51)首都、ガノー
「あれが、ガノーの入り口。。。」
クロトとジュリアは眼前にそびえ立つ壁のような山を呆然と見上げる。
「初めて来た人はだいたいそんな反応ですよ」と笑うブック。
「どうやって入るの?」首をかしげるジュリア。
「もう結構でかく見えますが、まだちょっと距離があるので。もう少し近づけば、中腹まで螺旋の道があるのが見えてきますよ。で、あの山の内部が我がファウザが誇る学術の都、ガノーです」
山が丸々街なのか。ロッセンの王都よりも随分と魔族領寄りに首都があるな、と思っていたが、下手な場所よりよっぽど防御力高そうだ。
ブックが言った通り、もう少し近づくと徐々に道らしきものが見えてきた。馬車が問題なくすれ違っていることから随分と広い道であることが分かる。
「さて、と、ほんじゃあ自分は先に行きますね。勇者御一行がついたと知らせてきますわ」
その軽口のおかげでアルルではえらい目にあったんだが。
「入城時に自分がいたら目立ちますから、アメリア姫にはすみませんがちゃんと並んで入城手続きしてください」
「構いません、お気遣い感謝します」
「入城したらすぐに会われる流れでいいんですよね?」
「はい。都合がつかないようでしたら、宿で待機していますと伝えていただければ」
「了解です。それじゃあ後ほど。クロトさん、待ってる間に揉めたりしたらダメですよ!」
捨て台詞を吐いてからブックが馬に鞭を入れた。
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「俺、クロトさんのこと舐めてました。なんであんな短い時間に揉め事起こせるんですか?」
クロト達は衛兵の詰め所に連行されている。
「しょーがないだろ、子供の胸ぐら掴んだんだぜ、あいつ」
大人しく順番を待っていたクロト達だったが、螺旋の2周目あたりで、数組先に強引に割り込みしようとした奴らがいたのだ。
別に放っておくつもりだったのだが、家族連れの子供が「横入りはダメなんだよ!」と注意したところ、割り込んだ奴らの一人が
その子の胸ぐらを掴んで脅したのだ。
奥さんが悲鳴をあげ、子供のいうことですから! と穏便に済ませようとする旦那さん。
他の人は遠巻きの眺めるのみ。クロト達以外は。
割り込み男の手首を軽くひねり子供を助け出すと、それなりの高さになった道から、眼下に見えた手頃なため池めがけてえいっ!
仲間がやられて絡んできた3人の男も同じくえいっ!
浮かんできた男達が下で何やらがなっていたが、黙って横に並んだジュリアが鋭くない方の矢で狙撃。
仲良く揃って静かになっていた。
騒ぎを聞きつけて衛兵が駆け付けたものの、周囲には多くの目撃者がおり明らかに投げられた男達に問題があったのははっきりしている。ただ、揉め事なので一応話を聞かれることとなり、揃って詰所にやってきたのだ。
まさか連れてきた衛兵も第二騎士団の副長に顔が利くとは思っていなかったのだろう。慌ててやってきたブックに目を丸くしていた。
まぁ、副長どころか王族にも顔が利く人いますけどね。
事情も事情だったので、ブックがきた段階で無罪放免。結果的に並ぶより早く入場できたし結果オーライじゃない?
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「リヴィア!」
「アメリア!」
お互い走り寄って抱き合う美少女2人。
ここはガノーの王城の一室である。
アメリアが手紙を出していたのが、現在アメリアと抱き合っているファウザ国第二王女、リヴィア姫だ。
アメリアとは年も1つ違い。同じ第二王女と共通点が多く、もともと連合王国の中でもとりわけ良好な関係を築いている2国間では交流も頻繁なため、お互いに幼馴染のような2人であるとのことだ。
「皆様もよくいらっしゃいました」
優雅に礼をする姿は、流石に様になっているなと見ていたら、アメリアに睨まれた。理不尽。
「それにしてもアメリア、旅に出たって話も驚きましたが、先々で随分と活躍したみたいね」
「主にそちらにいるクロトさんが、だけどね」
「そうだ、アメリアの手紙でも、パールやブックの報告でも聞いておりますが、この度は2度にわたり我が国の難事にお力添え頂き、誠にありがとうございます。ファウザ王家を代表してお礼申し上げますわ」
「いや、行きがかり上、たまたまだから気にしなくていいぞ」
なんかこのやり取り、いろんなところでやっている気がするな。
「ですが、礼もせずと言うのはファウザの信義に関わりますので、何か欲しいものがあればなんでもおっしゃってください」
「そう言われてもな、実際、旅費もアメリアというかロッセンが出してくれていてな。お金にも困ってないし、特に何もいらん」
そうなのですか? とアメリアに顔を向けるリヴィア。実はロッセンでも人知れず国難を救われて、と答えるアメリア。
「そしたら、リヴィア姫の斡旋で腕のいい法術師が法術教えてくれるんだろう、それでいいよ」
「その程度というわけには、、、」と渋るリヴィアだったが、そこでドアをノックする音が室内に鳴る。
「やあ、やっときたか。待ちかねたぞ」入ってきたのはまさかのアーヴァントだった。
「なんでアーヴァントが? 遺跡の調査はいいのか?」クロトが挨拶がてらに手をあげながら聞く。
「もう私がいるほどのものは発掘されなさそうだったからな。腕輪の調査に帰ってきた。ところでクロト、君も宝具を持っているらしいじゃないか。見せてくれたまえ」
もはや有無を言わせない勢いで詰め寄ってくるアーヴァント。え、君、宝具が絡むとこんなキャラなん?
「あ、宝具といえばジュリアちゃんの弓や、アメリア姫の皮袋もそうですよね」
ひょっこりついてきていたブックが余計なことを言う。ウチのジュリアが怯えてるじゃないか。
「あらあらアーヴァント、落ち着きなさい。どのみちクロト様の宝具はこのあといくらでも見ることができるじゃない」
アーヴァントの奇行は見慣れているのか、リヴィア姫はコロコロ笑いながら止める。
「いくらでも?」そのセリフに不穏な気配を感じたクロトがリヴィア姫を見る。
「はい。クロト様達の法術の指導はアーヴァントが是非に、と。ご安心ください。性格はちょっとアレですけど、法術の腕は我が国でもトップクラスの指導者ですのよ」
えー、チェンジで。




