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憂鬱な空と愉快な足取り②

 バス停から少し離れたところで、まだかまだかとバスを待つ。持ってきた久志の傘を左手に持ち、右手で自分の傘をさし、基本は遅れてやってくる福井のバスを待ち続ける。水溜まりの上を車が走って、水しぶきをあげている。空もどんよりと暗く、気分も重たくなりそうだが、それよりも今は明るいのに包まれている。


 重たいエンジンの音が聞こえて、そっちを向いてみる。やっと来たかと期待したけどトラックだった。


「ちぇっ」


せっかく来たと思ったのに。期待させて。


 するとバスが停まるときの音が聞こえてきた。嬉しくなって見てみると、福井駅行きのバスが。これに久志が乗っているはず。嬉しい気持ちを少しだけ抑えて、少しだけ背伸びする。バス停にバスが停まって久志が降りて来るのが見えた。


「久志!」


外に出る前に久志に傘をさしてあげる。その中に入って、受け取った久志は笑った。


「桜、ありがとな。」

「バス停までは大丈夫やったん?」

「同じ学科のヤツに入れてもらったから大丈夫やで。心配してくれてありがと。」

「そ。ならええんやけど。」


2人並んで歩き始めると、バスに追い越されていく。水しぶきがかからないように、今日は歩くのは少し内側だ。


「そっちは課題どんな感じよ?」

「どんなって。一緒に生活してるからわかるやろ?」

「取ってる教科結構違うもーん。」

「違うもんって。はぁ。残り2。」

「ざーんねん。今日は寝ーへんように監視せんとな。」

「まさか今日書かせる気か?」

「もちろん。どーせ置いとってもギリギリまで書かんやろ?」

「まあせやけど。それにしても無理やり…」

「なんか文句あるん?」

「別にー」


そう笑いあってまた歩く。スーパーまでそんなにないはずなのに時間をかけてゆっくりと。


 買い物を済ませたら今度は家までだ。


「ん。」

「ん?」

「ん!」


そう言うと、久志は私が持とうとしていた荷物を奪い去る。私が持とうとしていたのは重いほうの荷物。それを自分のほうにあった軽いほうの荷物と変えようとしたのだ。


「ありがとね。」

「べーつに。はよ帰ろーぜ。レポート書きたい。」

「はいはい。」


2人で傘をさし、また歩いていく。その足取りはとても軽かった。

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