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5. ファンディスクに期待

そういう話なら、と前置きして。


「とっておきの切り札があるわ」


にやりと不敵に笑うリオ。


「流石は異世界仕込みの預言者ですわね。ぜひご教授いただけて?」


腕を組みなおし向き直る。


「ロータイトだって、何も国家総出で戦争を始めたいわけじゃない。反対派の人たちもいる」


「そうね」


「味方につければ戦争を回避できるであろう人物、知りたくない?」


「もう、もったいぶらないで。誰ですの?」


両膝をつき手を組み会話を溜めるリオ。

それは、と口を開く。


「敵国ロータイトの第一王子セオドア様」


まさか。

ロータイトの王太子とはこれはまた。

彼の協力があれば、確かに戦争を止める一手となりそうだ。


「それはそれは」


「セシリーが救国の聖女になるルートで、力になってくれた人だよ。戦争を望まない優しい人なの」


両手を合わせてうっとりして何やら思い出しているようだ。


「素敵なサブキャラでさー。攻略対象ではないのが残念だったわ。ファンディスクに期待するしか」


聞きなれぬ単語があるが、彼が素敵な人物ということはわかった。


「で、誰に情報あげるの?」


「決まってますわ。シド様の弟君フィル様に与えて、彼に王位継承者となっていただくわ」


わたくしが婚約破棄されたときに、シド様の行為を「1人の女として看過できない」と庇ってくれた女性。

それはフィル様の婚約者の方だった。

どれだけわたくしの心が救われたか。


「うんうん。いい選択だと思う」


そうと決めたら、あとは早かった。


まずはフィル王子の婚約者、グレース様と交渉。

この国に戦争の危機があること。

王位継承権を継ぐべきであるのはフィル様だということ。

協力した対価は、広大な領地をフロックハート家へ与えること。


グレース様は全面同意してくれて、フィル様の協力も約束してくれた。


数日後、話を受けたフィル様はわざわざフロックハート家まで出向いてくれた。


戦争を止める交渉のためロータイトへ行かれるようだった。

シド様の婚約破棄の件を親族として深く詫びられた。

そして、必ずや自分が王位を継承してみせると約束してくれた。

見返りの領地の約束も期待していて欲しいとのこと。

グレース様もいらっしゃったのだが、お二人とも仲睦まじい様子で微笑ましかった。


「うまくいくといいね」


「わたくしは信じてるわよ。リオの預言ですもの」


「いやー頼りにされちゃってるわー」


頬を染め、たははと笑う。





わたくしが預言された不穏な未来のうちの一つに、「学園を追い出される」というのがあった。

だが、今のところそうなってない。

ならば勉学に励むのが学生の務めでしょう。

リオを聴講生として登録し、学園へ向かった。


「えー、この女子高生の制服で大丈夫なの?」


「服装に決まりはなくってよ」


「キメっキメのドレスだもんねバイオレットちゃん……」


「これが令嬢の定番衣装ですもの。当然ですわ」


たわいもない会話をしながら歩いていると、一人の男性が近づいてきた。

リオは気付くと、キラキラした顔で目を潤ませはじめた。

誰ですの?


「はじめまして、バイオレット様。私はロータイト第一王子セオドアと申します」


「ええ、はじめまし……えっ!?」


名乗った王子は、確かに格式高い雰囲気を持つ。

改めて見直すと、整った顔立ちで背丈は高くバランスの取れたプロポーション。

人目を惹く美青年だった。


「この度は、我が国で起こりかけた戦争を未然に防いでくれたこと、心から感謝申し上げます」


「い、いえ。セオドア様、戦争は無事止めることができたのですね?」


「はい。戦争推進派がまだ小規模で助かりました。これも貴女のおかげです」


「ほとんどはこの預言者リオのおかげですの」


「おお、貴女が預言者のリオ様ですか。頼もしいお方ですね」


「ああっ、生セオドア様が目の前にー」


ぱしっと背中をはたいて喝を入れる。


「涎をお拭きなさい」


私に向き直り、じっと見つめるセオドア様。


「戦争を止めた貴女のその行動、英断、感服いたしました。」


「お褒めにあずかり光栄ですわ」


「どうでしょう。エメリオン王国とロータイトの絆を確かなものにするため」


そう言ってわたくしの前に跪くセオドア様。



「私と結婚してくれませんか。バイオレット様」



結婚。

――耳を疑った。


ぷるぷる震えるリオ。

「やばいこの展開は読めなかったし絶対に公式ではあり得ないルート開放しちゃったねこれ」


「ちょっと黙ってて」


セオドア様は小首をかしげ、優しく微笑む。


「そ、そんな。わたしくはつい先日、婚約破棄されたばかりの女ですよ」


「ええ。神が私に好機を与えられたということですね」


「好機……でも、その」


セオドア様は口に人差し指を当て、ウインクで言葉を遮った。


「今日突然の申し出ですし、返事はまた後日伺います。それまでは私にも期待をさせてください」


優雅に一礼し、ふと思い出したように。


「今日から私もこの学園の生徒になります。

バイオレット様と親睦を深めたく入学することにしました」



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