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【完結】エドラックは通りかかった「だけ」なのに!?【350万PV感謝!】  作者: ひろしたよだか


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91)踊る魔剣

隠し通路は思ったよりも距離があり、出口は裏門からだいぶ離れた建物と塀の間だった。


建物は木材と漆喰を駆使したもので、大陸の城とは随分と趣が違う。

その建築様式に目を取られる前に、クロトは背後に手信号を送りながら囁く。


「喋るな。人の声がする」


一番最初に出口に寄ったクロトから、縦に並んだ全員に伝言される。


物音を立てぬ様に慎重に通路を出ると、建物の中から激昂する男の声が響いていた。


「まじか!! 失敗した!? 失敗したってなんだ! おい、なんだって聞いてるんだ!」


答えている方の声は小さく聞こえない。


「おい、チッカーノ! 一つもお前の思う通りに行ってねえじゃねえか! どうなってんだよ! あー、思えばあの虎女を逃しちまったのがケチのつき始めだ! あの時石にしてりゃあ、先生呼んで傀儡にするなりなんとでもなったのによ! そしたら今頃この国は俺たちのものだったのに!」


クロトの横で聞いていたアメリアが不快そうな顔をしたのが、暗闇の中でも分かった。


チッカーノと呼ばれた男の声も聞き取れないものの、雰囲気からなだめている様に感じる。


「、、、お前はそういうけどよう! 今港で馬鹿どもは騒いでるし、ここの馬鹿は言われたこともできねえ! あー! もういい!」


一拍置いて


「俺は寝る! 後はお前らでやれよ!」


という声が聞こえた後静かになった。


細心の注意を払い、その場を後にして進むと、場内は焚き火で明るく照らされていた。


蠢いている人造魔獣に見つからぬ様に気を配りながら、隅にあった小さな小屋に滑り込む。


室内を見れば修繕具などが転がっていた。納屋の様だ。


「今太陽の玉を出す」


アーヴァントが無限の皮袋から太陽の玉を取り出すと、室内は日中の様に明るくなった。

つーか、アーヴァントそれ持ってきてたの?


「ああ。これは失敗作で学術部に転がっていたから貰ってきた。しっかり充填しても10分ほどしか使えん」


とりあえず手頃なところにそれぞれ腰を下ろし、先ほど聞いた言葉を精査する。


「やっぱりここでも国家の乗っ取りが企まれていましたね。。。」アメリアの予測は現実となりつつある様だ。


「いずれにせよ、ぶっ飛ばして捕まえて聞き出すしかない。そうだろ?」クロトの答えは単純明快。アメリアも笑うしかない。


小休止を挟み、太陽の玉の灯りが消えたのを潮に、納屋の扉を開けた時だった。


「ああん? 誰だお前ら!?」


先ほど怒鳴っていた男の声が響く。タイミング悪っ! お前さっき「寝る」っていったじゃん。なんでこんなとこウロウロしてんだよ!


「敵か? 敵だな」有無を言わさず剣を抜く男。見た感じ獣人や魔族ではなさそう。人間の様だ。


手元に刃がないことに気づき、即座にクロトが叫ぶ。


「シーラ!」


阿吽の呼吸でシールドを展開させた瞬間、ガキン! とシールドに弾かれる金属音が響く。


「「いつの間に!?」」シーラが驚いた声を出すと同時に、男も同じ言葉を叫ぶ。


「気をつけろ、多分あれは”魔剣”だ! クロトの蒼月の手甲と同じ武術具だ!」


アーヴァントがジュリアを庇いながら、シーラの背後へと回り込む。


「へえ、このラジアータ様の魔剣を知っているのか?」


「無論だ。剣先が伸びる魔剣だろう?」


「はっ、ザンネーン。ハズレだ! 俺の魔剣は空を飛ぶ! 俺の意思で自在に動くのさ!」


「、、、だ、そうだ。皆、気をつけろ」アーヴァントのモノクルがキランと輝く。


「おっ、お前! 騙したのか!?」


暗くて良くわからんが、真っ赤になって地団駄を踏むラジアータ。


「くそっ! だが、3刀分裂魔剣、いつまで避けられるかな!?」


今3刀って言った? 知らなかったけど刃3つあるのか? こいつもしかしてアホなのかな?


と松明に照らされて光る金属がクロトの目の端に入る。手甲で防御しつつ、後方へと飛び退くと眼前で空を切る気配があった。


「あっぶね! あいつアホだけど、厄介だな」


「だれがアホだ!」


話している間にもシーラのシールドが削られる音がする。


「面倒だな!」


加速ブーストで距離を詰めようとするクロトだったが、再び剣が襲いかかり、思う様に距離を詰められない。


「あーもう、なんで当たんねえんだ! あ、あれか、明かりが邪魔なのか!」


言うなり周辺の松明を剣で叩き落とすラジアータ。


時間が経つにつれ、松明が燃え尽き徐々に周囲が闇に包まれてゆく。


残されたのは月明かりのみ。それも建物の陰で満足には届かない。


「クロト!」


同じく隙を伺いながらも、攻めきれずにいるサリナが近づいて声をかける。


「このままでは埒があかない! ここは私たちに任せてくれないか!?」


「任せろって、、人数減ったら余計にやばいだろ?」


「いや、この暗がりではクロトはともかく夜目の効かないシーラたちは不利だ。それなら先行して進んでもらって、城内の制圧に移ってもらったほうがいい。そもそも目的はこいつじゃない、ゴルゴンの首だろう」


「そりゃそうだが、、、大丈夫なのか?」


「任せろ! ムーンウルフをなめるな!」


「わかった! シーラ聞いたか!?」


「ああ! みんな私から離れずに駆けろ! ジュリアは私の腕を掴んで走るんだ!」


シーラたちが移動している間、クロトやサリナが牽制。シーラが安全圏に出たのを見て、


「じゃあ、頼んだ!」


とクロトも走り抜けようとする。


「逃がすかよぉ!」


ラジアータがクロトに刃を向けようとするが、サリナ達3人が一斉に攻めかかり、ラジアータの意識を向けさせる。


クロト達が完全に視界から消えたのを確認してから、サリナは改めて気合を入直す。


「スォード、ウィルック! 手っ取り早く片付けるよ!」


「「ああ!」」


相手は人族である、闇夜の戦いであれば夜目も効き連携力もある自分たちの方が優っている。


そう思いながらラジアータの攻め手を削っていこうと動くが、徐々に追い詰められているのはサリナ達の方だった。


ラジアータの死角から攻め入ろうとしても、当然の様に剣が襲いかかってくるのだ。


「はっはぁ! 俺を傷つけるなんて無理だ! この魔剣はお前達の匂いを覚えて追尾する! お前らを殺したら、今度は残りのやつらをどこまでも追いかけてやる!」


と、スォードが刃を避け損ない「ぐうっ!」とくぐもった声をあげて膝をつく。


「スォード!」


「大丈夫だ! 深くはない! それよりも自分のことを!」


スォードに意識を取られたサリナにも刃は容赦なく襲ってくる、サリナの腕や足には、細かい切り傷がもう無数に付いていた。


「このままだとまずいぞ。一旦引くべきか?」


そう言うウィルックはスォードを庇いながら、防戦一方の状態が続いている。


「くっ、この様な相手に我らムーンウルフが、、、」


サリナも肩で息をし始め、体力も厳しくなってきていた。


「はーっはぁ! これでそろそろ終わりだぁ!」






その時、空に浮かんでいた月が消えた。






正確には先ほどから少しずつ月はその姿を隠そうとしていたのだ。そしてたった今、月は完全に目を閉じた。


突然の漆黒に違和感を感じ、天を仰ぐラジアータ。


「なんだぁ?」


それがラジアータの最後の言葉となった。





「まったく、、、ムーンウルフの戦い方は”姿を見せずに群れで一気に狩る”だ。基本をおろそかにしおって、帰ったら説教じゃ」


台詞が終わるまで待っていた役者の様に、ラジアータの身体が地面に倒れる。


「お爺。。」


サリナの前にはサルートが立っていた。

いつも読んで頂いてありがとうございます。


読んで貰っているというのが良いモチベーションになり、楽しく書けています。引き続きお付き合い頂けるとありがたいです。


気まぐれではありますが、100話越えたらペンネーム変えようかなと思っています。なにがいいかなー

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