30:00②
テスト勉強に一旦の区切りがついた頃には、もう朝日が昇っていた。窓から差し込む光が眩しい。
「くっ、くはぁ〜、あー…」
椅子から立ち上がり、軽く伸びをする。アドレナリンでなんとかなっていたが、そのバフももうなくなってしまうほど身体も心もボロボロだ。
「マジで、なんでこんなスピードでやらなあかんねん。意味わからんやん。」
高校で生物をやってきている前提の授業。一から丁寧に教えますとか言っておいて、教え方はスライドぶっ飛ばしたり、図はわかりにくかったり、用語の説明をちゃんとしてくれなかったり。そんなだからもう諦めて、高校で生物を取っていたヤツに頼りまくりだ。
もうそろそろ朝と昼の準備を始めないと間に合わない。いつもなら金曜日は桜の担当だけど、昨日はあんな態度をとってしまったし。その罪滅ぼしといえばなんだが、今日は作ろうか。
とはいえ、何を作ろうか。冷蔵庫を開いてみても、桜が作った作り置きしか見えない。作り置き系は基本的に桜が作ってくれていて、めんどくさい時はそれを温めて1食にするって感じだ。でも、基本的に作っているため、寝坊した日の朝とか、どっちもバイトの日とかそんな日しか使わない。
そう冷蔵庫の中を漁っていると、分厚いハムと、とろけるチーズ。そして、1個だけ余っているトマト、ちょうど1食分になりそうなキュウリが見つかった。
(あれしかないか。)
吊ってあるホットサンドメーカーに目を向ける。2枚焼けるようの大きめサイズのそれは、桜のためには久しく作ってなかったホットサンドを作るものだ。
それだけというのは少しだけ足りない気がするけど、あのときもそうだったし、まあいいかと思う。
パンを薄く4枚切ってキュウリは斜め切り、トマトは輪切り、それをパンの上に載せて挟んだ。焼くのは後からだ。桜が起きてくるまでに次は昼飯の準備だ。
「となると、作るのは…」
ご飯系かと考えて、とりあえずチンする。そうなると、簡単に作れてなおかつ美味いものといえば…炒飯か。
と考えて、炒飯の具材の用意をする。まぁー簡単やけど。
「ん〜、久志?まだ起きてたん?」
気づいたら6時。今日の朝昼担当だった桜が起きる時間だ。
「うん。とりま勉強も終わったし、目覚ましがてら作ろっかなって。」
「あーそう。」
桜はまだ機嫌を直していないからか、その返事もなんだか素っ気ない。
「それと、昨日はごめん。ちょっと焦っててイラついてて、言葉キツなった。」
「うん。知ってる。やから、今度の火曜日、分かってるやんな?」
「それはもう、いつも以上に。」
そう答えると、桜は笑う。その笑顔で、少しだけ心が軽くなった。
「まあ、そんな怒ってないけどな。」
「ホンマに?」