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ちょっとした危機感③

「ってことで来月はバイト代増えそうや。」

「よかったぁ。じゃあ来月もなんとかなる感じかな?」

「どうやろ?」


少しだけ考える。じっさい来月のシフトを増やしたとて、後期がすぐに始まるからまたシフトを減らさないといけない。


「ん〜、私もシフト増やそっかな?」

「でもさ、後期始まったらもうカツカツやろ?授業とバイトのバランス。」

「まあせやね。じゃあ掛け持ちするかぁ。」

「やるなら何するん?」


そう言うと桜は少し悩みながらスマホを眺める。軽く何回かスクロールして何かを見つけたように、その画面を見せてきた。


 そこに書いていたのはオンラインの家庭教師のバイト募集だった。


「カテキョか。やりたかったん?」

「うん。スーパーで働くんもええけど、最初に考えてたんはこっちやったから。」

「そうなんや。」


桜は微笑みながらスマホを見つめる。


「高校んときさ、きいとかに勉強教えとって、楽しかったんよ。それに勉強すんのは別に嫌いちゃうし、むしろ好きなまであるから。」


少し懐かしむような顔をしてそう言う桜。俺もたしかに奏やカレンと教え合ったり、きいに教えたりするのが楽しかったなと思いながら、高校時代の日々を思い出した。いくら教えてもなかなか理解してくれなくて、だからゆっくりと丁寧に一つ一つ噛み砕いて教えた日々。誰かに教えるとかそういうのが初めてだったから、右も左も分からなかった。だからこそ面白かった。


「カテキョね。しかもオンラインやから時間あるときに教えれるし。」

「そう。やからありやなって。」


オンライン家庭教師。響きはまあ便利そうだけど、俺には少しだけ向いていなさそうな気がする。やるならやはり対面の方が楽な気も。でも、俺はすぐに小浜に引っ越すからそのことを考えるとオンラインのほうが便利か。


「俺もやろっかな?」

「ほう。その心は?」

「人に教えるの好きやし。別に時間もあるからな。」

「でも後期始まったら忙しくなるやろ?」

「せやねんなぁ。」


桜の言う通り、後期が始まったら俺は桜よりはるかに忙しくなる。そうなるとやはり家庭教師なんかしている時間はない。


「だから、私がやるよ。いや、私にやらせて。たまには頼って。」

「こうやって頼らないといけないとはな。じゃあそうするよ。」


お互い前期で大学生活にはある程度慣れた。後期から少しだけ忙しくしても問題ないと思う。


「うちのお財布は任された!じゃあ登録するね。」

「よろしくな。富貴先生。」

「その言われ方は恥ずいなぁ。」


俺たちは笑い合う。新しい明日に向かって。

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