ぐらんぶるーに潜りたくて①
福井県立大学には体育実技Ⅲを取ると、夏にはスキューバダイビング、冬にはまた別の種目の授業を受けることができる。中でもスキューバダイビングではOWSの資格を取ることができ、機材さえ持っていればどこでも潜ることができるようになるのだ。
学生の中でもやはり、海洋系の学部である俺たちはこの授業を取る人も多く、先輩後輩関わらず、名簿のところも海洋系ばかり。先輩後輩の交流会かと思うほどだ。
「なっが…」
事前課題としてやってこいって言われたデジタル教材。その右下の文字を見て恐怖を感じた。分母がなぜか「100」と書いているのだ。しかも、この中にはテストが含まれているから、相当地獄が待っているに違いない。それをあと2日でやるなんて…やば。
「どしたん?」
この課題に関しては桜はやらないし、別に誰かの目がないとサボるとかそんな気はないので、自分の部屋にこもってやろうとしていたけど、さすがに声が大きすぎたのか、桜が心配して声をかけてきた。
「いや、ダイビングの課題の量がヤバすぎるってだけ。」
ドア越しにそう返したら、呆れたようなため息が聞こえてくる。
「あれ結構前から出てたやろ?溜め込んだ久志が悪いわ。」
「それは百百承知してる。普通にミスったわ。」
「せやな。今回は手助けせぇへんけどいい?」
本当に魅力的な提案をしてくる。正直終わる気がしないし、この後のテストも不安になってくるけど、そうとはいえ手伝ってもらうのは今回ばかりは危険だ。なぜなら、この中には命に関わることが書かれているし、実技になればそれができないと死ぬ可能性もある。
「ええよ。自分の命に関わることやし。」
「わかった。あんま遅くならんようにな。」
「おう。」
そう返事を返すけど、きっと俺は体力の限界までやるんだろう。そしてきっと遅くなって、明日「寝坊したー!」って起きるはずだ。
学べって話だ。でも、桜は呆れながらも笑ってそんな俺を支えてくれる。これは信頼なのか、依存なのか…ええやんこれ。哲学の期末レポートのテーマ「恋とは」にしよ。
話が逸れたが、なんやかんや世話焼きの桜は、寝坊した俺をちゃんと学校まで連れて行ってくれる。きっとそうだから、第4章くらいまでやろう。そしたら明日は2つだけだから楽になる。そうしよう。
「よし!」
頬をパンと叩いて、少し濃いめに淹れたコーヒーを飲んで、マウスを持つ。そして、イントロダクションから読み始めた。
※※※※※※※※※※※※※※
先週、お休みをいただいた理由はこの話です。