90)上陸開始
89話の冒頭でいきなりイグナシアが出ておりましたが、ヴァーミリアンの間違いです。失礼しました。修正済みです
サリナはその日の朝から、無人島の浜辺で佇んでいた。
「おーい」クロトが声をかけても、海から目を離す事はない。
「サリナ、とりあえず飯でも食っとけ。単純に遅れてるんだろ。そんな気を張ってもしたかがない」
「、、、しかし、、、」
「もしかしたら、残った3人が他のやつと揉めてるのかもしれないし、きっと後から来るさ」
サリナの肩を叩き、後ろを振り向かせる。
多分天幕には戻らないだろうと思ったので、浜辺に敷物を敷いて、遅めの食事の用意をしておいた。
「ここで気を揉んで、夜満足に動けないほうが困るからな。さ、食える時に食っとこうぜ」
「すまない、、、」
「心配だな。単に揉めているだけならいいのだが、、」シーラがサリナを気遣う様に飲み物を渡す。
一口飲んでほうっと息を吐く。
「まぁ、サリナの爺さんがゴネでもしてるんだろ、俺のばあちゃんのことで」
クロトが茶化して、パンにかぶりつく。
「まだちょっと時間がある。今のうちに一眠りしておこうぜ」
食事を終えたクロトの音頭で、思い思いの場所で横になるパーティー。
サリナは座って杯を両手で抱えたまま、ずっと海を見つめ続けていた。
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日も落ち、周囲を暗闇が包む。
「残念だが来ないものは仕方がない、むしろサリナ達はこのまま同行してもらって良いのか?」
ヴァーミリアンは黒く光る鎧と、それに合わせた漆黒のマントを纏い出航の準備を見守りながら聞いた。
「ああ。むしろ期待させてしまってすまない。せめて私たちは可能な限り助力しよう」
「クロト、そっちに人員の補充はいるか?」
ヴァーミリアンはクロトに視線を走らせる。
「いや、いらないな。それにまだ、ムーンウルフがこないって決まったわけじゃないだろ?」
「そうか、ならば、もう何も言うまい」
準備整いました! の声に合わせ、「出立する」と短く答えると、中型戦艦に向かって行った。
「クロトさん、こちらも準備できてますよ」ポロンポの声で、クロト達も乗船のために小船へと乗り込んだ。
ロック島までは目と鼻の先だが、クロト達は北側に上陸するため島の横を一旦通り過ぎる。
船から見た島は城以外に光はなく、全てが眠っている様に見えたが、目をこらすと何かがうごめいている影を確認できた。
上陸予定の港の近くで停泊すると、囮部隊が騒ぎ始めるのを待つ。
甲板ではサリナがもっと北のほうを眺めている。
「大丈夫か?」
クロトが声をかけるとサリナは両頬を叩き気合いを入れる
「今日一日、気を遣わせてしまったな。すまない。もう切り替える」
「、、、わかった。頼りにしている、、、って、戦ったところ見たことなかったな」
「君ほどではないが、それなりに期待してもらっていい」
そう言ってクロトを振り向いたサリナは不敵に笑った。
「始まった様ですよ」
ポロンポ商会でも耳のいいクルーが風に乗って聞こえてきた声に反応する。
しばらく様子を見ていると、クロト達の耳にも喧騒が聞こえてきた。
「予定だと、このまま1時間待機か、、、待つのって苦手なんだよなぁ」
クロトがこぼすと
「クロトさん苦手そうですよね」とアメリアが言い、全員がうんうんと頷いた。
ちなみに当初、クロトはアメリア、ジュリア、アーヴァントの後方支援組は船で待機してもらう案も提案したが、全員から却下された。
「普通に危ないと思うぞ」と言うクロトに、アメリアとジュリアから「一番安全な場所はクロトとシーラの近くだと思う」と返された。
まだ時間がある。ここはリラックスしてお茶でも飲もうと言うシーラ。
最近気付いたがシーラはパーティの中で一番お茶好きである。隙あらばお茶の時間をぶっこんで来る。
「お菓子ある!?」ジュリアがキラキラした目でシーラを見て、「もちろん」と言う言葉に跳ねて喜んでいた。
そんなパーティのやりとりをを見ていたサリナ達ムーンウルフは、少々あきれた顔をする。
「後少しで戦闘だというのに、随分と余裕だな、、」
それを聞いていたポロンポが笑いながら
「クロトさん達は大体あんな感じですわ。気をもむだけ損ですから、我々もお茶をいただきましょう」
と、ムーンウルフの面々を促した。
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「そろそろだな」
全員が表情を引き締めて戦闘態勢を整える。
「じゃあ、接岸させます」
ポロンポの指示で船はゆっくりとロック島へ舳先を向ける。
遠くではいまだに喧騒が聞こえているが、クロト達が降り立った港は静まり返っていた。
「このまま道なりに進めば、城の裏門にたどり着くんだったな」
ヴァーミリアンに受けた説明を追い出しながら、夜目の効くクロトとムーンウルフの3人が先行して城へと急ぐ。
しばらく走っていると、一番前にいたサリナが
「止まって、何かいる」と両手を広げ、進行を止める。
眼前にのそりと動いている丸いシルエット、腕が妙に長くゴツく見える。これがヘイタ達が見たと言う人造魔獣か。
「ヴ、ヴ」
反応はあまり良くない様だ。まだこちらに気づいていない。
試しにクロトが背中の甲羅? を思い切りぶん殴ってみるとぐしゃりとした感触とともに、そのまま崩れ落ちる。
倒れた人造魔獣の頭を持ち上げ、「誰か、こいつの首と腕、切り落としてみてくれ」と言った。
応じたのはサリナ。サリナの獲物はダガーの両手持ち。柄に返しが付いており、攻撃も防ぐことができる仕様だ。
サリナがダガーを一閃すると、人造魔獣の首には簡単に刃が通るが腕の方が途中で筋繊維に捕まり止まってしまった。力を入れて引き抜く。
「見た目通り腕は固そうだな。甲羅は腕ほどではないが、やっぱり首や胸あたりが狙い目か、、、城内で何匹か出てきたら、俺がひっくり返すから、ジュリアやアーヴァントはその辺を狙ってくれ」
「うん!」「ああ」
「サリナ達は個々に任せて大丈夫か?」
「今の感じなら大丈夫だと思う」
「よし、じゃあ先を急ぐぞ」
囮部隊の喧騒が功を奏したためか、クロト達が進む道には人造魔獣が散発的にうろついているだけで、大きな障害もなく裏門までたどり着くことができた。
「さて、ヴァーミリアンが言ってたのは、と、、、」
裏門を逸れて、壁伝いにしばらく進む。すると、草むらの中にポツンと小さなお堂があった。
「おっ、これかな?」
お堂を開くと一見何も入っていない。だが、天井を手で弄ると紐がある。
その紐をぐっと引くと、カタ。と板が動く様な音がした。続いてカタカタカタカタと歯車の回る音。
音が収まると、クロト達の背後でバタンと何かが落下する音がし、地下へと伸びる通路が現れた。
「わぁ、すごい!」ジュリアが無邪気に感心する。
「そんじゃ、こっからが本番だ。みんな気をつけろよ」
それぞれ小さい声でおー、と言いながら、暗闇の中へと消えてゆくのだった。
読み返すたびに誤植が出てくる…
妖怪か、妖怪の仕業なんか?




