85)作戦会議
「最優先は島の状況を確認することだ。偵察部隊を第一とする」
そんなヴァーミリアンの言葉から作戦会議は始まった。
「島を知っている者が忍び込むのが効率が良い、偵察部隊に関しては我らの戦士の中から10人ほど選ぶつもりだ。そのもの達からの情報を待つ間にできることを考えたい」
「やはり、とにかく人数が足りません。援軍は呼べませんか?」アメリアの表情は厳しい。
「そうだな、我らの傘下にある近くの島には出兵を求めるべきだろうな。後は、、、ザウベルか、、」
ザウベルとは諸島中央にある大きな島で、獅子王が統治している。
「しかし、時間が掛かります。船がたりません」ヴァーミリアンの側近、ヘクトが言う。
現在この無人島にある船は、遠洋航行が不可能な幾つかの小船を除けば、ヴァーミリアン達が乗ってきた大型艦1と中型艦が1、後はポロンポ商会の戦闘には不向きな中型商船が1。合計3隻しかないのだ。
偵察隊は距離が近いこともあり小舟を使うとして、1隻は周辺の戦士を集めるために使う。
何があっても対応できるように、最低一隻は無人島においておきたい。そうなると残すは1隻。
ここからザウベルまでは約2日。出兵には1〜2日はかかるだろうから、援軍を連れて戻ってこれるのは早くて5日後。天候次第では遅れる可能性もある。さらに、操船するにあたって当然人手もいる。中型船でも少なくとも7〜8人は必要だ。
その間何かあっても、、、例えばこの無人島に追撃に来られたら、僅かな船と、心もとない人数で迎え撃たなければならない。
そう考えると、ザウベルへの救援依頼は賭けと言える。
「4日も5日も相手が何もしてこないと言う保証はないな。それでも賭けに出るなら、ポロンポ達に向かってもらうのも手だが、、、」
あの、とポロンポが手をあげる。
「船足はどうしても戦闘艦にはかないません。それに、一介の商船が向かって、獅子王に信用していただけるかどうか」
「ふむ。それならロクタかヘクトを乗せてゆくか」
ヴァーミリアンの言葉に2人は拒否。ヴァーミリアンのそばを離れるつもりはないと言う。
そんな言葉に深く頷くのはシーラ。
「ヴァーミリアン様、というか皆さんで一度ザウベルへ逃げるのはダメなんですか?」
ポロンポの問いにヴァーミリアンは首を振る。
「それは王として、いまの段階ではできぬ。もしかしたら生きているかもしれんという同胞達のことを考えれば、余計にな。もし、アーヴァント殿の考えが間違っていたとしても、ワシは白虎王じゃ。一矢も報いぬまま敵前逃亡は、ワシの傘下にある者達のためにも絶対に許されんのじゃ」
「そうですか。。」
「しかしやはり、ザウベルへの救援依頼は今の所難しそうですね。他に有力な援軍、例えばランカータとかは?」アメリアが提案。
「ザウベルとそれほど変わらんな、陸に上がってからの時間を考えると余計難しい」
「そうですか。。なんとかもう何隻か船を確保できれば、、」
「時間差は発生するが、近隣の島から戦士を招集すると同時に、各島の船でザウベル、ランカータの双方へ援軍依頼を行うようにしよう。それが最善のようだ」
アメリアとヴァーミリアンを中心に、ああでもない、こうでもないと話しているのを見ていたポロンポの脳裏に、ある思いつきが浮かぶ。
これは、諸島の地理を知っていて、かつ、クロト達の事情を把握しているポロンポにしか思いつかない”裏技”だった。
「強力な援軍、、、おるわ」
思わず呟いたポロンポの言葉。小さい声だったが、その場にいた全員が振り向いた。
「援軍がいるとは、どういう意味だ?」
ヴァーミリアンの視線が鋭く刺さる。
「絶対とは言えません。ただ、賭けてみる価値はあると思います、、、クロトさん」
ポロンポはゆっくりとクロトに視線を向ける。
「ん? 俺?」
「半日かからんのですわ」
「何が?」
「ここから、ムーンウルフの住む島まで」
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「どういうことか、説明してもらおう」
ヴァーミリアンに促されて、クロトが亜人でありクロトの祖母がムーンウルフであることを説明する。
しかし、併せてクロトには懸念もあった。
「ばあちゃん達が亜人の村へ流れ着いたってことは、要はムーンウルフの島を出たってことだろ。俺、どんな風に島を出てきたか聞いたことないのだけど。もしかしたらすげー揉めて出てきたかもしれん。人間との結婚なんて、今以上に厳しかっただろうし」
だから行った途端に追い出されるかもよとまとめる。
しかしポロンポの提案に即座に賛同したのはアメリアだ。
「妙手だと思います。何より距離が近いのが大きいです。最悪追い返されても一両日中に帰ってこれるなら、別の手を打つことも可能です」
「アメリアの言う通りだ。でかした、ポロンポ。やはり新しい視点から見ることができるものを会議に入れて正解だった」
めちゃくちゃ褒められて、かえって恐縮するポロンポ。
「では、ムーンウルフの説得をエル・ポーロとポロンポ商団にお願いしたい。そうだな、、、相手が相手だから意味をなさないかもしれないが、一応これを預けておこう」
腰から取り出して渡されたのは、古い短剣。
「、、、まさかとは思うが、王証じゃないよな?」渋い顔で受け取るクロト。
「ほう。知っておるのか、ああ、アメリアもいるから見たことくらいはあるか、では、話が早いな」
いや、見たことあるどころか、もう2つ持ってますけど、、、
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ムーンウルフの説得に向かうことになったクロト達は、夜半にポロンポの船に乗り込んだ。
時間を無駄にしないため、朝には島にたどり着けるようにポロンポ達が動いてくれるのだ。
「言い出しっぺですから。クロトさん達はちゃんと休んでいてください!」
そう言うポロンポの顔は上気している。今頃になってようやく、大変なところに立ち会っていた実感が湧いてきたのだ。
会議に参加していなかったクルー達はポロンポのやる気にきょとんとしているが、嫌な顔一つせず準備を進めてくれた。
もっとも行き先がムーンウルフの島と聞いたら、数名は悲鳴のような声を上げたが。
「さあ、出航準備は万全です! 行きますよ! 出航! ヨーソロー!!」
ヴァーミリアン達が見送る中、クロトはいよいよ祖母の生まれた島へと向かうこととなったのだった。




