そういえばの話
「そういや桜。」
「ん?」
「そのまんま心理学のほう進むって言ってたよな?」
「あーね。」
なんか俺について福井に来たけど、夏の時点では受験する気はなかった。スクールカウンセラーになるとかそんな話をしていたような気がするが、その夢はどうなったんだろう。
「こっちの大学にな、そういう関係の話が詳しい教授がおってな、どっちかいうとその人の話を聞きに来てる感じやねん。」
「あーね。」
「やから、久志と一緒にもおれるし、夢の方もまだ諦めてないから。」
桜は覚悟したような顔でそう言う。そう言っているということは、本当に諦めるつもりはないのだろう。そういう所が本当に桜らしい。
俺が目指すものと桜が目指すもの、それがいくら違えど、夢を目指す仲間がいることは、本当に心強い。
「ありがとな、桜。」
「ん?何が?」
「いや、知らんくてもええで。」
「えー、何何?気になるやん!」
俺はつい恥ずかしくなってしまって、逃げるように立ち上がる。からかうような笑みを浮かべながら桜がついてくるが、そのとき、RINEの音が鳴った。
『【急募】そうだ、福井に行こう!』
「「は?」」
奏が言い出したのはこのGWにこっちに来ようというもの。久しぶりに会えるのは嬉しいが、問題はそれではない。うちに泊まろうということだ。部屋は確かに少し広いにしても、7人も寝れるわけがない。ということはつまりはどこかに泊まりということになる。
「どこ行く気や?そこなんも決めてへんやんけ。」
とりあえずそうとだけ返事して、返ってくる答えを予想して遊べそうなところを探す。近場やったら東尋坊とかあわら温泉とか、そんな感じか。
『そこはお前らに任せる!』
『とにかく行くからよろ!』
予想通りの答えが返ってきたので、軽くプランを組む。まあそれも、どこに行くかだけやけど。
「東尋坊とかでええよな?」
「多分そこら辺がベストやと思う。駅のまわりも色々あるけど、どこもかしこも大阪にもあるもんばっかやから。」
「やな。」
泊まるのはあわら温泉のほうでいいだろう。集合は昼くらいにしたら向こうも始発で来るとかそんなことをせんでもいいようになる。
「じゃ、そんな感じやから。」
「やな。…課題か…」
「せやな。」
GWで片付けたらいいと考えていた課題も、今のうちにやらんとあかんくなった。俺たちは早速課題を始めた。