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15/201

15)クロトは通行証の発行を待つ

雑貨屋を出ると、アメリアも紙袋を持ってついてきた。何か買ったの?


「ええ、こういうお店にはあまり来られませんので」


そうか。姫様だもんな。


城に戻る道すがら、アメリアが聞いてくる。


「それで、クロトさんはいつ頃出発される予定ですか?」


「うーん、必要なものは買ったから、準備が整ったら出ようと思ってるんだが。好きに使っていいと言われてはいるものの、だらだら城にお世話になるのもなんか、だしな」


ちょっと寂しそうな顔をするアメリア。


「貴賓室のことは本当に気にしなくて大丈夫ですが、やはりそんなに日はありませんね。。。」


「何かあるのか?」


「昨日お話しした「通行証」の件ですが、あと2~3日だけお時間を頂戴できませんか? その間、もう少し王都を楽しんで頂ければ、、、」


各地に通達したりしなくちゃいけないのかな? 面倒なこと頼んじゃったか?


「滞在するのは構わないが、そんなに面倒なら、無理しなくてもいいぞ」


「いえ、大丈夫です! 絶対なんとかしますので!」


フンスっと、気合いを入れるように両手を握る。


「そうか、なら任せるよ。じゃあ、通行証をもらった日を出発日としよう」


そんな会話をしながら城に戻った。


部屋に戻って早速地図を広げる。俺が両手をいっぱいに広げてちょうど全てが開く、大きな地図だ。


実は世界地図を見るのは初めてだったりする。話には聞いていたんだけどね。


この世界は牛の角のように、大陸の両端が跳ねて尖った形をしている。そして中心よりやや西に魔族と王国連合の国境線が引かれている。


この国境に隣接している国の一つに、ロッセンの文字が見て取れる。


ロッセン王国の南に、五大王国のもう1つの国。東はアメリアの姉が嫁いだというマルメ王国。マルメ王国の版図は縦長で、両サイドに四つの王国が隣接している。聞いた話だと、立地からこのマルメ王国に王国連合の本部があるらしい。


それぞれの国の主な街が記されている他、名所も書き込まれている。


反面、山間部を中心に点々と空白の部分もある。この空白の部分にはクロトたちのような亜人の村や、五大王国の傘下にない小国があるのだろう。


ちなみにクロトの村は、ロッセン王国の西の砦からちょうど真北あたりの山間部にある。もちろん地図では空白。


西は全て魔族領となっているが、大きく魔族領の名称、ハナムの文字と首都とされる街、あとは国境に近い幾つかの町や村などが記されているだけで空白部分も多い。


北の海には点々とたくさんの島が描かれており、これらの大半が獣人諸島連合の版図だ。魔族領と違い、こちらも割合細かく街が記されている。


王国連合と違って、名所より港の記載が多いのが特徴的だ。


地図を手に入れたことで、クロトはこの旅の一つの目標を決めた。


この地図に自分が出会った人や物、様々な出来事を書き込んでゆくのだ。いつか自分の村に帰るとき、大きな土産になるだろう。


まずはここ、ロッセン王国の首都にペンを走らせる。そういえばこの街、バルデっていうのか。


アメリアのミドルネームがバルデだったな。などと思い出しながら、アメリア、シーラ、バーン、ゲラントらの名前を書く。思ったことや、ここで地図を買ったとも。


ついでに、泣き虫の王様とも書き添えた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


よくよく考えれば、見聞を広めるという点ではロッセン王国から見ていっても何の問題もないのだ。と、クロトは今更ながらに気がついた。


そこで、この3日間はゲラントの案内で街の巡回に付き合ったり、バーンと一緒に近衛兵の訓練に参加して、演習ついでに郊外の名所を見に行ったり、コロンコロンと再会して謝罪を受けたりした。


意識誘導がとけたコロンコロン君は割といいやつだった。左手は回復法術で治してもらっていた。


アラクネに操られていたのを悔いて、1から自分を鍛え直すそうだ。頑張れ。


訓練がてら一戦やろうか? と聞いたらそれはそれは丁重に断られた。左手をさすり、ちょっと涙目だった。


ちなみにアメリアやシーラとは夕食の席で一緒になるくらいで、とても忙しそうだった。


日によっては同席できないことを詫びられたほどだ。


食事の場を共にできた日にはシーラはアメリアの専属護衛なので、特定の騎士団には属さずにいることなども聞いた。


なぜかアメリアが照れていた。


そうしてあっという間の3日目の夕食の場。


「ようやく目処がたちました! 明日の昼までには用意ができそうです!」


と嬉しそうに言った。その件で忙しそうだったものな、感謝しかない。


「ありがとうな。じゃあ、明日の昼に出発としよう」


最後の夜となると、やはり寂しいものだ。

その日は別れを惜しみ、ことさらゆっくり夕食を共した。


翌日、朝のうちから世話になった人たちに挨拶をして回る。


バーンやゲラントとはまたぜひ来てくれと、ぐっと握手を交わす。


「ところで、アメリアとシーラを見かけないのだか?」


ゲラントは聞いてないのかと首を傾げ「2人は正門で待っているぞ」と言った。


そうか、見送りしてくれるのか。それは素直に嬉しい。


そんなこんなで準備を整え、のんびり大通りを正門へ進む。


アメリアがクロトに気づき、大きく手を振っている。元気だなぁ。


正門に着くとフードを被ったアメリアと、赤色ではない動きやすそうな鎧姿のシーラ。


そんな2人に「いろいろ世話になったな、通行証もありがとう」と礼を伝える。


それで、通行証ってどんなもの? 濡れたりしても大丈夫なものが良いのだけど。


「お礼には及びません。というか、お礼をするのはこちらの方ですからね。それで、通行証はここに」


どこに? 「ここです」と自分を指差すアメリア。


ん? どういうこと?


「ですので、私が通行証です。大概どこでも通れますよ?」


と、ニコニコ顔のアメリア。


ん??? どゆこと?????


今年の仕事終わった!

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