43)シーラはすんなり行けるとは思ってない
「さて、結論から言うが、とりあえずアメリア姫は首都ガノーへ向かっていただく」
アーヴァントが突然宣言した後のお話を要約するとこうだ。
クロト達の迷い込んだゴーレムの部屋は、幸い全てのゴーレムが撃破されていたとのことだ。
つまりクロトが全て撃破していたのだ。
また、腕輪のあった祭壇の台座には「癒しの腕輪」という文字が確認できたが、使用方法などに関する記録は今の所見つかっていない。
さらにクロト達がでてきた反対側にも同じような通路があり、今の所左右対称のルートがあるのではないかと予測されている。
遺跡の構成から爆心地が遺跡の入り口付近であることも間違いなさそう。
本来なら入り口からまっすぐ地中に階段が伸びていて、突き当たりで左右へ通路が続いていく構造になっていたようである。
「現在、クロト達が出てきた右ルートの基本的な確認は済み、左ルートの状況を慎重に確認しているところだ」
淡々と説明するアーヴァント。
「ここからは私の推測だが、遺跡の構造から考え、左ルートにはおそらく別の宝物が安置されていた。この爆発の原因となったと考えられるものだな。つまりアメリア姫の腕についている、癒しの腕輪と思われるものに関しての情報が左ルートから見つかる可能性は低いと考えている。それならば同時進行で首都で調べてもらったほうが効率が良い」
「その左ルート? っていうの、またゴーレムがいるんじゃないのか。あれだったら調べ終わるまで戦力はあったほうがいいんじゃないか?」
ふとクロトが気になったことを聞く。
「気遣い感謝するが、おそらくは不要だろう。君らの話を聞く限りその腕輪が出現したのはゴーレムの撃破が条件と考えるのが自然だ。で、あれば、爆発の原因がもう一つの宝物なら、右ルートのゴーレムは破壊されていると考えられる」
「絶対じゃないなら、、、」と言いかけると、パールが補足。
「いやあ、要するにアーヴァントはその腕輪の調査を早く進めたくて仕方ないんだよ。ここでわからないなら自分が調査から戻るまでに少しでも調べておいてほしいってな。コイツ、宝具マニアだからな」
「失礼なことを言うな、誰が宝具マニアだ。私は未知なる宝具が好きなだけだ」
「ま、それに、おかげで私の足も完全復調しているし、不意を突かれなければ今度は遅れは取らない。クロトの実力は認めるが、我々だけでも対応できるさ」と、パールは自身の太ももを叩く。
「分かりました。それなら私たちはガノーへ向かいましょう。どうでしょう? クロトさん」
特に異論はなかったので、「遺跡もそうだが、アリのこと、首都に滞在中に何かわかったら教えて欲しい」とだけ頼んで翌朝には出発することにした。
翌日、クロト達の出立後の話である。
パールがふと、「そういえば、クロト殿の装備していた手甲も、なんか特殊な宝具だったらしいな」
「ほう?」
「なんだったか、遺跡の中で聞いたのだが、蒼月の手甲とかいっていたか?」
「蒼月の、、、ほう」アーヴァントの目がキラーんと光ったが、いつものことなのでパールは放っておいた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
というわけでクロト達はファウザの首都、ガノーへ向う前に近くの街アルルへ向かっている。
首都ガノーまでは馬を飛ばせば1〜2日そこらで行けるが、アメリアがまずは近くの街で入国申請をする必要があると主張したためだ。
パール曰く、身元もはっきりしているし、直接首都入りでもなんら問題ないとのことだったが、こういうことろで手順を省略すると、王族だから優遇されたと痛くもない腹を探ってくる輩が出てくるので、面倒でもちゃんと手順を踏んだほうが良いとのことだった。
で、一番近い街は遺跡から急げば半日ほどのアルルだったというわけ。
ちなみに急ぐ話でもないので、のんびり進んでアルルで一泊。
翌日ガノーへ向かう予定。
また、パールの副官の1人、ブックが案内人として同行してくれている。
ブックが案内役に指名された理由は、誰にでもフランクという性格ゆえだ。
案内役を買って出てくれた騎士は幾人かいたが、やはり他国の姫という意識が強いようで、アメリアの要望であんまり身分を気にしない方で。ということで選ばれた。
「別に衆目を集めるのは慣れているのでいいのですが、公的な場ではないのであんまり騒がれたくないのですよね」
とはアメリアの王族発言。普通まぁ出てこないコメントだな。
「うわお、すげー王族発言」
俺も心で思うのにとどめたというのに、思ったことをそのまま口にして爆笑する男、ブック。大物である。
まぁ、だけにお互い全く気を使わずに済むわけだが。
パール曰く、礼儀はあれだが実力は保証するとか。
しかし、もともとガノーへ向かう予定だったとはいえ、他人に行けと言われるとなんか面倒くさくなるのなんでだろうなぁ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最初に気づいたのはやはりシーラだった。
「向こうの森の方、戦闘、、、いや、追われているのか?」
シーラが示す方向に視線を移すと、確かに何かが複数の人間に追われながら、矢を放っている。
逃げてる方、飛んでるけど。
その飛んでいる方、見た感じ随分小柄で子供のようである。追っているのはむさ苦しい男どもが7〜8人。
「アメリア」クロトが目線を送る。アメリアがこくりと頷く。
「助けてあげてください!」
「応!」
ブースト加速をきめたクロトはあっという間に戦闘中の集団と間合いを詰めると、一番近くにいた手頃なヒゲモジャを蹴り上げる。
縦に回転しながら森に消えるヒゲモジャ。
返す刀で隣にいたスキンヘッドに平手、スキンヘッドは地面に2〜3回叩きつけられて痙攣。
そこで初めて乱入者に気づいた男達は、身構えるものと、逃げ出すものバラバラに動き出す。
とりあえず身構えたピアス男をローキックで足を砕いて戦闘不能にし、同じく剣を構えたパーマは肩を割と強めにぶん殴る。
バキンという音とともに悲鳴を上げ転げ回るパーマ。
あっという間に4人を制圧し、逃げた3人を追いかけようとしたが、目の端に見えた追われていた子供? が、ふらふらと空中から落下するのが見えたので、慌ててそちらの確保に動く。
クロトがしっかりとキャッチしたところでアメリア達が近づいてきた。
「アメリア、治癒を頼めるか?」傷の目立つ子供を渡す。
「任せてください」とすぐに受け取って治癒を始めるアメリア。
一連の流れを見ていたブックが感心したように「手慣れてるなぁ」と呟く。
それを聞いたシーラも「手慣れてしまっているのだよなぁ」と嘆息しながら、転がっている輩を縛り上げて行くのだった。




