6. 両国の絆
ここはエメリオン王国が有する唯一の最高学府カルサイト学園。
剣術と魔術を主とする学問の学び舎だ。
国内外問わず生徒は貴族を中心にしているが、実力主義の世界なので庶民の特待生も珍しくない。
その逆もしかり、王族などの身分の者も在籍する。
この学園は数々の才ある術師を輩出してきた。
名門であれど入学は容易い。しかし卒業は実力がないと厳しい。
そんな学園のある早朝のこと。
セオドアは爽やかにプロポーズし、ついで入学理由を告げていた。
「さて、バイオレット様、リオ様。授業に向かいましょう」
いくつかの講義の後、セオドア、バイオレット、リオ達の3人は学園内の庭園へと集った。
まずは学園生活の雑談からはじめようと切り出す。
「殿下、最初の講義はいかがでしたか」
「流石は名門と名高いカルサイト学園ですね。質の高い講義でした」
「講師は伝説ともいえる術師達ですからね。このような人材を揃えることができるのは我が国だけですわ」
ウフフと笑ってみせる。
「剣と魔法のエメリオン王国とはよく言ったものです。やはり伊達じゃないですね」
ところで、と続けるセオドア。
「バイオレット様の専攻はどちらですか?」
「わたくしは魔法科です。大した腕ではありませんが、氷属性の才がありまして」
「それは素晴らしい。私は魔法はてんで向いてないようで、剣術科に在籍することにしました。しかし残念、バイオレット様と同じ科が良かったです」
「あら、光栄ですわ。ですが、実はリオに勧められて剣術も学びたいと思ってますの」
リオに目配せると、うなずき相槌つ。
「だってさ、魔法剣術士ってカッコいいじゃん。氷でバキバキーっと動きを止めて、凍てつく剣でバッサーいくの気持ち良さそう」
コミカルな身振り手振りで表現するリオ。
「ほう。そのような戦術は興味深いですね。私もサポートに回って、凍った敵の一掃に加わるなんてどうでしょう」
「最高! 剣のセオドア様、魔法のバイオレットちゃんで、ビジュアル的にもこのコンビさぞかし映えると思います」
「まあ、楽しそう。と言いたいとこですが、戦いなど不要な世の中が一番ですわね」
セオドア様は少し背筋を伸ばし、真面目なお顔になる。
「はい、仰る通りです。私も一国の王子として平和な世の中を何より望みます」
わたくしを見つめながら続ける。
「ですから、私達が結婚することは何よりの国交となるでしょうね。
戦争推進派の抑止力となり、ロータイトの国民はエメリオン王国との絆ができるということです」
「それで、朝の件に繋がるわけですね」
「そうなのです。バイオレット様の美貌にただ心奪われたわけではないのです。
頭の空っぽな王子だと思われたのなら、言い訳をさせてください」
「まさか、そのようなことは。少し驚きましたけどね」
「どうか、少しずつでも、私が頼れる男だということを知っていってほしいのです。
これからもどうぞよろしくお願いします」
次の講義のため、セオドア様は席を立った。
「はぁん、かっこよすぎですセオドア様ぁ」
リオはとろけきった顔で、尚且つ自分のセリフは届かぬ小声で彼を見送る。
「私ならプロポーズ待ったなしで受け入れるんだけどなー」
「状況を考えなさい。婚約破棄直後に次の殿方に乗り換えるなんて、淑女の行いではありませんわ」
「ふーん? じゃあ時期を見て受けるってこと?」
「それはその……色々考えなければいけませんけど。
まあ、急かすことでもないでしょう。
セオドア様だって、返事は後日でと仰ったことだし」
「オーケーわかった。確かに簡単にできる返事じゃないもんね」
わたくしは先日の夜、シド殿下に婚約破棄を突き付けられた。
しかし両家と遺産などの契約があるため、正式なものは書面をもって成立する。
そのため、まだ婚約状態ではあるのだ。
こうなった今、婚約などこちらから願い下げだとは思う。
だが、相手は腐っても王家。
こちらからの書面提出は分が悪い。
さっさと清算したいのだが。
そう思っていた矢先、向こうから三行半が叩きつけられた。




