98)ベルグの証言
サリナがパーティに加入したその夜。
未だ壁を修復中の玉座の間に、クロト達と白虎王ヴァーミリアン。それにいつもの側近2人。加えて石化されていた重臣が3名と、獅子王ビクトルと側近がこちらも2人。合計15名と1匹が集まった。
車座で座り、ヴァーミリアンを中心に状況の報告が行われる。
ちなみに、この場ですり合わされた情報はアメリアが手紙に記し、王国連合にも知らせることになっていた。
逆にエル・ポーロからは王国内で起きたドラクロアの仕業と思われる一連の事件についての説明と、今回の件との関連性が検証される予定だ。
「現状、復旧は順調だ。建物などの損害はほぼない。ただ、残念なことに数名の被害者が確認されている。どうも石化状態の時に破壊されたようだ。全く、酷い事をする。。。」ヴァーミリアンが顔をしかめる。
「叔父、ベルグを締め上げて色々聞き出した。ゴルゴンの首を持っていた男はチッカーノ。クロト達が戦った魔剣の持ち主はラジアータと言うらしい。どちらも死んでいるので確認はできぬ」
「生きているものは?」と、ビクトル。
「今の所、何も喋っておらん。ペラペラ喋っておるのはベルグだけだ。そしてベルグは他の者の名前は知らんようだ。ただ、ひとつ気になることがある。今回の騒ぎを起こした輩の中で死んだのが2人。我々が捕らえたのがベルグを含め4人。ムーンウルフが連れ帰ったのが2人だが、ベルグは自分を含め9人だったと言っている」
「一人足りないか、、、まだ島に潜伏しているのだろうか?」サリナの尻尾がそわそわし出す。すぐにでも探しに行きたそう。
「いや、状況を考えれば逃げた可能性が高かろう。ここで島に潜伏していてもどうにもならん。ベルグの話ではリーダー格はゴルゴンの首の男、、チッカーノと言う話だったが、或いは裏で操っていたのは逃げた男かもしれん」
「追撃は可能か? 必要なら俺の船を出すが?」
「ビクトルの申し出はありがたいが、いつこの島を出たのかもわからん。我々が踏み込んだときには逃げていた可能性も考えれば、追撃は難しかろう」
「それで、この人達の狙いは何だったのでしょう? やはり国の乗っ取りですか?」
「アメリアの言う通り、この国を乗っ取ろうとしたようだ。叔父は手引をすれば王の座をくれてやると言われて手伝ったと言う。全く愚かな、、、」
「確かになぁ、仮に上手くいっても三王の原則で王にはなれぬ」ビクトルは哀れなものを見るような目で、遠くを見つめた。
「あ、諸島連合でも”三王の原則”は適用されるのですか?」アメリアが聞くと、ビクトルは知らなかったのかと言う顔でこちらを見る。
「確かに三王の原則は王国連合から始まった制度だが、勢力が乱立したのは獣人諸島も同じだ。なかなか良くできたルールだからな、こちらでも採用されている。アメリアは知らぬかもしれんが、魔王にも適用されているほど浸透しているのだぞ」
ビクトルの説明にヴァーミリアンも頷く。
「魔王もですか?」
アメリアのみならず、シーラやアーヴァントも少なからず驚いていた。初耳だったようだ。
「まぁ、詳しい話は今は関係ないので省くがな。例えば今回の場合、ベルグは俺や鳳王が王として認めなくとも、大陸の王が3人認めれば王を名乗ることができる。だが、当然各国何が起きたか調べてから判ずるであろう。故にどの道、ベルグが王を名乗るのは無理だな」
ビクトルが断言するように話をまとめた。
「一つ可能性があるとすれば、鳳王あたりに”仮王”として認めてもらうかだが、、精霊王のようにな」
仮王とは1国のみ暫定的に王と認め国交を開くケースなのだとか。
不測の事態でどうしても指導者を定めなければならない場合に、仮王と認めた国が全責任を負うという前提のもとで執行される暫定的措置だ。一応、王ではあるが国としての発言権はないなどの制約がある。
「鳳王か、、、あいつは他の国に興味がないからなぁ、金でも積めばホイホイと承認するかもしれん、、」
獅子王と白虎王が二人して嘆息する相手、鳳王。ちょっと気になる。
「そんなに癖があるのか? 鳳王は?」
クロトがみんなの疑問をそのまま口にした。
「いや、悪いやつではないのだが。鳳王の統治するシャピニは鳥人の国だ。ほとんどの民が鳥人で、同じ獣人とはいえこう、鳥人達の身内感が強いのだよ。鳳王も自分たちのテリトリーさえ乱されなければ、あまり他国に干渉しないのだ。だからワシが事故で死んだとか適当な話をでっち上げて、仮王就任を頼めばもしかしたら受けてしまうかもしれぬ」
なるほどなぁ。いろんな王様がいるな。
「エルフの王も仮王なの?」黙って聞いていたジュリアが初めて発言。ビクトルがニヤリと笑う。
「そうだ。俺が認めてやった。そしたら俺にだけ里へ入る方法を教えてくれた。場所はこの島の方が近いのに、エルフが頼ったのはこの俺、獅子王ビクトル様だ!」
「馬鹿を抜かせ。たまたま拾った漂流エルフを勝手に仮王に任じおって。本来仮王とは長期にわたりそのままにしておくものではないのだぞ」
ヴァーミリアンの肘鉄に「王になりたいと懇願されたのでな」と、わっはっはと笑ってごまかす。
昨日の話は嘘じゃなかったんだな。とりあえず獅子王をぶん殴らずに済んだ。
「少々話が逸れたな。それで、あとベルグから聞き出したところ、会話の中にカイロンという男の名前と、召喚という言葉がよく出ていたという」
「カイロン! やっぱり、、、」アメリアの表情が厳しい。
現在王国連合から一級犯罪者として追われる、アーミーアント召喚の容疑者。同名の別人とは考えられない。
「知っている者か?」
ヴァーミリアンの問いに、以前に一度簡単に説明していた一連の事件を、連合議会の決定も踏まえちゃんと話す。
「カイロンはアーミーアント召喚の容疑者です。先日お伝えした通り、諸島連合にも公式な手紙がそろそろ届く頃だと思うのですが、、、」
「噂などでいろいろ聞いていたが、想像以上にまずいことになっておったのだな。いや、今回もカイロンなる者が絡んでいる以上、今もまずいということか。。。」
「はい。ですが、潜伏場所がわかりません。いずれかの国を乗っ取って活動拠点とするつもりなのでしょうが、そもそも目的も良くわかりません」
「潜伏するなら俺たちの諸島の方が潜伏しやすいわけか、、、」
ビクトルの言葉にアメリアは首を振る。
「いえ、そうとも限りません。大陸にも山間部には隠れ里のような村が点在している場所もあるそうです。一概に大陸から逃げたとは言いにくいと思います」
とクロトを見るアメリア。そうだよな。俺の村も王国の人たちは知らないものなぁ。
「とにかくまずは各国の力で潜伏先を探すしかありません。今王国の方でも鋭意捜索を開始しているはずです。獣人諸島の皆様にも協力いたきだきたいとお願い申し上げます」
アメリアが頭を下げる。
「無論だ」と返す白虎王と獅子王。
「しかし、そうなると捕えた者たちからどこまで話を聞きだせるかに全てかかってくるのぅ。全く、最後まで骨の折れる話じゃ」
ため息しか出ないヴァーミリアンは冷めたお茶を酒を煽るように飲み干すのだった。
人物紹介込みだけど原稿1000枚超えた!




