海を浴びて④
2日目は小浜での乗船実習…のはずだった。
「ウマズラ美味そうやな。」
「確かに。値段も安いし。」
風と雨が強くて船が出せなくなり、乗船実習の予定だった2時間は小浜観光に。
というわけでまずは市場にやってきた。
「ぐじもクーラー持ってきてたらな。買って帰っってた。」
「俺もそうやな。」
ぶらぶらと歩きながら、よっさんや航生とかと喋る。全員、頭の中では一食あたりの値段と、何を作るかでいっぱいだ。俺もその1人で、何か桜にお土産でもと考えて周りを見ている。
そして、ある魚の前でふと足を止めた。
「これ、ええやん。」
周りには誰もいない。遠くに女子の集団が見えるけど、気にしていないだろう。俺はスマホでその魚の写真を撮って、桜に送った。
「安いチヌあったけどいる?」
そう送ったらすぐに既読がついた。
『持って帰って来れんの?』
「発泡スチロール入れて氷入れてもらえるか相談してみるわ」
『いけたら言って』
「うい」
スマホをポケットに直して、おばちゃんに声をかけた。
「すみません。これって夜まで持たせることって出来ます?」
「ん〜、氷入れてあげようか?それなら何とかもつと思うけど。」
「それでお願いします。」
そこそこいいサイズのチヌが550円。2日3日はもつから、そう考えたら安い。
確保の報告を桜にしたら、大葉と大根を買ってくるって帰ってきた。うん。今日の晩は刺身だな。
「何買ったん?」
「チヌ。安かったから。」
「へぇ〜。先見つけといたらよかった。」
話しかけてきた洋樹は羨ましそうに発泡スチロールの箱を見つめる。あと、ここで買いたいものといえば…
ちかくには鯖寿司の工場兼直売所がある。小浜は鯖街道の起点で、鯖が有名な街だ。そんな街に来たんだからもちろん鯖寿司も食べたいところ。地元民の航生に聞いたら、ここは美味しいとのことだったので、買うことにした。
「ありがとうございまーす!」
お財布からなくなったお金、約1500円。随分と贅沢したなと思いつつも、まあこれくらい…なんて思ってしまうのが観光気分の悪いところ。普通に一食あたりの予算はオーバーしている。
「許せ…許してくれ…桜」
「買った上で後悔してやんの!」
一緒に回っている航生にそう笑われるが、それくらい食費は考えないといけないもの。明日からはお茶漬け生活だな。