイトの時間だ。まあ今日はずっと子供たちの面倒を見るだけ。夏休みも終わりやから宿題が終わっていない子はほぼいないだろうが、いたらやらせて、他の子たちは自分の勉強をさせる。そして休憩で遊んだり、プールに入ったりするだけ。簡単なお仕事だ。
「今日って誰が来るんでしたっけ?」
「まぁ、メンバー的に難易度Aぐらいかな?」
「それってそこそこ高くないですか?」
「いや、S入ってないからまだマシよ。」
そう軽く笑う先輩は、プールの奥のスペースに消えていく。俺も水筒とスマホを持ってそこに向かった。
来月のバイト代は少しだけ増える。これだけで少しだけ気が楽になった気がした。




