69)バルケド到着
「エルトラは大陸の南東にある王国です」
エルトラの使者団が去った後、引き続きお茶を飲みながら、アメリアが先ほどの集団を説明してくれた。
エルトラは他国から「砂の国」と呼ばれているように、国土の7割が砂漠の過酷な環境にある国だ。
周辺を山脈に囲まれ、国土面積は5つの王国の中で最も小さい。
国境は全て山脈が横たわっているので、マルメに行くには一部の山の切れ目の国境のみ。
と言っても、多少他の山より標高が低い山の間に回廊を無理やり作っている。
北の国へは陸路では進むことができず、航路のみの行き来である。
エルトラには年中、南東から乾いた風が届く。
その風は山脈に阻まれ、エルトラ以外には届かない。
ゆえに、エルトラだけが飛び抜けて乾燥した地域になっているそうだ。
そんな過酷な環境であるが、エルトラには良質な資源が多く眠っており、決して他国も軽んじることができない国となっている。
主な資源としては、山脈から産出される鉱石と、地中から掘り出される玉。
「オベリアの砦でクロトさんが使った玉、あれもエルトラ産です」
法術の触媒として、マナを集めるために非常に優秀な玉はその8割をエルトラ産が占める。
法術は鉱石の加工や建築資材の精製、農業の効率化など様々な部分で生活に根付いている以上、各国ともエルトラの機嫌を損ねて輸入が止まれば、民からの反発は避けられないのだ。
ただし、エルトラにしてみても食料などが輸入できなくなればダイレクトに命に関わるため、決して資源を盾に傲慢な対応をすることはない。
「そういう訳で、お互いに共栄共存となっています。ついでに、残る一つの国はランカータと言います。面積だけなら5王国最大の国です。橋の街、レーバールから東に向かうとランカータとの国境ですね」
「さっきのボクが断ったのは平気なのかな? ロッセンと関係が悪くなるとか。。。」
ジュリアが不安そうな表情をするが、アーヴァントがジュリアの頭を撫でながら答える。
「あんなのは問題のうちに入らん。礼を失していたのは向こうの方だ。そもそも、今の機嫌云々の話は国と国の間の話だ、個人感情で動くようなら困るのはエルトラの方だな」
「ああ。いつかのダメ皇子みたいなものだ」シーラが続ける。
「そっか。良かったなジュリア」クロトも一安心。
「最も、もしさっきの王太子が強引な手でくるなら、連れもろともぶっ飛ばすだけだけどな」とクロトが続ける。
「もう、クロトさんが言うと冗談に聞こえないですが、そうなったら私たちも黙っていませんね」
などとアメリアまでも賛同し、なかなか不穏な会話をしながら笑いあった。
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浜辺からバルゲドまでは2時間ほど。
「いやぁ、やっと着いたな」
バルゲドの城門を前にして、シーラがしみじみと言うくらい、まずまず長い旅程だった。
「連合議会までは8日ほどあります。旅の疲れを癒しましょう」
城門での入城審査を待ちながら、思い思いにあれがしたい、これがしたいと取り止めのない話を続ける。
流石に各国の要人が集まる街とあって、レーバールとは比べ物にならないほど審査が厳しい。
何名かは入城を許されずに揉めて、中には衛兵に連れて行かれる者もいた。
結果的にだいぶ時間がかかり、審査が終わると「無くさないように」と、首からかけるタグを渡される。
これは王族であるアメリアでも同じ扱いだったのは、クロトにとっては少し意外だった。
「王族でも事前申請してようやく別室で審査です。この街にフリーパスは存在しませんよ」
無事街に入れた頃には陽もとっぷりと暮れていた。
「じゃあ、宿抑えるか」クロトが適当な宿を選ぼうとしたが、アメリアが止める。
「一応私たちも連合議会の客人になりますので、今回は議会のある城での滞在です」
あ、そうなの?
夕食どきを迎えて、様々な屋台や食堂が客を呼び込もうと声を張り上げている。
「随分活気のある街だな。レーバールの雰囲気とも随分違う」
「港町ですからね、基本的に豪快な方が多いです。もちろん入城できた以上、身元ははっきりしている方々ですが」
港でも同じレベルの審査があるので、海からでも無法者が入るのは難しいそう。
「なので、安全な港町としてこの雰囲気も人気の観光地でもあります」
そうこう話しているうちに、城が見えてくる。ロッセンの王都バルデにも負けない立派な作り、、いや、バルデよりでかいか?
「5カ国の要人が不満なく寝泊まりできるようになってますから、バルデよりも規模は大きいと思います」
そういえば一応5カ国全部の王様の街なんだよな。じゃあ、5カ国ぶんの費用で建てられてるのか。そりゃあ豪華だわな。
「そう言うことですね」
城の衛兵にタグを見せると、街の城門と紐付けされているのだろう帳面を確認し、ようやく入城。
すぐに執事がやってきて、エル・ポーロ一行で押さえてあると言う隣り合わせの2部屋へと案内される。
その途中で
「おおっ、やっと来たな!」
廊下の向こうからダッシュするでかい犬、、ではなく
「お兄様!?」
走り寄ってきたのはロッセン王国の第一王子、この度正式に後継者に任じられたアメリアの兄、ゲラントだった。
金色じゃないから分かんなかったわ。




