ただまっすぐに①
「お久〜!」
「久しぶりやな。長旅お疲れさん。」
「黒なった?2人とも。」
「そう?あんまそんな実感はないけど。」
三ノ宮駅の西口近くで集合した俺たち。集合場所には奏と楓だけいて、他3人はまだという感じだ。そもそも10時という集合時間は、福井組である俺と桜に合わせたものだから、実際、時間はまだまだある。
最近の話とかテストのこととか話していたら、突然目が覆われた。
「だーれだ!」
どれだけ聞いてきたか分からない声。普段は明るいけどその中のトーンが若干違って、それでその日のテンションが分かる、そんな分かりやすい声は1つしかない。
「きい。心臓に悪いわ。」
「ぶっぶー!正解は可愛い可愛い幼馴染ちゃんでした〜!」
「よかった正解か」と心の中で呟きながら、こめかみをぐりぐりする。感覚としてはバ先でちょっとやんちゃな子供を相手しているのと同じ。大学1回生にもなって、そんな扱いをするとは…まあ、テンションは深夜テンションかと思うほどにいいから、そこはよしとしよう。
「きい、ガキか?」
「違います〜!ピチピチの1回生です〜!」
「音羽ちゃん、精神年齢がクソガキなだけやで。」
「カレン?今なんつった?」
「いーや、なんも言ってへんで〜」
歩道橋の上から音羽とカレンもやってきて全員集合だ。正直、きいが遅れてこなかったことには驚きだ。
フェリー乗り場のところまでゆっくりと歩きながら、適度に買い出しをしていく。フェリーの中で食べる用の昼ご飯と軽くつまめるお菓子。そして今日の水分も確保して、フェリー乗り場に到着した。
「向こう着いたらレンタカーやんな?」
「やな。運転は俺と楓に任せとき。」
『ゲッ!』
待合室でそんな会話になったので、さすがに命の危険を感じる。奏はまだもしかしたら生きて帰れるとは思うが、楓かぁ。さすがに命の危険MAXだ。
「その言い方は酷くない?まあ、奏の運転は怖いけど。」
「楓、多分怖がってんのはお前の運転やで。」
「私の?そんなん任せといてや。奏よりは走ってんねんから。」
『えっ!』
ここで乗せてもらうメンバーで緊急集合。向こうでの車に乗る作業が早く終わるように、ここでどちらの車に乗るかを決める感じだ。
『グッパでわかれ!』
出した手は男子組がグー。女子組がパー。どっちがどっちの車なんて、見ただけでわかるだろう。俺たちは勝ち組だ。
「「っしゃあぁ!」」
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!』
ガッツポーズを決める男子組と項垂れる女子組。ここで勝負は決まっ…
「そんじゃQ。助手席じゃんけんな。」
カレンから告げられた一言にごくりと唾を飲み込む。助手席は死亡率が跳ね上がるらしい。つまり、「事故ったとき死ぬかどうか」がここで決まるという感じだ。
「「最初はグー!じゃんけん…」」