ぐらんぶるーに潜りたくて⑥
「セッティングが済んだらウエット着よっか。」
背負う機材のセッティングが済んだら、ウエットスーツから順に着ていく。今回は夏のダイビングなのでウエットだが、冬のダイビングになると中に空気を入れて使う、ドライスーツを使う。まあ、お値段はそこそこするが。
ウエットスーツは思ったよりも体にピチッとまとわりつく感じで、いつもの水着とは少し違う感じ。でも、不快感はない感じだ。
「OK?じゃあ次にウエイトをつけて、ブーツを履いて。」
言われたように着ていく。ウエイトは緩みのないようにつけて、ブーツはチャックを閉める。立ち上がってみると、ウエイトの重さを強く感じた。
「重っ」
「そうそう。それだけ重いから水の中で沈むねん。」
イントラの人も笑いながらそう言う。たった4kgなのにこんなに違うのかと思っていたら、次は水の中に入るように指示が出た。
水の中に入ってみると、今までただまとわりつくような感じだったウエットスーツが身体を締め付けてくる感じがする。その代わり、ウエイトの重さはあまり感じなくなった。
「うおぉぉぉ!」
先輩たちも思わずそんな声を出してしまうほどに、感覚が全く違う。
「それじゃフィン履いて、マスクつけてみて。」
フィンはいつものと違い、ベルトで固定するタイプのものだ。履いてベルトをギュッと締めると、動かしても全くズレる感じがしない。マスクは鼻まで覆っているので、少し圧迫感があるが別に問題ないくらいだ。
「マスクは髪の毛が入ってないか、バティー同士で確認してや。入ってたら、水ダバダバ入ってくるから。」
そう言われて雄之助と確認しあう。お互いに入っている髪の毛を取って、水が入らないようにした。
これで水の中に入る準備は終わったので、次は少しずつ技術の練習に入っていく。と言っても、機材を背負っていないから少しだけだが。
まずは水の中で呼吸する練習だ。顔を半分水の上に出した状態で、シュノーケルで呼吸する。まあ、これくらいは全員できた。
「それじゃ、マスククリアを少しだけやっていこっか。」
早くも、OWS最大の難関がやってきた。マスククリアというのは、マスクの中に水を入れて、それを出すという技術だ。これは水の中で急にマスクが取れたり、また、マスクが曇って見えなくなってきたときに使える。
そんな、ダイビングを楽しむ上で重要な技術だが、ここで躓く人も少なくない。
「まずは半没から。見といて。」
イントラの人がマスクに半分だけ水を入れて顔を上げる。もちろん目は開けたまんまだ。そして鼻から息を吐いて、マスクの水を押し出していった。
「これだけ。簡単やろ?」
それが簡単じゃないから躓く人もいるんだと心の中でツッコむ。さて、俺にもできるかな?