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13. 優等生ヒロインの疑問

5人の好青年と会話する度に選択肢が泡われる怪現象と同時に、もう一つ不思議なことがセシリーに起きた。


魔術の実力が、上がってきたのだ。



やればやるほど身につくというか、努力がそのまま実力として実を結んだ。

気が付いたら学園上位の実力を手にしていた。


セシリーは学園内で相当目立ってしまっていた。

とびぬけた魔術の成績に加え、麗しいと青年たちと親しくしていたからである。


そんなセシリーに、一応貴族とはいえ下級で庶民と言っても過言ではない身では生徒たちの風当たりは強かった。特に女生徒からは。

理由はわかっている。王太子と特別親しくしていたため、激しく嫉妬を買ったのだ。


王族も在籍するこの学園で、女生徒たちはできるだけ上級の身分の者と交際するためにに躍起になっていた。

当然だろう。自身の将来が左右されるのだ。上級に嫁ぎ何不自由なく一生暮らすか、下級に落ち貧しく暮らすか。



「下級のくせに王太子様と親しくするなんて、身の程わきまえなさい」


3人組の女子生徒が前を塞ぐ。


「シド様にはバイオレット様と言う由緒正しき家柄の婚約者がいらっしゃるのを知っていて?」


「はしたなく下級如きが必死に王族に媚び売って、みっともないったらありゃしない」


「目障りだからこれからは控えなさいよ」


矢継ぎ早に意地悪トリオが口撃する。


「あら、下級が王族と話すことがいけませんか? 婚約者がいる殿方とは親しくしてはいけませんか?」


「当然じゃないの、レディのマナーもご存じないなんてとんだ恥知らずね」


しばしの無言の後、くすりと笑いセシリーは続けた。


「だからあなた方はいつまでたっても負け犬なのです」


「はっ…!? 負け犬、ですって!?」


「立場をわきまえマナーを守ったところで、王族の男は落とせませんよ。

 その行為に何の価値があるのでしょうか。

 マナーとやらが貴女がたに一体何をしてくれるというのですか?

 相手が王族だから何ですか? 引け目を感じるのですか? 自分に自信がないのですか?

 そんなぬるいことを言ってるようではお話になりませんよ」


三人組はみるみるうちに顔を真っ赤に染める。


「生意気になにを――」


彼女たちはその後のセリフを続けられなかった。

セシリーの手のひらを天に向けた上部からは、今にも炸裂しそうな火球が浮かんでいたからだ。



「そこをどいていただけます?」



セシリーの問いは不自然に穏やかで、だが自然と脅迫となる。

蜘蛛の子を散らすように彼女たちは去った。



「セシリー!」


シドが心配そうな顔で駆けてくる。


「君が他生徒にいじめられてるようだと聞いたのだが大丈夫かい?」



(1.シド様が来てくれたから大丈夫)


(2.逆にいじめ返しました)


(3.それは嘘です)



選択肢が浮かぶ。

(1.シド様が来てくれたから大丈夫)を選べば、彼は喜ぶだろう。

そんなのわかりきっている。ほら――。


「君を守るのが僕の使命さ」

輝く笑顔で微笑むシド。


彼はセシリーに心の底から惚れているだろう。たとえ婚約者がいてもセシリーを選ぶだろう。

この国の最高権力を持つであろう王子。見目麗しく、だれもが振り返る美貌の王子。

その彼に選ばれる女。誰もがうらやむ栄誉なのだろう。


だが、誰かに認められることが本当の幸せなのだろうか。

『選ばれること』、『認められること』。

それは他人に価値観を委ねてしまうことだ。

自分の幸せは自分で決める。

それが正しいことではないか?



「私の、願いは……」



セシリーの呟きはシドに届かなかった。

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