68)海!
タイトル変更しました。詳しくは活動報告をご覧くださいませ。
「、、、なんか、、、ちょっと、、なんの匂いだ?」
風に運ばれて来た潮の香りを、初めて嗅いだクロトの感想だった。
「ああ、磯の香りだな。慣れると海の香りって感じだぞ」
シーラが笑う。
「これが海の匂いか。じゃあ、もうすぐ海が見えるのか!」
「海ー!」
「うみー!」
テンションの上がるクロト、アメリア、ジュリアの若年組。
クロトが馬を加速させたのを見て、アメリアも続く。
「シーラお姉ちゃん! ボク達も!」
シーラの馬に同乗しているジュリアが急かす。
「やれやれ、、おい! 慌てて海に落ちないように注意しろよ!」
先行するクロト達に声をかけ、シーラも馬を加速させる。
後に残されたアーヴァントと、水を好まないフレアだけはのんびりと進んでゆくのだった。
道も河もここで終わり。
その先に広がるのはひたすらの青。
「海だ。。。」
クロトは感慨深げに呟く。
「クロトさん! 向こうに砂浜があります! 行きましょう!」
アメリアの声に我に返って、砂浜へ馬を向けた。
「あちちっ」
照りつける太陽に砂浜はよく熱されて、素足で歩くと熱いほど。
それでも気にせず海に向かって走る。
打ち寄せる波に足をつけ、心地よい温度を肌で感じる。
一緒に駆けて来たアメリアとジュリアも海に入って、みんなで海水をすくってかけあいっこ。
人気もないことから、ジュリアはマントを外していた。
キャッキャしながらはしゃぐ3人をシーラが砂浜から眺めていると、ようやくアーヴァント達もやって来た。
「海が初めてのクロトや、ジュリアはまだわかるが、アメリアがあんなにはしゃぐのは意外だな」
シーラが3人を見守りながら返す。
「王族なので、このような機会はあまりなかったからな。年相応にはしゃげる環境があるのは彼女にとって、とても良いことだと思う」
「そうか」
短く言ってアーヴァントは皮袋から敷物を出し、はしゃぎ疲れて戻ってくるであろう3人を迎え入れる準備をするのだった。
ひとしきり遊んで、アーヴァント達が用意してくれたお茶とお菓子で休憩を取る。
そんな時、一陣の風がクロト達の横を通り抜けた。風は脱ぎ置いていたジュリアのマントを巻き上げる。
「あっ」
ジュリアが素早く羽を広げ、空へと飛び上がり無事にマントを掴んで戻って来た。
「危ない。危ない」
テヘヘと降りてくるジュリア。
と、シーラが人の気配を感じて街道の方へ視線を向ける。
そこにいたのは青い服に白い布のようなものを顔に巻いた、見慣れぬ集団。
「あれは、もしかして、、、?」
集団を見たアメリアが目を凝らしているうちに、集団の中でも小柄な人間が、隣にいた一番大きな人間に何やら大きな声で言い返し、そのまま馬を飛び降りて、クロト達の方に走って来た。
「敵意はなさそうだが、、、?」
警戒しながらも武器を構えるまでには至らないシーラ。
近くに寄ってくると、背丈からまだ子供のようである。
声変わりしきっていない、高めの声で叫ぶ。
「おい! そこの! 美しき羽を持つ少女よ! ワシの妃にならんか!」
「え? 嫌。」
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瞬殺された少年はその場に崩れ落ちる。
「なぜじゃ! 王太子の嫁じゃぞ!」
叫びながら砂に拳を叩きつけていた。
そこにアメリアが声をかける。
「あの、もしかしてクート王子では?」
そう声をかけられて、不思議そうに顔をあげる少年。
「? なぜワシのことを知っておる」
「ロッセンのアメリアです。覚えてらっしゃいますか?」
そこで少年を追ってやって来た白布の集団から、大柄な男が一歩前に出る。
「驚いた、本当にアメリア姫だ。ご無沙汰しております。そういえば今回の連合議会で証人に立つとのお話でしたな。ほれ、クート様は覚えておられませんか? アメリア姫。確か5年ほど前にお会いになられたでしょう」
「もうそんなに経ちますか。ずいぶん背も伸びていたので確信は持てませんでしたが。やはり連合議会に参加されるエルトラの皆様でしたか」
「5年前ではワシは6つの頃じゃな。うーん。覚えとらん!」
快活そうに笑う少年。
「それよりも、その少女よ、名前はなんと」
諦めない少年。
「ジュリア。。。」
名乗りこそしたがジュリアの警戒度はMAXだ!
「ワシはエルトラ王が長子、ルパ=クートである!」
「はぁ」
ちょっと落ち着け、少年。
アメリアを知っていた大柄な男も「はー」とため息をつきながら
「クート様、、、お知り合いになりたいのであれば、段階を踏みましょう。それに、アメリア姫と一緒にいるということは、最近噂に聞こえるエル・ポーロの一員でございましょう。あまり強引なのはどうかと思いますぞ」
そう諌められて「そういうものか」と、少し落ち着く。
「では、バルゲドで改めて挨拶させてもらうとしよう。美しき羽を持つ少女、ジュリアよ。その時まで息災にな!」
そう言ってエルトラの一団は、嵐のように去っていった。




