42)アメリア、バレる。
クロト達が帰還した夕方。
仮眠を取るクロトを尻目に、ファウザの調査団は早めの夕食をとるための準備を進める。
明日早朝の調査に向けて英気を養うためだ。
ちょうど夕食の頃合いに、クロトが目覚める。
「おはようございます。復調されましたか?」
「よく寝た。逆に夜眠れないかもしれないな」
ふわぁと、起き抜けのクロトが大きく伸びてあくび。
「もうすぐ夕食ができるそうです。それまでお茶でも」アメリアがテーブルへと手招きをする。
「アメリアとシーラだけか? 俺待ちだったのか? ほっといても良かったのに」
「できれば私たちも、夕食の準備の手伝いなどしたかったのですが、、、」
「まぁ、これではな、、、」
すると、アメリアが困った顔でシーラを見る。
「?」何やら状況がつかめんな。俺が寝ている間に何かあったか?
そうこうしているうちにパールが天幕に来て夕飯ができたと告げる。
「ああ、クロトも起きていたか。落ち着いて礼も言えなかったからな。改めて遺跡ではありがとう。君のおかげで無事に脱出できた」
「なに、俺一人じゃあ灯りも満足につけられなかったからお互い様だろ」
などと話しながら4人で天幕を出る。と、周辺の兵士明らかにざわついた。小さく聞こえる声。
「おい、やっぱりあの方が奇跡の姫か、、、」
「あれがオベリアの砦を救ったアメリア姫か、、、」
「なんでも、パール様の足の怪我も一瞬で治したとか」
「なんだそれ、聖女かよ。踏んでください」
めっちゃアメリアに集中している。当人を見ると顔を両手で覆って頭を振っていた。
「こうなると思ったので偽名を使ったのに、、、」いまにも崩れ落ちそうだ。
「あれ、本名言ったのまずかったか?」
「クロトさんは悪くないのです。本来はアーヴァントさんの手伝いに行く前に打ち合わせしておくべきでした。まさかこのような展開になるとは思ってなかったので、適当なところでこっそり伝えておこうと考えていたのですが、、、」
シーラはクロトが寝ているときに、アメリアにしては珍しく手回しがなかった理由を聞いていた。
遺跡への興味と可愛い偽名を考えていたら後手を踏んだ、などとは本人の名誉のためにも言えない。なので黙って聞いている。
「しかし、アメリア姫の隣にいる騎士様はともかく、あの男はなんだ?」
「見た所、高貴そうな感じはないから、貴族や騎士ではなさそうだが」
「荷物持ちか何かじゃないか?」
おお、俺への謎の暴言が飛び交っているな。おいそこの集団、あっちで大人の話し合いをしようか?
ざわつきが収まらぬ兵達にパールが言う。
「アメリア様はお忍びの遊学中である。たまたまこの地に立ち寄られたが、この後我が国の首都に向かう予定だ。ファウザの兵として恥ずかしくない対応を見せよ。また、両脇に控えるシーラ、クロトの両名はアメリア様のご友人である。当然のことながら発言には気をつけよ」
兵達が緊張感とともに口をつぐむ。
だが、アメリアがおずおずと兵達に話しかける。
「あの、私たちは偶然この場に居合わせただけですので、あまり気にせずに皆様の任務を遂行してください。むしろ邪魔をしてしまってすみません。なるべくお手伝いできることはお手伝いしますので、何かあればパールさんかアーヴァントさんへ伝えていただければ」
再び兵達がざわめく
「やはり聖女じゃ、、、」
「有難や、有難や」
「パール様に頼み込んだら、一回踏みつけてもらえるようお願いしてもらえないかな?」
さっきからチョイチョイ欲望がにじみ出てるやつがいるな。
パール、最後のあいつ縛ってゴーレムの部屋に置きに行こうぜ。
夕食は肉たっぷりのシチューだった。
調査任務にあたり過不足なく調査活動を送れるようにするため、首都から定期物資が届くとのこと。
逆に現場からは発掘されたものが随時首都に運ばれるそうだ。じゃあ、狩しなくても良かったんじゃないのか?
パールに伝えると「暇つぶしだ」と笑っていたが、暇つぶしでえらい目にあったぞ、おい。
「ところで、腕輪の調子はどうなんだ? 寝てる間に爆発したりしなかったのか」
「爆発って、クロトさんじゃあるまいし。クロトさんの寝ている間に色々試したのですが、やはりヒールの法術に反応するみたいです。ヒールだけ法術の効果が格段に上がっている感じで。シールドのような防御法術では反応ありませんね。また、ヒールを使える術師さんを呼んで逆に私にヒールをかけてもらいましたが、腕輪がその術師さんに移るようなこともなかったです」
へー。まぁ爆発したりするのでなければ、いいか。
要は俺の使うブーストみたいなものだろ。便利じゃん。
「そうですね。でも、例えば腕輪のままヒールを使うと体力の消耗が激しいとか、そういうデメリットがあるかもしれないので」
「疲れやすくなってるのか?」
「いえ、別に平気ですね。なので様子見です」
「そう言えば」とパールが会話に割って入ってくる。
「爆発で思い出した。ゴーレムの部屋で見た、クロトのあの炎、なんだったんだ?」
そこで、オベリアの砦で起きた爆発事故? についてアメリア達が説明。
全く法術のコントロールができていないので、ファウザでコントロールを学ぶためと入国の意図を伝える。
「それでは、、、ゴーレムの部屋での炎は完全に偶然か」
「いえ、一応手甲が触媒になって、ある程度クロトさんの意思で発動するみたいなので、全くの偶然とは言えませんが、下手したらまた爆発してましたね」
おおう、パールの視線が痛い。いいじゃない。無事だったんだから。
「確かに、法術を学ぶなら我が国が一番適しているが、、クロト殿、ちゃんと教わるまでその力は使わないことをオススメするよ」
「分かってる。というか、使おうとして使っているわけじゃないからな」
「もっとダメではないか」嘆息するパールだった。
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日中しっかり寝たので眠れないかと思ったが、夕食後に酒を飲んだからかぐっすり就寝。
翌日は予定通り探索を兵達に任せ、待機である。
パールが暇だと言っていたが、お前はそこでおとなしくしていろ。いいな。
結局、暇を持て余したパールがウロウロし始めたので、訓練を兼ねてシーラとともに簡単に手合わせ。アメリアが観客。
遺跡で槍使いと言っていたパール、確かにちゃんとした槍を持たせると動きが違う。
パールは突きではなく、流れるような槍使いが持ち味らしく、切っ先が糸を引くように弧を描き、クロトに攻めかかった。
こちらは素手が基本なのでなかなか間合いの詰め方に手間取る。
それでもどうにか攻撃を凌ぎ、パールの腹あたりに蹴りを一閃。もちろん寸止め。
「思った以上にやるな」感心するパールに
「相手が一人ではクロトの練習にならないだろ」とシーラが参戦してきた
で、今度は二対一での模擬戦。
ガッチガチに防御壁を張るシーラと、その間隙を縫って攻めかかるパール。二人掛かりはずるいぞ!
とはいえお互い本気ではないので、なかなか決着がつかず。
飽きもせずわちゃわちゃやっていると、遺跡に入った兵の先行隊が戻ってきた。
兵達はアーヴァントに状況を報告。拾ってきたものを整頓し並べていく。
歩いているときは何もないと思ったが、照明器具一つ、なんなら石ころ一つでも貴重な古代遺産かもしれないので、慎重に回収するとのこと。
ある程度情報がまとまってきたところで、アーヴァントが「一旦状況を整理する」とパールに近寄ってきた。
ぞろぞろと天幕に戻る面々。
「さて、結論から言うが、とりあえずアメリア姫は首都ガノーへ向かっていただく」
アーヴァント、君、説明が足りないってよく言われない?
ここまで読んでいただいた皆様、ありがとうございます。
現在のところ、70話までは執筆済みとなっておりますので、何事もなければこの先1ヶ月以上は毎日更新でいけると思います。
引き続きお楽しみいただければ幸いです。




